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オートチェス1周年記 ~ウイングスの歴史~

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※攻略記事ではありません。
オートチェスはアップデートの頻度が高く、新興のゲームジャンルということもあり、対戦環境が目まぐるしく変化するゲームです。オートチェスが「Dota Auto Chess」から独立して約1年、その変化の流れを構成ごとに振り返り、記録しておきたいと考えました。
記憶を辿って書いているので客観性は一切保証できませんし、当時の環境理解に誤りがあるかもしれません。また、繰り返しになりますが、攻略記事ではありません。
古参プレイヤーは当時を懐かしく思い、新規プレイヤーは過去の環境を知って驚き、少しでも楽しめるようなものになれば幸いです。

ウイングスの歩み

ドルイドシナジーによる早期の★3完成と高いタンク性能を持つ「大樹の賢者」を筆頭として、全構成中最も早いパワースパイク(構成が強くなるタイミング)を迎えるウイングス構成。
連勝からの勝ち切りとしても、連敗からの切り返しとしても需要があり、時には試合全体のゲームスピードを支配してしまうほどの展開の早さ。その反面終盤の伸び代に乏しく、1位を取るためには相応の練度が求められます。
いつの時代も揺るがない「大樹の賢者」の信頼性を盾に、いかにして火力を出し、どう勝ちきるかという課題を常に抱えながら進化してきたのがウイングス構成の歴史と言えるでしょう。

最古のウイングス構成 ウイングスアサシン

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最初期環境におけるウイングスといえば、「致命の暗殺者」をキャリーとするウイングス6アサシン3構成のことでした。
当時のウイングスが5G駒に頼らず火力を出すための唯一にしてベストな選択肢がアサシンシナジーと「致命の暗殺者」であり、レベル8でガチャを回して★3まで育て上げることを目標とします。
アサシン3シナジーを発動させるための枠は「熊のドルイド」と合わせてビースト2シナジーが発動する「砂漠の主」が主流でしたが、当時のアサシンの主戦力だった「幻影の女王」*1が採用されるパターンもありました。
9枠目として2体目の「光羽のアサシン」(旧名: 光の羽の刺客)が追加されることも多かった印象です。

*1「幻影の女王」
2G デーモン/アサシン
デーモンシナジーによる安定した火力と自身の前方に放つ範囲攻撃スキルを持つ駒。スキルを効率よく当てるためにアサシン駒でありながら前衛のすぐ後ろに配置されることが多かった。ソールテイカーと並んでアサシン構成の序盤に重用され、最終的には致命の暗殺者に次いで★3を狙うべき駒ともされていた。現在は削除済み。

銃社会の到来 ウイングスハンター

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ウイングス構成に最初の転機が訪れます。「光羽のアーチャー」(旧名: シャイニングアーチャー)の追加によってウイングス6ハンター3の構成が可能となりました。更に大きな変化は、「ライフルマン」が持つドワーフシナジーの仕様変更です。
最初期のドワーフシナジーは駒の射程が少し伸びるだけという、もはやシナジーと呼べるのか怪しいレベルの効果でした。かつての「ライフルマン」は、3G駒の同僚だった「ウインドレンジャー」の劣化とすら言われる程度の強さだったのです。しかし、ドワーフシナジーが現在と同じ「射程内の最もHPの低い駒を優先的に攻撃する」というクレバーな効果に変わり、一躍最強のダメージ源となります。
この「ライフルマン」をキャリーとするウイングスハンター構成は、従来のウイングスアサシン構成に対して安定感でも勝っていました。アサシン駒ゆえに単独で敵陣に飛んでいく「致命の暗殺者」は、いくらウイングス6シナジーがあれど★2の低いHPではすぐに倒されてしまいます。対して「ライフルマン」は長射程ユニットであるため、★2であってもウイングス達に守られてダメージを出し切ることができるからです。
「大樹の賢者」の守りと「ライフルマン」の攻め、構築の完成は最速のレベル7。オートチェス史上最も安定感のある構成が誕生します。
ウイングス6枠に「致命の暗殺者」を引き続き採用し、8枠目にアサシンを追加したハンターとアサシンのハイブリット型や、「ライフルマン」の★2を2個起きする型も見られ、自由度の高さもありました。

