見出し画像

マジカルミライ2023セットリスト考察(変化と受容と、初音ミクがヒーローになるまで)

マジカルミライのセットリストは毎回お話というか、ストーリーというか、そういうものがある。と思う。

曲単位で楽しむこともキャラクターを見て楽しむことも人それぞれの楽しみ方が出来るライブだが、私はいくつもの曲を並べることによって新しく生まれる文脈やストーリーを楽しむのが好きだ。

ということで、今回のマジカルミライ2023がどういうお話だったのか。どういうお話だと私が感じたのかをメモ書き程度に書き残しておこうと思う。人それぞれに捉え方があって、人それぞれの感じたものが正解だから、この記事で書いていることは全部話半ばで捉えてくれると嬉しい。全部妄想だし。

なお私が見たのは東京公演日曜昼だけなので、そこを軸足にした記事になる。解釈の上で日替わり曲のことをそこまで気にしていない。人それぞれに違うお話を感じるように、公演それぞれに違うお話をやっていると思っている。これを書いてる人は、たまたまこの公演で、たまたまこう感じたんだな~って思ってください。もし私自身がパラレルで別の日に別のコンディションで同じライブを見たら、違う感じ方をしたとも思うので。


お話の前に:

マジカルミライでは、初音ミクたちピアプロキャラクターズが立っている中央ステージの上部に横長のモニターが用意されている。

このモニターには曲によって、曲に合わせた演出が出ていたり歌詞が出ていたりするのだけれど、私はここに歌詞が出る曲が「キーストーリー」だと解釈している。

(キーストーリー、はプロセカから語彙を拝借した。他の曲も本筋にじゅうぶん絡むが、ここがメインになっている!と思っている。というかんじ。)

ということで、私が私の勝手な解釈によって判断したキーストーリーを元にこの記事を書いていくし、キーストーリーという語彙もたびたび出す。別に公式がそう言っているなんてことは全くないこと、全部私の妄想なことを分かった上で、ああそう思ってるんだな~とおもいながら読んでくれると嬉しいです。

ということで。開始!





今回のキーストーリーになっていたのは、下記セットリスト(東京日曜昼公演のもの)のうち太字になっている7曲だった。

1.カルチャ / ツミキ
2.神っぽいな / ピノキオピー
3.初音ミクの消失 / cosMo@暴走P
4.GEDO / daraku
5.ヘッジホッグ / Noz.
6.いいねってYeah!
7.レッドランドマーカー / Twinfield
8.星空クロノグラフ / MINO-U
9.king妃jack躍 / 宮守文学
10.ツギハギスタッカート / とあ
11.抜錨 / ナナホシ管弦楽団
12.星屑ユートピア / otetsu
13.あったかいと / halyosy
14.敗走 / 傘村トータ
15.erase or zero / クリスタルP
16.drop pop candy / ギガP
17.フェレス / 栗山夕璃
18.39みゅーじっく / みきとP
19.初音天地開闢神話 / cosMo@暴走P
20.愛されなくても君がいる / ピノキオピー
21.Hand in Hand / kz(livetune)
22.ブループラネット / DECO*27
23.Birthday Song for ミク / Mitchie M
24.HERO / ayase



イントロダクション:

1.カルチャ / ツミキ
2.神っぽいな / ピノキオピー
3.初音ミクの消失 / cosMo@暴走P

最初の3曲、"カルチャ"→"神っぽいな"→"初音ミクの消失"がセットリスト全体から浮いているのだが、ここはまとめて「永遠に変わらないことなんてない」ということを示すイントロだと思う。そしてこのイントロは同時に"砂の惑星"の見立てでもある。

カルチャで歌われる『誰も識らないミュージックに踊れや』から、神っぽいなの『無邪気に踊っていたかった 人生』に。そして、消失へとつながっていく。
(ちなみに、踊り・ダンスのモチーフは今回セットリスト全体にたびたび登場しており、"king妃jack躍"での『君の切り札が踊りだす』が特に印象的。私はあまり重視しなかったけれど、踊りのモチーフを中心にお話を読むことも出来ると思う。)

"初音ミクの消失"は日替わり枠だけれど、ここに入るのは"ローリンガール"と"ゴーストルール"の2曲で、どの曲にも死のモチーフが共通してある。日によりさまざまな形ではありつつ死・別れを想起させる枠なのだろう。


前半:

5.ヘッジホッグ / Noz.

