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地獄のようなSteam雑審査に遭遇した話

これは、Steam(世界最大手のゲーム販売サイト)の凄まじい雑審査に遭遇した悲劇の物語である。

当初は水面下での交渉で問題を済ませるつもりだったのだが、valve(Steamの運営会社)の審査があまりにもいい加減過ぎ、10日以上やりとりを繰り返してもトレーディングカードリリースの見込みが立たない為に筆を取った。

僕が知る限り、製作者視点からのSteamのトレーディングカード審査に関する記事は見当たらなかった。この記事が、これからSteamでトレーディングカードをリリースしようとする人々の参考に(或いはSteam審査の雑さっぷりを覚悟する一助に)なれば幸いに思う。

(あんまり内容と関わりがない人達も、この記事でSteam審査のガバガバっぷりを知ってもらえるとありがたい)


まず、Steamのトレーディングカードというものがわからない人が多いと思うので、ざっくりと説明したい。

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Steamのトレーディングカード説明ページ。

Steam コミュニティ :: Steam トレーディングカード
https://steamcommunity.com/tradingcards/Steam

簡単に言えばゲームのプレイ時間に応じてユーザーが手に入れることが出来るコレクションアイテムだ。

・トレーディングカード
・バッジ
・アイコン
・プロフィール背景

また、これらのアイテムは誰でもリリース出来るわけではなく、一つのゲームタイトルがある程度の基準をクリアしないとリリース出来ない。
明文化はされていないが、恐らく下記の条件が近いとの噂だ。

・ゲームの評価数100以上
・コミュニティ内交流の活発化
・売上1万ドル以上

条件をクリアした後、各画像を用意するとvalve(Steamの親会社)の中から一人の審査員が審査を行う形になる。

では本題。
一体『どこが雑審査なのか』を順を追って解説していきたい。

まずは、すんなりと話がまとまったアイコンの審査から。

note ――つくる、つながる、とどける。 2020-08-13

当初、このようなアイコンを審査に提出したのだが

Steam:
「絵文字が判読できないよ。
よりハッキリとわかるようにピクセルレベルで調整して。小さなサイズで絵文字の基準をパスする為には、もっとイラストの表情を誇張してわかりやすくする必要があるよ」

との回答が返ってきた。
この指摘に関しては
「確かにドット絵レベルだと表情の違いがわかりづらいだろうな。その通りだ」
とすんなり合点がいったので、判別がつきづらい表情差分をアイテムの形に変更し、修正した。

fスト

こんな感じに。
これはすんなり問題解決。


問題は次である。
ここから審査員の様子がおかしくなってくる。
(なにか悪い物でも食べたのかな?)

バッジの審査。

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こんな画像を提出して、


Steam:
「バッジはテキストを含まない画像に置き換えてね。
通常、ユーザーに直接ドロップするアセット内にテキストは許可していないんだ。
ゲームの画像を使用する方が無難だよ」


との内容が返ってきて、面食らった。
なぜなら、
「バッジにテキストを書いてはいけない」
なんて、Steamworksドキュメント(公式が出してる説明書みたいなもの)にもまったく記載されていない初耳の内容だったからだ。

Steamworksドキュメント:トレーディングカード
https://partner.steamgames.com/doc/marketing/tradingcards

それどころかSteam自身が公式紹介ページ内で、

https://steamcommunity.com/tradingcards/Steam

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>>>FTL<<<
思いっきり英語が記載されているバッジを紹介しているのだ。
(ドウイウコトナノ……。ちなみにこれはゲームタイトル)
コレハ文字デハナク、折レ曲ガッタ棒ナノデス」とでも言うつもりなのだろうか……?


流石にこれは僕も疑問に思ったので、

「それはSteamの公式見解なの?
ドキュメントにも該当する記載はないし。
オフィシャルの紹介ページにもハッキリと文字が記載されてるバッジが掲載されているんだけど……どうなってんの?
これに比べたらウチのは絵柄だよ」

と聞き返したら。

Steam:
「ドキュメントに関するフィードバックをありがとうございました。調べてみます」

と茶を濁すような返事だけが返ってきた。
この段階で審査員に対する僕の印象はかなり悪くなっていた。
なんだかようわからんが、猛烈に悪い予感がしてきた……!!