ウイングスハンター構成の強さが知れ渡ると、爆発的に流行しました。ランクマッチではもちろんのこと、 Auto Chess Japan League*2でも、Auto Chess Invitational 2019 アジア予選*3 でも、とにかくウイングスハンターが多かった。他国のプレイヤーと比べても日本勢の「ライフルマン」への信頼は突出していたと思います。戦国時代の日本は世界で最も鉄砲を保有している国だったそうです。

*2 Auto Chess Japan League
かつて開催されていた日本初の長期リーグ戦。

*3 Auto Chess Invitational 2019
初の公式世界大会。本戦は上海で行われ、日本代表としてtuttuとBomeronが参加した。

お気に入りのマイナー構成 ドラゴンウイングス

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激化する「ライフルマン」の取り合いに疲れた一部のプレイヤー(主に自分)が好んでプレイしていた構成です。「ライフルマン」の★3を早期に諦め、火力源をハンターからドラゴンへ移行することでほどほどの順位を取る戦法。
後に毒竜からの3アサシンを起点とした形が話題になりましたが、いまいち定着しなかった印象があります。現在は「ライトドラゴン」の削除によって構築不可能に。

ウイングス、不遇の時代へ

熾烈な銃撃戦を経て、ウイングス最強時代は終わりを迎えます。ウイングスシナジーの弱体化。そして連敗からの切り返しとして独占していた地位を、グレーシャーナイトを筆頭とする5回し戦略*4に奪われる形で徐々に存在感を弱めていきます。
更にその後、5G駒の排出率が一時的に上昇*5し、レベルアップに必要な金額が5Gから4Gへ変更、試合の終盤にパワースパイクのある構成が台頭します。天敵である「闇のスピリット」や「デストロイヤー」が容赦なく繰り出され、そうでなくてもウイングスは単純にパワー不足でした。

*4 5回し戦略
2G駒の排出率が最も高いレベル5でガチャを回して駒を引き切り★3を早期に作る戦略。ハイリロールとも呼ばれる。「氷河の占い師」が持つプリーストシナジーで連敗中のダメージを軽減できるグレーシャーと相性がよく、Auto Chess Invitational 2019決勝大会では中国代表のLucky選手が全ての試合で5回しグレーシャーナイトを決め打ちしていた。後にナイト(煉獄の騎士)以外の2Gを重視するアサシン(深海の歩行者)、ウォリアー(深海の守護者)でも使われるようになり、メジャーな戦略の一つとして定着した。

*5 5G駒の排出率上昇
2019年12月13日から2020年3月19日までの期間、レベル8/9/10での5G駒の排出率が1/3/6%から2/4/6%に上昇していた。

クイックモードの覇者

不遇の時代にあってもウイングスが輝ける道はありました。「預言者」が強化されて召喚ユニットが2体に増え、これが新たに実装されたクイックモードを緑化しました。
クイックモードはドルイドシナジーが発動していると駒1体で勝手にランクアップする狂気の仕様。プレイヤーのHPは60しかないので、序盤に強い預言者を作って召喚ユニットで削る戦法は普通に強い。
更にディヴァインシナジーで召喚のクールタイムを短縮し、複数の預言者を配置すると……

