戦後の日本-独立か従属下の平和と繁栄か

・ブログに2010年5月19日公開した文章の転載
 
自国が他国の従属下にある状態を、精神的・道義的な「悪」、独立した状態を「善」とする。
そして、平和で経済的に繁栄した状態を功利的な「得」、混乱して経済的に貧しい状態を「損」とする。

多くの国民にとって一番望ましいのが、他国の従属下になくかつ平和で繁栄した状態、一番望ましくないのが、他国の従属下にありその上混乱して貧しい状態だろう。
独立しているが混乱して貧しい状態と、他国の従属下で平和と繁栄が保たれている状態、どちらが望ましいかは人によって判断がわかれるだろう。

戦後の日本は、アメリカの従属下で平和と繁栄が保たれる状態が続いてきた。
これはアメリカの対日政策、日本の指導層の方針、国民の多数派の望み、三者の思惑や利益が合致したことによる当然の帰結といえよう。
日本の戦後がアメリカの占領状態から始まったため、まず独立を優先するか、それともアメリカの従属下での平和と繁栄をめざすかという2つの選択肢があった。
戦争と窮乏状態に嫌悪感を抱いていた多くの国民が、独立運動よりも対米従属下での平和と経済的繁栄を望んだのは当然の選択といえるだろう。(日本人は、倫理的な善悪よりも功利的な損得に基づいて行動をするという国民性があるので、それも影響したのかもしれない。)

もちろん、国民の多くが独立を望んだとしても、アメリカがそれを了承しなければ、独立戦争に勝利するしか目的は達成されない。
そして、戦後の日本がアメリカ相手の独立戦争に勝利できる可能性はゼロに近いのだから、現実主義的な価値観をもった戦後の政治指導者たちが、独立よりもまず平和の維持と経済的繁栄を目標としたのは、当然の選択だしまた賢明な選択であったといえる。

アメリカの対日政策は、法的・形式的に独立を達成したあとも、日本を実質的な従属状態におき、そのかわりにアメリカの軍事力を背景にして平和を維持するというものだった。
アメリカがそのような方針をとらず、日本全体を沖縄のような状態にしていたら、独立を求める動きが大規模におこっていたかもしれない。

ただし、多くの国民が、日本がアメリカの従属状態にあることを消極的にではあれ受け入れているのは、一方で平和と経済的安定が保たれているからであろう。
国内が混乱状態に陥ったり経済情勢が極度に悪化した場合、しかもそれらの原因が、日本がアメリカの従属状態にあるためだと判断された場合には、独立を求める動きも活発化するだろう。

だが、アメリカからの自立、独立を武力で達成しようとした場合、最悪のケースとしては再占領され植民地化されるおそれもあるだろう。
アメリカからの自立、独立が外交交渉などによって達成できないのなら、日本はアメリカの従属下で平和と経済的安定を維持するという状態を維持するか、それとも独立運動に失敗して、外国の従属下で混乱と経済危機に直面するという最悪の状態に陥るか、2つの選択肢しかないだろう。

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