愛が重めなニョルペンに起きた奇跡の話

2017年3月9日

チャニョルちゃんが何故か札幌に来たという情報が入った。

胸騒ぎしかせず、とりあえず仕事を終わらせ帰路に着く。時間は21時すぎ。

(情報が本当かどうかわからないしな…)
と思いつつも、私は大通駅で地下鉄を降りた。

沢山の人が居た。

私は背が高い人が全員チャニョルちゃんに見える病気にかかっていた。

地下道を歩き、所用のある狸小路に向かった。
前に札幌に来てくれた時にチャニョルちゃんが訪れた場所だ 。

(居るわけないよな…)

頭の中で山崎まさよしの"One more time, One More chance"がリフレインしていた

地下道から地上に出るエスカレーターに乗る。

(チャニョルちゃん何しに札幌に来たんだろ…)
(上映会行くのかな…)

とか考えていた。

エスカレーターを上がるとすぐ左手にドンキ・ホーテがある。

(そういえば韓国人ってドンキ好きだよな〜)
なんて考えてたら地上に着いた。

狸小路は1丁目〜7丁目まである、札幌大通公園の近くの東西に延びるアーケード街だ。
ちょうど真ん中の3丁目と4丁目の間に南北に伸びる大きな道路がある。
私は3丁目の端に降り立った。

チャニョルちゃんが好きな一風堂は反対側か…
後ろを振り返った。

(ま、とりあえず用事を済ませよう)

前を向きなおした瞬間だった。

目の前にグレーのダウンを着た背の高い男性が立っていた。
右手にドンキの小さいビニール袋を持って。

思わず立ち止まった。

(チャニョル…ちゃん…?)

息が止まった。

いやいやいや
都合良過ぎでしょ
だってチャニョルちゃんのカナダグースは赤だし

そんなわけないと思いながら顔をジッと見た

横顔、しかも目と鼻しか見えない。

(綺麗な鼻…)

超絶イケメンである事は確かだがチャニョルちゃんかどうか確信が持てなかった。

知らない人に声をかけた事なんて無い。
間違ってたらどうしよう。
でもあの鼻のホクロはチャニョルちゃんと同じだ…

私の視線に気付いたのかこちらに背を向けた。
彼の目の前には果物屋さんがあり、傍から見れば両手をポケットに突っ込んで目の前に積まれているミカンをガン見してるようにしか見えない。

(もしかして本当に…?!)

首元から見えるのは最近よく着ている燻んだカーキ色のパーカー。
顔が見えないからまだ確信が持てない。

(他に特徴は…)

視線を下にズラす。

黒いズボンに細い脚。
そして…見慣れたO脚。

(チャニョルちゃんだ…!!!!)

確信した
あの脚は絶対チャニョルちゃんだ。

(今しかない!行け…!行け…!!)

おそるおそる近付く

「あの…チャニョルさんですか…?」

背後からそっと声をかけた。

すると振り返って苦笑いしながら
『あー…はい』と一言。

見つかったかー!みたいな感じだったんだろうか。

そこに居たのはいつも私が画面越しに見てるチャニョルちゃんだった。
大きくて綺麗な目とスッと通った鼻筋に右頬のニキビ痕(?)。
パーカーのフードを被り、その下にシカゴブルズの牛のマークが描いてある黒色のキャップを被っていた。

(本物だ…!)

声が出なかった。
心臓が口から飛び出るかと思った。

(動け私の口…!ファンですって言え…!)

混乱した私の口から出た言葉は

「大好きです…」

だった。

キモい。いきなり告白とかキモい。
でもそれしか言葉が出てこなかった。

チャニョルちゃんはニコッと笑って

『ありがとうごじゃいます』

と言ってくれた。

周りを気にしてか小声だった。
ライブのMCで聞く「ありがとうごじゃいまーーす!!」とは全然違う。

低音でふんわりとしていて
優しい口調だった。

ごじゃいますの可愛さが尋常じゃない。

(本物だ…本物だ…)

手が震えた
涙を必死で堪えた

「握手してください…」

声を絞り出した。

『あー、はい』

チャニョルちゃんは差し出した右手をそっと握ってくれた。

チャニョルちゃんの手は大きくて暖かくて柔らかかった。

(ガサガサしてない…!)

"チャニョルの手はガサついてる"って2年くらい前に何かの番組でベクちゃんが言ってた事を思い出した。

寧ろ私の手の方がガサついてるし
ハンドクリームを塗っていなかった事を後悔した。

私の緊張はピークに達していた
心臓の音がうるさい
震えて声が出ない

でもこんなチャンスは二度と無い!
動け私の口!!