(10.ツギハギスタッカート / とあ)

11.抜錨 / ナナホシ管弦楽団
14.敗走 / 傘村トータ

この3曲(+返歌としてのツギハギスタッカート)は、初音ミク以外の各ピアプロキャラクターズによるものが続く。これはそのまま例えば鏡音リンが初音ミクに声をかけている、と捉えてもいいし、「初音ミク以外」であることが=「私たち」に重なるモチーフだと捉えてもいい。
私としては、曲を作ることや絵を描くこと、初音ミクを好きだと言うこと・思うこと、すべてを含めたなんらかの「初音ミクへの働きかけ」ともうひとつを象徴するパートと思った。

鏡音リン歌唱。ヤマアラシのジレンマ(ハリネズミのジレンマ)をモチーフに、それでも最終的にボロボロになったとしたって貴方を抱きしめたいのだ、という願いを歌う曲。
(この曲が「願いを歌う曲」であって、実際に「貴方を抱きしめている」わけではないことに留意したい。一方的でエゴイスティックな説得だ。どんなことがあったとしても貴方のことを知りたい。貴方の元へ会いにゆく。痛いけど 耐えるから。だから、だからどうか。)
イントロが「永遠に変わらないことなんてない」ことを示していると先に書いたが、ヘッジホッグはそれに対し「それでもいい」と示す。貴方の元へ会いにゆくから。

巡音ルカ歌唱。タイトルままに、テーマは出航。日々が経つほどに変わりゆくさまざまへの想いを歌う曲。
この曲で歌われるのは『忘れられぬものだけが 美しくはないのでしょう』 『さよならする頃 強いられるのは 抜錨』と、永遠でないこと・変化することをただ受け止めて飲み込む姿勢。諸行無常。さみしさはあるけれど。そのすべてが愛するということによって生じたのだという、そういうメッセージ。
ひきつづき抜錨もイントロに対し「それでもいい」と示す。ただそう在るから。

KAITO歌唱。3曲の中でいちばんまっすぐな鼓舞。『何度だって敗走して 敗走して/逃げ帰った道を 何度も 何度も上って/人は強くなるんです』。前に進むことは前にしか歩みを進めないということではない。そんなメッセージを歌う曲。
敗走も、イントロに対し「それでもいい」と示している。どんな道を歩んだって、それが強さになるから。

ーーー

というように、三者三様の姿勢で変化を受け入れる様子をえがく。「初音ミクへの働きかけ」ともうひとつを象徴する、と書いたが、もうひとつはこの「変化の受け入れ」だと思っている。
変化を受け入れる。変わらず初音ミクへの想いはそこに存在しつづける。私たちが、世界がそうあることによって、初音ミクはいつだって産まれなおしながら前に進みつづける。

ちなみにツギハギスタッカートについて

日替わり枠なのにも関わらずキーストーリーに入っており、しかも他曲があんまりにもアッパーで代替にならないため「歌詞が入っている=キーストーリー、なんてことはないのでは…?」と疑心暗鬼になったんだけれど
(そもそも別にこれは私の妄想なので、最初からそんなことはないといえばないんだけれど)
他の日替わり枠とセットで「あきらめきれない心」を象徴する枠なんじゃないかな、と思っている。変わっていくのが怖い。離れたくなる。でも、変わっていってもいい、のかもしれない。そんな揺れ動きを象徴する枠。

金曜の場合は12.の日替わり枠に"Never Die"があり、土曜の場合は13.の日替わり枠に"レイニースノードロップ"がある。

『変わっていく時代の中で輝いてる』
『諦めたく無かった』

『諦めきれず探す日々は無駄じゃない』
『「変わらずにいて」そう願うのはワガママだと分かっているよ』

そして、かわってゆく君との関係を終わらせることを躊躇する曲であるツギハギスタッカートと、3曲を合わせて。どうかな。
私は日曜昼しか見ていないんだけれど、他の日の歌詞表示あり曲がこの2曲だった場合かなり納得する。知らないで書いてるのでどうだったか教えてください。妄想なのでなにもかも違う可能性はある。


