短歌同人・置き場0号投稿作品「包み焼かれて」ほか

「包み焼かれて」森屋たもん

本籍地ばらばらになったきょうだいが実印を持って集まるココス

口約束ではできないね結婚やそれの終わりの相続放棄

包み焼きハンバーグとか頼めなそうで書類の波がテーブルを飲む

まだ知らない兄がいたかと驚いてよく見たら司法書士だった

末っ子はまだ末っ子でドリンクバーで誰のコップか分からなくなる

誰一人酒を飲まない子どもたち(ここに来れない人は除いて)

父さんがこの町に住むことになった理由はあるのに誰も知らない

母さんがあの家に住み続けるためにハンコくらいは押せるよ僕も

実印をしまって最近どうだって聞かれて原チャを買ったって言った

沈黙のあとに名前を言い合ってそれから名前で呼び合ってみた 

まず、「置き場」を作ってくださった藤井柊太さん、ありがとうございます。
60名超の寄稿者の皆さんも素晴らしい作品をありがとうございます!別記事で、少しずつ感想を書き残したいと思っています。

自分の作品の自作自解をします。
この連作は半分は実景で、きょうだいとココスに集まって遺産分割の手続きをしたことを描いています。

実際には、生活能力が厳しい母親に遺産を集中させてなんとか生活できるように計らう会でした。

きょうだいとは、父親の葬式で会ってからちょくちょく会っていますが会話はほとんどないので、こうして事務的でもちゃんと目的を持って話すのはとても新鮮でした。

個人的には、重い話題+軽い口調の連作を作るときには必ず「希望」を感じられる一首を入れたいと思っています。

ここでは、最後の

"沈黙のあとに名前を言い合ってそれから名前で呼び合ってみた"

がそれに当たります。

短歌は、自分にとってはまず暗い歌が生まれ、それに手をかけることで明るい歌に変わります。推敲することほど歌は明るくなるのです。そのとき、明るくしようという狙いはなくとも。

言葉を磨いたり、韻律を整えたり、あえて乱したり、様々な可能性を試すことで歌は暗さ一辺倒から様々な味わいを持つ気がします。

そうじゃない時も頻繁にあるのですが、基本的には。

話は変わって、短歌同人「置き場」はその前身となる、御殿山みなみさんが編集してくれていた「あみもの」という同人があります。

この「あみもの」最終盤に自分は、短歌を始めて投稿しました。当時は「連作ってなに?」状態でしたし、できたものも自作としてカウントしていないし記憶から消えている可哀想な作品ですが、載せてくれてコメントまでいただき、ありがとうございます。

その後、自分なりの連作へのこだわりが出来上がってきた頃に一度だけあみものが復活し、矢も盾もたまらず投稿しました。そちらは「しょうもない少年がチェーン店だらけの地方都市で精一杯生きている」というテーマをがっちり決めた連作で、とても気に入っています。

"チャリだけであいつがいるってわかるから全力でスルーするブックオフ"

↑この歌はとても共感してくれた人が多く、感想も多くもらえました。気に入っています。

自分は、結社にも所属しておらず、投稿の場は限られているため、「あみもの」、「置き場」のような場がとてもありがたいです。また、評価の場でないことから他の参加者の方々の自由な作品も普段と違った面白さがたまりません。

短歌は、とにかく続けることが一番難しいのです。こうして作品を投稿し続ける場があることに感謝します、ありがとうございます!

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