「来週マレーシア行きます…」

何でそれ??
もっと言いたい事はあった。
会ったらこんな事を言おうとかあんなに妄想してたのに

考えがまとまらない。
余りの緊張で声が震える。

どうやら私はかなり小さい声だったらしい。
チャニョルちゃんはちょっと屈んで

『はい?』

と聞き返してくれた。
("はい⤴︎?"ではなく"はい⤵︎"の発音だった)

私は背が高い。
靴を履いたら170はある。
今まで一度たりとも男性に屈まれた事なんて無い。

嬉しかった。
憧れてたシチュエーションが今
チャニョルちゃんによって再現されたのだ。

屈んだせいでさっきより顔が近い。

目が優しい
肌が綺麗
顔が小さい
睫毛の1本1本まで見えた。

後退りそうになるのを何とかこらえてもう一度「マレーシア行きます」と言った。

最初、理解出来なかったようで
チャニョルちゃんは軽く首を傾げて3秒くらい考えていた。

「あー!ありがとうごじゃいます」

って言ってくれた。

ちゃんと伝わったのだろうか?
この時の「あー!」はすごく優しいトーンで心臓に響いた

チャニョルちゃんはドンキで買い物をしている友人を待っていたようで周りをキョロキョロし始めた。

(ここまでか…)

もっと話していたかったが「頑張ってください」と言ってその場を離れた
チャニョルちゃんは『はい』と言って軽く会釈をしてくれた。

その場を離れたがあまりに名残惜しくて少し離れた所からチャニョルちゃんを見ていた。

友人①が合流し、チャニョルちゃんは店内(入り口付近)に戻った。
スマホを見ながら人通りに背を向けるようにしてドンキの入り口にあるタバコの自販機の前に立っていた。

私に見つかったからか顔を隠してるのだろうか。
自販機との距離が30cmも無い。
明らかに近すぎる。

前にヨルセがその前に立っていたというだけで自販機に抱きつく人が続出したが、その気持ちが分かった気がした。
本当に自販機と同じくらいの身長だった。

チャニョルちゃんは時々友人と話しながら自販機の広告の文字をじーっと読んでいた。

"氷撃ドライメンソール"の文字を解読しようとしていた。
可愛かった。
日本語へんきょう中だもんね。

今思えば写真の1枚でも撮ればよかったのだけど、その時の私にはそんな余裕は無かった。
握られた手がずっと震えていた。
みんなよく写真撮れるな、と感心した。

その時、自分のペンケースにマッキーが入っている事を思い出した。
ダメで元々だ…と思いさっきまで居たところに戻り、まだそこにいたチャニョルちゃんにサインくださいって言ってみた。

『ごめんなさい…』と
手を合わせて断られた

(ですよねー!!!)

もう退散するしか無かった。
これ以上食い付くとさすがにマズい。

その後、友人②とも合流したチャニョルちゃんは雑踏の中に消えていった。

その場にチャニョルちゃんはもう居ないのに帰れなかった。動けなかった。

思わず友人に電話した。すごく喜んでくれた。

電話を切った後に色々と後悔した。

しかもその日は眉しか描いてないし仕事終わりで髪もボサボサ、服も適当。
せめて万全の状態で会いたかった…

泣きそうだった。
ちょっと泣いた。

まさか会えるとは思っていなかった。

離れた所からしか見たことがなかった
見上げるか、遥か遠くから見下ろす事しか出来なかった大好きなチャニョルちゃんが
私と同じ地面で、同じ高さで立っていた。

はっきり私を見てくれた。
声を聞いてくれた。
返事をしてくれた。

こんな幸せな事が今まであっただろうか。
間違いなく人生で1番緊張した。
思い出すと今でも泣けてくる。

余韻に浸り過ぎてその後2日は食事が喉を通らなかった。

チャニョルちゃんはとびきりカッコよかった

顔が小さくて優しい目をしていた

声がとても心地よい低音だった

この記憶が薄れて欲しくない。
どうして私の目には録画機能が付いてないんだろう…と意味不明な事さえ考えた。

チャニョルちゃんに不快な思いをさせたのでは無いだろうか。
また遊びに来てくれるだろうか。
プライベートなのに邪魔してごめんね。

チャニョルちゃんにとってはファンに声をかけられるなんて日常茶飯事で、もはや記憶にも無いかもしれない。
会話したのも恐らく1分間くらいだろう。(もっと短いかもしれない)

でも私にとっては一生の思い出です。
握られた右手は洗ってしまったけど、
あの大きな暖かい手の感触は忘れません。

また来てね。
ありがとう。