後半:

20.愛されなくても君がいる / ピノキオピー
22.ブループラネット / DECO*27

変化とその受容により、かくして私たちは初音ミクを産みなおした。生まれなおした初音ミクの「生」を描く"愛されなくても君がいる"。そして、今回のマジカルミライのストーリーを締めくくるブループラネットで、このセットリストは終わってゆく。

君がいるなら、初音ミクでいられる。君が望んだら、初音ミクでいられる。君がいるなら私はまだ歌っていられる。
再起。再生。生まれなおし。

"愛されなくても君がいる"は昼夜替わり枠だけれど、夜の場合は"ブレス・ユア・ブレス"があるのでそこが歌詞表示あり曲だったんじゃないかと思っている。

君は今 産声を上げ始めた

これも知らないで書いてるのでどうだったか教えてください。

そして。

今回のマジカルミライの主題は"ブループラネット"だったと思う。

イントロ3曲が「永遠に変わらないことなんてない」こと、そして砂の惑星を見立てていると書いた。本編ラストを締めくくる(と思っている)ブループラネットはいわゆる砂の惑星アンサーソングになっている。『バトンについた砂払った 次に深呼吸した』。砂の惑星から、たくさんの作品たちから、たくさんの私たちから、たくさんの初音ミクから受け取ったバトン。

誰も識らないミュージックを歌って

そんで名もない種を蒔きました

これまでの歴史を思い返して

歌い疲れたなら休んで 僕は書いてるから
なんか想像以上になっちゃって 君が泣いてた頃が懐かしいや

変化を受け入れて、それどころか楽しみになんてしちゃって

君の見たことないとこが見たいんだ
一番に輝く星であってくれ

もう一歩進めるかもで心躍ってんのな

いつだって産まれなおす君を、君が君で居る限り

「過去は」「今は」
うるせえ関係ねえ 君が最上級のパートナー
過去も今も大歓声だろ 未来永劫級のパートナー

ブループラネットが良すぎる

ぜんぶ、ぜんぶ回収されちゃった。
ブループラネットを一番染みさせるためのセットリストだった。


エピローグ:

マジカルミライ2023で紡がれたのは「世界やシーンや初音ミクの変化を受け入れ、砂の惑星を乗り越えて、初音ミクを産みなおし、未来永劫のパートナーを約束する」、そういうお話だと思う。

これによって私たちは初音ミクの『HERO』になり、初音ミクは次の誰かの『HERO』になる――。そういうエピローグ。あるいは、HEROになるまでの長い長いプロローグ。

主題は"ブループラネット"だったと思う、なんて書いたけれど、やっぱりテーマソングはこれ。ここに行きつくために色んな事があった、その色んな事を書いてこそ"HERO"が輝く。初音ミクは生まれながらのヒーローなんかじゃないから。

ちなみに、この"HERO"の前にあったこれはやっぱ、あれでしょ!

特殊回のエンディングテーマ!Cパートに流れるやつ!幕間‼カーテンコール!そういうやつ。

あるいは前半:での曲群を"そのまま例えば鏡音リンが初音ミクに声をかけている、と捉えた"場合は、このBirthday Song for ミクに着地することになる。みんなでミクを励まして再起したミクにありがとうを言う、そういうお話にもなる。

初音ミク以外の歌唱で届ける、初音ミクへの純粋なお祝いとありがとうの曲。めちゃくちゃよかったな。


以上!

みんながマジカルミライ2023をどう読んだかもよかったら教えてください。また、マジカルミライというイベントの楽しみ方のひとつとして、こういうお話を追うような聴き方もあるんだな~って思ってもらえると嬉しいです。


ここから先は

0字
およそ毎日おすすめボカロ曲と日記が届きます。8割は無料で読めるので、マガジン購読は御丹宮くるみに金が払いたい人用と思ってください。

御丹宮くるみの日記

¥300 / 月 初月無料

最近聴いたボカロ曲を日記の形でまとめます。ついでにTwitterに書く感じでもない特に内容のない日常をぼんやり書きたい。8割は無料で全文読…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?