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クイックモードでの森林保護活動は密かに人気があります。

復活のアサシン マリーンウイングスアサシン

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ウイングス6シナジーの効果が全体化、「大樹の賢者」のスキルが仕様変更されタンク能力が更に上昇、ウイングス初の5G駒「占星術師」の追加、ウイングスに再び追い風が吹き始めます。そして5G駒の排出率が元に戻ったことで、オートチェスはかつての試合展開へと戻りつつありました。
しかし、時の流れが古のウイングスアサシン構成を変え、最優先で★3を目指すアサシン駒は「致命の暗殺者」から「深海の歩行者」となっていました。
理由は2つあり、1つは2G駒として実装された「アンブラ」が3Gに変更され、更にレベル9を目指しやすくなったことで3G駒が集めづらくなっていたこと。もう1つは単に「深海の歩行者」が強すぎたことです。
過剰な生存スキルで試合を遅延させていた「深海の歩行者」はスキルを全く別物に変えられてしまいますが、それでもアサシン駒の中では最強でした。オートチェス史上最も憎まれた「深海の歩行者」の悪行は、またの機会に詳しく書くかもしれません。ともかくウイングスは最強のアサシン駒を引き入れながら、復活の狼煙を上げました。

大樹の賢者、神になる

現実世界は某ウイルスの恐怖に包まれ、オートチェス世界はバグとフリーズと崩壊したゲームバランスに泣いた阿鼻叫喚のシーズン5。とある怪物を食い止めるために「大樹の賢者」はウイングスを離れ、ディヴァイン構成の一員となっていました。この辺のことはディヴァインかゴブリンの歴史で詳しく書きたいと思います。
そして現在……

裏切りの覚醒 デーモンウイングス

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「裏切りのデーモンハンター」(旧名:裏切りのデーモン)をエースとして採用する構成は、古くからカルト的な人気がありました。メジャーな最終構成には決して残らないながら、グレーシャーやウォーロックのシナジーで戦力を補強したり、他の優秀なデーモン駒と共存する型は強力で、大舞台でも結果を残しています。

Auto Chess Invitational 2019 上海本戦 グループB第2試合
本大会の優勝者Jinsoo選手との一騎打ちにデーモン構成で勝利するtuttu選手。

そんな「裏切り」は、現在では誰もが認める最強駒になっています。最大の原因は新アイテムの実装です。発動時にマナが溜まるようになって再実装された「テレポート短剣」と、遠距離攻撃を範囲化させる最恐武器「スピリットランス」。これらを装備した「裏切り」は開幕直後に変身し、盤上を飛び回りながら凄まじい火力を叩き出します。

禁忌のデーモンハンター(旧名:デーモンハンター)との組み合わせでデーモンシナジーの火力を保証でき、伝統的に3G駒をエースとして重用してきたウイングスと「裏切り」の相性は抜群。
かつてのエース「ライフルマン」も健在で、2Gに値下げされながらも相変わらず優秀なドワーフと3ハンターシナジーで序盤の立ち上がりに貢献し、「裏切り」と共にウイングスとして戦うことが多い印象です。
9枠目以降の自由度も高く、「光羽のアーチャー」のスキルを範囲攻撃化させれば莫大なダメージを稼ぐ「グリムタッチ」や、バグでスプラッシュダメージが出なくなってしまったがデーモン駒にバフをかけられる「ロストガーディアン」を強化点にできるのはデーモン構成ならでは。

TIPS 裏切りのデーモンハンターは何を裏切ったのか
裏切りのデーモン、というとデーモンを裏切ってハントする側に回ったようにも読めてしまうが、中国語版「堕落猎魔人」や英語版「Fallen Witcher」(直訳すれば「堕落した魔狩人」)を見るとわかる通り、デーモン狩りをしていたが自分もデーモンに堕ちてしまった者である。
Auto Chess: Origin Wikiから引用

以上、ウイングスが歩んだ1年間の歴史でした。次回はメイジについて書くかもしれません。

ウイングス使いの名棋士紹介

tuttu
Auto Chess Invitational 2019 日本代表。Nations Cup Auto Chess 日本代表。
日本一有名なオートチェスプレイヤー。「ウイングスが板」というシンプルな一言と共に「ライフルマン」の有用性を丁寧に説き、日本にウイングスハンターを流行らせた立役者でもあると思う。

つらたん
Nations Cup Auto Chess 日本代表。
現在でも第一線で活躍する数少ないシーズン1クイーン到達者で、古くからウイングス構成を好んでいたと思う。的確なゴールド運用で「致命の暗殺者」や「裏切りのデーモンハンター」を引き切って試合を制す姿が印象的。

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