2023年度NHK短歌採用作まとめ

NHK短歌 二〇二三年度採用作+小感想 森屋たもん
 
 
六月号 山崎聡子選 「いとしい気持ち」佳作

玄関に脱ぎ捨てられたジャンパーを畳むときちょっとチャチャチャを踊る

 二〇二二年度の終わりに全ての投稿をやめてしまったけど、やっぱりNHK短歌から投稿を再開しました。長男小学校入学を控え、下校後上着を玄関に脱ぎ捨てて遊びに行くようすを想像した、けれど、実際には学童保育にお迎えで毎日一緒に帰っています。
 
七月号 山崎聡子選 「親に、子に思うこと」佳作秀歌

姉の弾くピアノを聴いている母を見ている父を好きなのが僕

 佳作秀歌とても嬉しかったです。姉がピアノを習っていたことは実景です。
 
九月号 川野里子選「海」佳作

目を閉じてしまえば僕は砂浜で170cmの貝になる

 実際の自分は170cmも身長がないのでちょっと罪悪感がありました。
 
九月号 山崎聡子選「職場でのこと」佳作

カラヴァッジョの絵画のように夕闇のなかの会議に部長は眠る

以前の採用作でも部長を眠らせたことがあって、頼もしい部長です。
 
十月号 吉川宏志 吉川宏志選「夏の虫」佳作

たなご釣る浮きに蜻蛉は留まり来て一匹分の波紋は進む

ふだん口語なので緊張したけど、採用されて安心しました。よくたなごを釣りに行きます。
 
十月号 岡野大嗣選「ライブ」佳作

たぶん同じライブに行くと思ってた人が降りていく知らない駅で

ライブに行く前の電車でこういうことがよくありました。絶対伝わると思って送りました。
 
十一月号 山崎聡子選「子育てを巡って」佳作

神回が週五で起こる五才児と二才児とともに暮らしていれば

「神回」という言葉が使えてよかったです。まだほぼ毎日神回です。
 
十一月号 吉川宏志選「店員」佳作

レバ刺しをちょうどレバーの位置に持ち歩いてきてる店員さんが

採用されてから、生レバーが十年以上前に提供禁止されていることを知りました。
 
十一月号 岡野大嗣選「?(疑問符)」佳作

もみあげはどうされますか?の正解はわからないまま生き抜いてきた

「おまかせします!」が正解なのかもしれないけど、床屋さんにとってはどうなのだろう。
 
 
十二月号 川野里子選「ジグザグ」佳作

じぐざぐに回覧板は行き巡り頑固な吉田翁宅へ着く

今年一年間、町内会役員を引き受けました。実景が歌になって良かったです。
 
一月号 川野里子選「天」佳作

全員のミニ天丼を引き受けて誰より早く食べ終わる父

基本虚景ながら、自分の家族詠の中にだけ住む架空の家族が居るなとこの頃気付きました。
 
一月号 山崎聡子選「友だちのこと」佳作

おはようは恥ずかしいけど暑いねは言える関係タメの先輩

齢を取るほど年齢差がどうでもよくなってしまうのは、いい面も寂しさもあります。
 
一月号 岡野大嗣選「高速道路」佳作

実家より雛人形の一団が高速道路で運ばれる冬

高速道路って何となくロックなイメージで、爆走するお雛様がカッコいいと思って。
 
二月号 川野里子選「ケーキ」佳作

迷いなく真っ直ぐ選ぶモンブラン今日も明日もいつかの途上

ケーキ屋さんで迷わないって不可能だと思うのですが、即決する人もいるんでしょうね。
 
 
三月号 山崎聡子選「あこがれ」佳作

噓だって知ってて父の放浪の旅の記憶があこがれだった。

虚景の中に住む家族がまた活躍しました。一年間ありがとうございました。
 
計十五首 入選なし 佳作秀歌一首 佳作十四首
山崎聡子選六首
川野里子選四首
岡野大嗣選三首
吉川宏志選二首
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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