【初めての新卒採用】 「いつから何人採用すればいいんですか? 」 に本気で答えてみた
「うちの会社は、いつから何人採用すればいいんですか?」
新卒採用を初めて行う企業の方からこの問いをいただくことが非常に多いです。また一部の企業ではこの答えがわからないが故「新卒採用は先延ばしに...」となっている様子もうかがえます。
そこで今回は、この問いに答えるべく、初めて新卒採用を行う企業が「いつから何人採用するといいのか」を決めるために必要な情報をおまとめしてみました。
平均値から考えるー新卒入社は、社員数に対して何人が「妥当」か
新卒入社は一体何人がいいのか。まずは世の中の会社がどのようにしているのか、その平均値を見ていきましょう。
日経リサーチの調査によると、正社員人数に対する新入社員の比率は3.8%が平均で、その割合は従業員規模が少なくなるほど増加します。また「中途採用中心」から「新卒採用中心」に転換するのは「従業員数500〜1,000人未満」の規模からです。
株式会社日経リサーチ「日経「スマートワーク経営」調査解説(15)」
グラフの比率に従うと、例えば従業員200人の会社であれば、その5.1%である10人程度の新卒採用を行うのが平均的で、そこから規模拡大に伴って、徐々に新卒>中途としていくのが一般的な流れと言えます。
また別の記事では、新卒採用人数は通常4%で、上限が10%、下限が1%という見解も出されています。
リクルート「新卒と中途採用」リミックスの方程式(後編)より引用
ワンキャリアとお取り引きいただいている企業様の数字もおおよそ3%〜10%におさまっており、これらのデータは実態に即していると考えます(一部の成長ベンチャーは10%を超えるケースがあります)。
Q. 結局、我が社はいつから、何人新卒採用をするべきか?
いよいよ本題です。
新卒採用をまだ始めていない企業にとって、「平均は分かったけど、うちの場合は従業員が何人になったら新卒採用を始めれば良いのか?」が気になるところでしょう。
弊社にご相談いただく「初めて新卒採用を検討する」という企業様は従業員数30〜100人規模であることが多いです。しかし、実際は従業員数は目安でしかなく、以下の2つの要素がそろえば、規模に関係なく新卒採用を始める時期に来ていると考えます。
1.「3年後に必要な採用人数」を全員中途で採用すべきではないと感じた時
2. 新卒採用を行える人と工数の見込みが立ったとき
それぞれ解説していきます。
A. 「3年後」に必要な人員計画と、あるべき社風から考える
まず1つ目「3年後に必要な人員計画」を算出し、その人数を全員中途で採用すべきではないと感じたら、それは新卒採用の始めどきです。なぜ「3年後」かというと、新卒採用を企画してから実際に入社するまでに最大2年かかるためです(新卒採用にかかる期間の詳細はまた別の記事で紹介します)。
具体的にその判断をする方法をご紹介します。まず「3年後の事業計画」から必要な社員数を算出したら、以下2つの観点から新卒採用の必要性を考えていきます。
1. 【実現可能性】3年後に必要な採用数は、中途採用のみで採用できるのか
2. 【中長期視点】将来的な文化継承や年齢構成に問題がないか
1. 【実現可能性】3年後に必要な採用数は、中途採用のみで採用できるのか
中途採用は景況感に左右されやすく、ボラティリティー(変動幅)の大きい市場のため、毎年安定した人数を確保することにはあまり向いていません。また、スキルがあり即戦力となる人を求めるほど、その採用単価は高くなります。
これまでの自社の採用実績も踏まえると、3年後に必要な人数を全員中途採用で賄うことは現実的でしょうか。このように具体化して考えると3年後に必要な人員の何割を中途採用で、何割を新卒採用で採用する必要があるかを見立てやすくなります。
2. 【中長期視点】将来的な文化継承や年齢構成に問題がないか
もう一つは、会社の将来あるべき姿から考える方法で、こちらの視点の方が重要です。新卒採用の重要な目的の一つは企業規模が拡大したときの「文化継承」です。
中途社員は多かれ少なかれ他社で培った仕事や組織に対する考え方があり、自社の文化や価値観を広めるハブにはなりづらい。一方、新入社員は「社会人としての常識」をはじめて学ぶのが自社であり、自社の文化や価値観の吸収・伝播において重要な役割を果たしてくれます。
皆さんも自分のキャリアを振り返ると、社会人としての価値観はファーストキャリアで培われたという方も多いのではないでしょうか。また、時代の変化が著しい昨今、多くの事業において若い人材の視点は不可欠になるでしょう。5年後、10年後の自社の平均年齢を一定に保つために、定期的な新卒採用というのは重要なシステムになってきます。
ここで中長期視点を例を交えて説明します。
例えば現在従業員数20名、社長の友人や近しい仲間が集まって構成されている会社があったとします。その会社が3年後にプラス10名必要で来年・再来年には中途社員を5名ずつ採用した場合、従業員数は以下のように増えていきます。
現在従業員数20名の会社の人員計画の一例
現在20名
1年後25名(中途で5名が入社)
2年後30名(中途で5名が入社)
3年後40名(中途で10名が入社)
