隣の芝生が青いことに気付いてもなお

3時間目の数学が終わった後、「頭いい人って羨ましいよねー」とミエが呟いた。
たしかに羨ましい。でも、それはその人が頑張ってるからだと思う。自業自得の逆バージョン。私が勉強できないのは自業自得。

ただミエが、
「でも勉強を頑張ってるのはすごいことだけど、ちゃんと頑張れる人間になれるかどうかって、別にその人だけの問題じゃないと思うんだよね」
と言っていて、これにも「確かに」と思った。

家で親がいつも読書しているような家庭に生まれた子どもは読書をするようになるだろうし、親が子どもの努力を褒めるような習慣のある家庭に生まれた子どもはちゃんと頑張れる子に育つと思う。
別に私は自分の家族のことが嫌いとかそういうわけじゃないけど、別の家庭に生まれていたら全く違う自分がいたはず。遺伝子は同じでも。

「ただ、そんなこといってもしょうがないんだよね。ほんとに。しょうがないんだよ。」と、その時のミエはなんとなく遠くを見ていた気がする。

私は、「まあ、そうだよね」と返した。

まあ、そうなのだ。ただ、「そんなこと言ってもしょうがない」と言えるような子に育ったミエを、私はいつまでも愛したいと思う。

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