そして一番揉めたのがプロフィール背景画像に関しての話だ。

当初、このような背景イラストを提出したのだが、

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Steam:
「イラストが明る過ぎる!
画像の明るさを30%程度暗くして、ユーザーのプロフィールUIと競合しないようにして」


僕:
「え?いやいや…でも既にリリースされている背景でこれよりも明るい画像あるでしょ?例えば……

Vanguard Princess

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https://www.steamcardexchange.net/index.php?gamepage-appid-262150

これとか……。
なんでこの明るさがOKで、ウチの背景の明るさだと審査をパスできないの?」


Steam:
「トレーディングカードの基準は、長年にわたって進化してきたんだ。
以前に承認した背景イラストでも、新しいガイドラインだと適合しなくなる可能性があるよ。
君の背景画像は明るすぎて、プロフィールUIの背後に多くのノイズが発生しているね。
画像の明るさを30%程度下げて」


僕:
「んんー……???
でもSteamworksドキュメントで見本として提示されている画像は結構明るいよ?
例えばほらこれを見て

画像9https://partner.steamgames.com/doc/marketing/tradingcards

ほらOKのチェックマークまでつけて「これは大丈夫」っていってるでしょ?
君達が」


Steam:
「見本が古いことを考慮しなくても、君が提示した背景画像の明るさは見本よりも明るいままだよ。
背景イラストの基準には、この見本画像以外にも多くの情報があるよ。
いくつかのルールを提示すると、
-明るいイメージを使用しないで。背景がユーザープロフィールUIの邪魔にならないようにして。
-黒に溶け込む暗いイメージを使用して。
なので、このことを念頭に置いて、明るさを落としてルールを守って。
特に、明るさを暗くしてね」


僕:
「うーん…??
でもSteamの基準が変わったとしても2020年以降にも新しい壁紙が出ているよ?
たとえば、これはどうなの?

H-Rescue

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https://www.steamcardexchange.net/index.php?gamepage-appid-1058530

このイラストは
「とても暗い!基準内!」
でウチのイラストは

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「明るすぎる!!!」
って言うの?

そういえばSteamは2020年のサマーセール以降にポイントショップで背景の販売を開始していて、現在も販売中だよね?
勿論、それはオフィシャルがリリースしてるんだから、ユーザープロフィールUIの邪魔にならない明るさなわけだよね?
まさかSteamが基準に適合しない背景を売っているわけないんだから、参考にしなきゃいけないよね。それってどんな明るさだったけ?
ああ見つけたこれだ。

Steamポイントショップ
https://store.steampowered.com/points/shop/c/backgrounds

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『Steamポイントショップで背景(Steam製)を手に入れよう!装備するとプロフィールを閲覧する他のユーザーにも表示されるぞ!』」


Steam:
「……」


この抗議文を送ってからSteamからの返信が途絶えてしまった。
Steam側も自分達の言い分に無理があることに気づいたのか、或いは単に返信するのがめんどくさくなったのか……。


いくらなんでもこのSteamの言い分は雑過ぎるし、基準がガバガバ過ぎるし、論理的に破綻している
僕が今回依頼したイラストレーターには、Steamworksドキュメントと見本画像をキチンと参考にしてもらった上でイラストを描いてもらった。

このSteamの雑な言い分に従って、せっかくのイラストを暗くして、そのクオリティを下げることは許容出来ない。

ドキュメント通りにイラストを作ったのに、ドキュメントにも書かれていない謎基準を持ち出して却下する
(審査員によっては明るい背景でも余裕でパスするみたいだけど……)
『ユーザープロフィールUIの邪魔にならないようにしてね』なんて言っておきながら、自分達はとんでもなく明るい背景を平気でリリースする。
そんなの酷過ぎる……。


そうだね。Steamが公式リリースしているこの背景はとてもとても暗くて、UIの邪魔にならないね。でも、お前のイラストは明るすぎてまぶしい!」とでもいうのだろうか?


Steam審査員がお使いのモニターは正常ですか?
(大丈夫?白黒のCRTモニターとか使ってない?)

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どっちが明るく見えますか?
僕の目がおかしくなったのかな?
審査が雑過ぎるよ!Steamさん!



余話

この件を友人に話したら
「流石にその審査基準は滅茶苦茶だなー。もしかしてアジア人嫌いの審査員にでも当たっちゃったんじゃないのー?」
と言われたので
「いやいやww流石にそれはないよww」
と一笑に付したのだが、
以前からSteamの審査は大手メーカーに甘くインディに厳しいとの噂がまことしやかに囁かれていたことを思い出した。
(例えばローカライズ審査でも、ビッグタイトルはそのまま英語表記でもOKなのにインディには徹底的に現地語への翻訳を迫る等々)
なにせ今回のヘンテコな二重基準を見てしまった後である。友人がそういう疑いを持つのも無理はないだろう。
僕も
まさか……その可能性も……?と少し疑ってしまった。
チョットダケネ……。

まあぶっちゃけ、そんな疑いを持たれるようなええかげんな審査をするSteamさんが悪いのだが……。


『地獄のようなSteam雑審査に遭遇した話』終わり。



ちなみにトレーディングカードリリースで揉めているゲーム
シロナガス島への帰還』ですがゲーム自体は絶賛発売中です。

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https://store.steampowered.com/app/1156990/_/

宜しくお願いしますー。(シクシク……

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