3年後の10名も中途採用で賄った場合、3年後の社員40名は、立ち上げメンバー以外全員が中途入社社員になります。この中途社員の比率で良いと思えるかが判断の分かれ目です。これについてはどちらが正解ということはなく、企業によって考えが分かれるものだと思います。
ワンキャリアが新卒採用を開始した際の事例についてもお話しします。実は我々が初めて新卒採用を行ったのは従業員数が10人程のころでした。
「新卒採用事業」を行う会社である以上、規模に関わらず一定割合の新卒社員がいるべきだと考えた結果、社員数が一ケタのタイミングで1人目の新卒を採用することに踏み切っており、その後も3人、5人と年々採用人数を増やしています。このように営んでいる事業・売上・自社の文化などによって、新卒採用を開始する時期は大きく左右されます。
採用人数に関しては、人員計画で必要な人数を設定するのが自然ですが、基本的にはいきなり初年度から10人以上の新卒採用をしようとすると人事担当者の負担が大きいため、そのような場合は新卒採用経験のある人事を採用するなど、人事に手厚めに人や予算を張りましょう。採用計画に多少の猶予がある場合は、最初は5人以下の募集からスタートし、徐々に採用人数を増やしていくような進め方が無難だと思います。
なお、経営者がこうした中長期視点から「自社がいつから新卒採用を開始するべきか」を決意できていることが、長期戦の新卒採用を成功させる上で何よりも不可欠な要素になります。
A. 新卒採用にかかる「工数」から考えるー2種類の業務時間を足しあげるー
採用人数をある程度定められたあと、次によくいただく質問は「採用チームは何人必要で、採用業務にどのくらいの時間がかかるのか」というご質問です。
見切り発車で新卒採用を開始し、後から対応できる社員が足りないという事態に陥ることは避けたいですよね。この項目では、採用人数から逆算して「かかる工数」を試算する方法をご説明します。
1. かかる工数の試算方法
まずは新卒採用にかかる時間の算出方法から。新卒採用担当者(人事)の工数と、面接官の工数(人事以外の社員も含む)に分けて計算が必要です。
●新卒採用担当者の工数
新卒採用担当の業務は2種類あるため、それぞれについて説明していきます。
・企画業務の工数
・選考業務の工数(採用人数によって変動)
まずは「企画業務の工数」から。新卒採用をはじめるにあたり採用人数の大小に関わらず以下のような作業時間が発生します。
【企画業務の工数】
・採用ターゲットの擦り合わせ(※受入部署や経営陣と)(1〜2週間)
・募集文の検討、掲載調整(自社HP・求人媒体)(1〜2週間)
・説明会の準備(開催準備・スライド作成)(1〜2週間)
・説明会開催(3時間(参加者確認や準備片付け含む)×開催回数)
・面接のディレクション(評価基準決定・面接官レクチャー)(1〜2週間)
・進捗報告業務(3〜4時間/月)
・内定者フォロー(内定後入社まで継続的に実施)
※()内の時間は一例です。
上記のような企画や施策の実行だけで、最低2〜3ヶ月分は見る必要があります。これに加えてインターンなどの採用イベントを開催する場合は、その準備と開催時間分の工数が追加されます。続いて選考業務にかかる時間の試算方法です。
【選考業務の工数(採用人数によって変動)】
・エントリーシートの確認
・面接調整
・面接時間
・合否連絡 など
候補者対応の時間は、採用人数とその歩留まりによって変動します。計算が楽になるよう無料の「工数算出シート」もご用意しました。入社人数の目標と選考通過率・各作業にかける時間を入力すると自動的に候補者対応にかかる総工数を試算することができるようになっています。「工数算出シート」をご希望の方はこちらのフォームよりリクエストをお送りくださいませ。折り返しシートをお送りいたします。
上の例では、2人採用するとした場合、エントリー数は496人必要で、エントリーした候補者のES確認や各種連絡・面接実施時間にかかる総工数は右下の12日分になります。
企業によってそれぞれの項目にかかる時間も、かけたい時間も異なるため、シートの数字は自社の数字に置き換えてご利用いただく必要がありますが、考え方としてはこのような各項目の足し上げで試算が可能です。
以上を踏まえると、仮に2〜3人の新卒採用をすると決めた場合、採用人数に関わらずかかる工数2〜3カ月分と、候補者対応にかかる工数12日分の合計3〜4カ月が総工数となる計算になります。注意点は、3〜4カ月で採用業務が終わるわけではなく、この工数が薄く長く1〜2年にわたってかかる点です。
●面接官の工数
面接は新卒採用担当者一人では行えませんので、現場社員を巻き込む必要があります。上で作成した面接参加者数のシミュレーションシートがあれば、担当社員を割り振る計画は難しくありません。「工数算出シート」の3.の項目に「面接期間」と「担当者」を書き込んでいけば、自動的に一社員あたりの面接人数・時間と1週間あたりの面接時間まで算出されます。(無料の「工数算出シート」はこちらからお申込ください。)
単純計算では、新卒採用のプロジェクトを動かす社員(=新卒採用担当者)の工数と、面接を担当する社員の工数が確保できる見立て(=各部署の上長の事前承諾)が揃えば、新卒採用に着手することが現実的になります。
初めての新卒採用はどのような体制で行うと良いか?
