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「選挙でここまで必死にやるのか」- 沖縄県知事選挙2018に学ぶ -

2018年8月8日に翁長雄志沖縄県知事がご逝去され、同年9月13日に沖縄県知事選挙は告示され、9月30日に投開票が行われました。

オール沖縄が擁立した玉城デニー候補(現知事)が幸いに当選されましたが、大変過酷な選挙戦となり、自公候補が当選してもおかしくない展開でした。菅官房長官は足繁く沖縄に応援に入りました。

野党共闘とは基本的に急造チームであり、選挙に不慣れな市民の方々も参加され、ノウハウが蓄積されにくい課題があります。

ですが、沖縄県知事選挙2018にて玉城デニー陣営や賛同する市民の方々は「ここまでやるのか」という必死さで選挙に臨まれました。

執筆時は2021年になりましたが、他地域にお住まいの方々の選挙でも普遍的に大いに参考になるのではと感じ、以下に記したく存じます。県民党を掲げた効用は多くの報道でも言及がありましたので、以下では割愛します。

1. ネットデマ対策に市民も陣営も電光石火で動いた

激戦の選挙では怪文書やデマが相次ぎます。

デマの根拠は何もないので、いちいちファクトチェックするのは虚しいものがあります。

ですが、長年の政治ベテランの陣営スタッフが、もし「デマだから放置しておけ。相手にしてしまうとデマ発信者の思う壺だ」という古い政治の意識で臨んでしまうと、SNSが全盛となっている現代では痛恨になります。

デマだと政治通の人々には明らかにわかっている情報であっても、無党派層の方々で政治に不慣れな方々は、「信じていたのに、陰であの候補がそんなひどいことを」と心が折れてしまい、候補に賛同したい気持ちが吹き飛んでしまうのです。

よって、デマ対策は市民も陣営も必死にならねばなりません。

沖縄県知事選挙2018ではファクトチェックサイトが市民により開設されました。FIJさんの調査や発信は沖縄県知事選挙において多くの方々の混乱を解消されたと拝察します。

以下のnoteを告示日前に私は投稿して、沖縄県警への通報を呼びかけました。

一方、告示前からネットデマが蔓延し始め、玉城陣営は電光石火で沖縄県警に刑事告訴をしました。

この動きは大変素晴らしく、どの陣営も学ぶべきと感じます。

理由ですが、ネットデマで困惑する県民の方々に、デマ否定そして危機管理に強い陣営の姿勢を打ち出すことができました。

そして、もし告示前で電光石火で刑事告訴していなければ、告示後もネットデマがさらに収拾がつかないほど増加した懸念は否めません。一定の抑止効果にもなりました。

正しい情報に基づいた投票が可能でなければ、選挙結果がねじ曲がってしまいます。そして、森友事件の悲劇が示す通り、嘘は人を殺してしまいます。トランプ政治は嘘を煽り、合衆国議会襲撃事件へ。

どのような選挙でも怪文書やデマを仕掛ける動きは出てきますが、徹底して根絶せねば、現代そして未来の民主主義が破壊されます。「デマは相手するな」という時代遅れの発想は命取りになりますので、どの陣営も政党も脱却されますことを、切にお願い申し上げます。

2. 強靭なストーリーを構成した

玉城デニー候補は広く知られます通り、父親が米兵で、母親が伊江島ご出身でした。米軍基地に苦悩する沖縄の痛みを体現される生き様と申して過言ではなく、県民の方々は玉城デニー候補にあるストーリーに強く共感しました。

そして、重要なのは、お訴えの最初から基地問題をいきなり説くのでなく、#新時代沖縄 という経済政策から入ったのです。もちろん文脈によっては先に基地問題を述べてから経済政策ということも見受けられましたが、経済政策という広範の主権者との共通言語の強調を玉城陣営が続けていたことは注目に値します。以下、こちらから引用します。

沖縄は「誇り」と「豊かさ」を両立させることのできる、新しい時代に入ったんだ、という意味で使っています。これまでの対立を超えた、新しい政治の可能性が求められている中で、翁長前知事の掲げた「誇りある豊かな沖縄」を発展的に継承したのが、僕の「新時代沖縄」の考え方です。
よく言われるように、沖縄への観光客数はついにハワイを超え、那覇の風景も大きく変わりました。しかし一方で、子どもの貧困問題や、若者の離職率・非正規雇用の問題、それから那覇への人口集中の問題など、課題もたくさんあります。これから沖縄にどんな未来が描けるのか、これまでの対立軸を超えてともに考えるべき時が来ています。

各地選挙において野党系陣営は、つい平和や人権という一押しの訴えを最初に持ってきたくなります。

ですが、広範の主権者の最優先の関心事項は経済政策なのです。

まず経済を語り、その納得感を場に得た上で、平和や人権を語る姿勢は、リベラル勢力が選挙で勝つために不可欠と感じます。

米民主党のオバマ氏やバイデン氏が大統領選挙で当選したのも、グリーンニューディールの経済政策や金融市場の支持があったからです。

3. 川上作戦を取り、誰一人取り残さない姿勢を共有した

玉城デニー候補が選挙戦の第一声に選んだ場所は離島の伊江島(人口約4,500人)でした。

現地写真で、以下はあいにく全体がみえにくいものの、伊江島の森をバックにした第一声でした。「なんだ、閑散としているじゃないか」ではなく、圧巻の強さを私は感じました。

選挙に自信がもてない陣営は、ターミナル駅の駅前や繁華街を第一声にしたくなります。観衆や報道陣も集まってもらいやすい。

ですが、新潟県知事選の花角陣営がやはり離島で第一声をしたように、離島や山間部をはじめ、選挙区全域を重視する姿勢を広範の主権者に伝えられる効用は計り知れません。

川上作戦の詳述は上記noteでぜひご覧いただければと存じますが、どうか「離島や山間部で第一声したら報道陣が来ない」と心配するのでなく、「離島や山間部の第一声に報道陣が来たくなる選挙をしよう」との発想の逆転が各地で広がりますことを、恐縮ですが、願ってやみません。

4. 独創性あふれる沖縄県民の方々が映像表現で応援した

ストーリーにあふれる玉城デニー候補への賛同性(フォロワーシップ)は、下記3分動画のように、日増しに増大していきます。

「沖縄県知事選がもし盛り上がらずに、低投票率に終わったらどうしよう」と強い危機感を覚えた県民の方々も相次がれました。

若者たちが立ち上がりました。

「内気で期日前投票を呼びかけられない」という人向けの爆笑動画すら制作されました。

アーティスティックに映像制作される沖縄県民の方々。

熱い思いが広範の主権者に届きました。

台風が迫っているのに、期日前投票で長蛇の列ができました。そして最終投票率は63.24%(前回64.13%)でした。

以上が沖縄県知事選挙2018の振り返りです。

まとめ

ここまで選挙で必死にやらねばならないのか」と、愕然(がくぜん)とされた方もいらっしゃるかもしれません。

ネットデマ対策、ストーリーの構築と共有、川上作戦による全選挙区への配慮、そして賛同する県民の方々の映像による呼びかけ...

そうです。

必死にやらねばならないのです。

上記の取り組みや関わった方々のどなたかお一人でも欠けていたら、決して玉城知事の誕生にはならなかったのは明らかでした。

ぜひ上記がご参考になれば、幸いです。

最後までご覧くださり、ありがとうございます。もし「応援したい」とお感じの方は、恐縮ですが、サポートをお願いします。m(_ _)m