引っ越しのような卒業。
バトンズの学校という、ライティングスクールの最終講だった。
ここは、わたしの転機になってくれた場所だ。会社をやめる決意をしたのも、自分のやりたいことをみつけたのもここだった。
けれど正直、この場所はわたしには辛いところでもあった。
講義期間中の6ヶ月は、月に一度の課題を提出し、講師である古賀さんに朱をいれてもらう。そして朱入れされたものは、生徒全員に共有される。ほかの方が書かれた課題をみれるからこそ、自分の実力不足がわかって痛かった。
1月に延期された打ち上げを行うため、わたしたちは表参道に集まった。打ち上げだけではなく、古賀さんは2時間の補講をしてくれる。
ダイアモンド社、カンファレンスルーム。今日も自分と向き合わなければ--。
16時半すぎ、古賀さんが頭を下げて、みんなが拍手をする。最後の授業がおわった。
わたしはもう、ここに来ることはない。勇気を出して質問したことも、手に鈍い刺激を感じるほどノートをとったことも、課題の添削に落ち込んで授業を受けたことだって、今となってはすべていい思い出だ。
下手くそだったけど、がんばった。
これまで何度も足を運んだカンファレンスルームを後にする。わたしたち生徒は、バトンズの学校を本当に卒業するのだ。
この卒業は、卒業であり、引っ越しだ。1Kの部屋から1LDKの部屋に引っ越すのだ。今よりも高いところにいくために、ここを出る。
また生徒のみんなと会うときには、いい報告ができるといいな。アパレルの会社でついに文章の仕事ができましたよって言えていたらいいな。
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