先祖伝来の土地を守るために:米軍による有害物質の野外処理に反対するグアムの住民たち

米軍がグアムで行っている野外での有害廃棄物の処理(OB/OD)は深刻な環境汚染を招くとして、グアムの住民が反対の声を上げている。

グアムの団体「Prutehi Litekyan: Save Ritidian」が主催し、抗議行動やオンライン署名などさまざまな活動が精力的に続けられている。


OB/ODについて筆者が「平和新聞」2022年2月25日号(発行:日本平和委員会)に執筆した記事を、編集部の了解を得て掲載する。(記事内で触れている訴訟は9月に却下され、住民側は上訴した。)

 米軍による弾薬など有害廃棄物の野外焼却・野外爆発(OB/OD)は違法だとして、グアムの住民団体「プルテヒ・リテクザン(リテクザンを守れ、PLSR)」が今年1月25日に連邦裁判所に提訴した。
 米空軍はOB/ODによる文化的・環境的影響についての評価も代替技術の検討も行っておらず、米国の連邦法である環境政策法に違反しているとPLSRは訴えている。
 PLSRによると、野外焼却(OB)とはふたのない大きな金属容器に弾薬などを入れて上からディーゼル燃料を注ぎ点火するもので、野外爆発(OD)は爆弾やロケット弾などを地面に直接置いて爆発させるもの。どちらも有害化学物質を「周辺の土地、大気、海洋に直接放出する」と団体は警告する。  
 OB/ODの実施が計画されているのは、グアム北部のアンダーセン空軍基地内にあるタラギビーチ。ここは絶滅危惧種アオウミガメの産卵地で、渡り鳥も頻繁に飛来する場所だという。周辺海域はグアムで最も豊かな漁場だ。
 またグアム北部には島の飲料水の8~9割を供給する帯水層(地下水を蓄える地層)があるため、主要水源の汚染も懸念される。
 タラギビーチ周辺の土地はグアム先住民のチャモロ人が所有していたが、第二次世界大戦後に米軍に接収された。PLSRメンバーのモネッカ・フローレスさんは、タラギの土地所有者だった家族を持つ。彼女の曾祖父はタラギでココナッツ農園と養豚場を運営していた。
 「先祖伝来の土地を取り戻すことは私たち家族の夢であり、文化に根差した生産活動をその土地で再開したいと考えています。しかし土地と水が空軍によって有毒廃棄物で汚染されてしまえば、それが叶いません」とフローレスさんは言う。
 米軍は1982年にグアムでOB/ODを開始した。ODは数年にいちどの頻度で継続しているが、OBは2002年以降行っていない。OB/OD実施許可の申請は3年ごとに必要となり、米軍は現在、許可の更新をグアム環境保護庁に申請中だ。
 今回の提訴でPLSRの代理人を務める環境法律団体アースジャスティスのデイヴィッド・ヘンキン弁護士によると、環境政策法は米軍に対し、OB/ODが周辺環境や人々などに与える影響やOB/ODの代替技術の可能性に関する情報を住民に提供し、意思決定に透明性を確保することを義務付けているが、米軍はそれを一切行っていない。
 また2019年に全米アカデミーズが発表した研究で、環境や公衆衛生への影響のより少ない実行可能な代替技術があることが明らかになっている。
 それでも米軍がOB/ODを行うのはそれが最も簡単で安い方法だからであり、グアムで実施しても何のとがめも受けないと考えているからだとヘンキン弁護士は指摘し、今回の裁判はそのような行為を許さず米軍の責任を追及するものだと説明している。(Fanachu Podcast, 2月2日)

「アジア太平洋から 声を上げる人々」(「平和新聞」2022年2月25日号)



PLSRは、OB/ODの中止を求めてオンライン署名も行っている。
署名のリンクと日本語訳は以下:



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?