次は具体的に誰をどのようにアサインすると良いかです。アサインできるメンバーが決まるといよいよ新卒採用の開始も目前です。
1. プロジェクト推進メンバー(=新卒採用担当者)の決め方
まずは企画〜面接調整までを行うプロジェクト推進メンバーの決め方です。通常、新卒採用人数が10人以下の場合、通常業務や中途採用と兼務の新卒採用担当を置くことが多いです。
しかしながら、その期間が長いこと(最大2年)、中途採用より業務内容が多岐に渡ること、各部署との調整事項も多いことなどから、社員1名のみに任せると負担が大きく、目標の未達や入社後のミスマッチにつながりやすいです。
そのため、以下の条件をできるだけ満たせる体制をおすすめしており、弊社でも実際にこのような体制で遂行しています。
● 兼任社員複数名でプロジェクト体制を組む(各部署から人を選抜)
● 新卒採用プロジェクトは役員直下で行う
● メインの担当者はできるだけ社内事情に精通している人物にする
それぞれ解説していきます。
● 兼任社員複数名でプロジェクト体制を組む(各部署から人を選抜)
新入社員が将来配属され得る部署は複数に渡るため、各部署から必要な人材要件を引き出したり、面接協力を得るためにも、できるだけ複数の部署から兼任社員を選抜するとスムーズです。ただし職種別採用を行う場合は、その職種の人材を受け入れる部署の社員が中心になるのが良いでしょう。
● 新卒採用プロジェクトは役員直下で行う
新卒採用の業務には、ターゲットの選定、打ち出すメッセージの議論、最終面接など、経営陣との調整事項も多いです。また長期プロジェクトであるゆえ、推進が弱まると途端に失速します。そのため、新卒採用にコミットする役員を立て、その役員直下でプロジェクトを動かすと強力な推進が可能になります。また、その担当役員が社長である場合、なおのこと成功率が上がる傾向があります。
●メインの担当者は、できるだけ社内事情に精通している人物にする
新卒採用の目的の一つに「文化継承」があるという点を前述しました。また新卒採用のイベントや面接において、さまざまな社員に協力をお願いする必要も出てきます。そうした目的や業務内容を踏まえると、自社文化の理解が深く、各部署に顔が利く人材をメインの担当者に置く方が推進がスムーズです。
2. 面接担当者の決め方
続いては面接官になってもらう社員の決め方です。多くの企業は一次面接はメンバー社員、二次面接がマネージャー、三次面接以降が部長というように、面接のステップ別に担当する社員のレイヤーを決定し、その中で誰に依頼するのかを決めていきます。
実際に依頼する人を決める際には、各部署の責任者と適性を相談することになりますが、面接官は会社の印象を決める重要な接点となるため、できるだけ学生を魅力付けできる社員を中心に選ぶようにしましょう。
予算はいくらぐらいかかるのか?
ここまでで「何のために」「誰が」「どのくらい時間をかけて」新卒採用を行うのかが見えてきたと思います。残る問題となる「いくらで」を最後に解説します。
こちらはリクルート調べの以下の表が参考になります。従業員規模・業種・求める人材などによってそもそもの採用単価は異なりますが、全体平均で新卒採用のコストが中途採用を下回っています。採用規模が大きくなる程新卒採用に比重が寄る企業が多くなるのはこの費用感も理由のひとつです。
出典)リクルート 就職白書2019
なお、上の数字は総予算を採用人数で割った結果となるため、採用人数が若干名の場合は費用が上がる傾向があります。目安として、新卒採用の人材紹介における成果報酬費80万〜120万円/名(※)という数字も知っておきましょう。
(※)HR NOTE 新卒ダイレクトリクルーティングを成功させるポイントは?|9つのおすすめサービスもご紹介!参照
以上となります。最も重要な「何のために」を決めた後に、「誰が」「どの程度時間をかけて」「予算はいくらで」新卒採用を進めるかの見立てが立てば、新卒採用に着手する準備は整っています。
最後に
いかがでしたでしょうか。
新卒採用は、未来に向けた重要な投資です。今回ご紹介したような「3年後の事業計画から逆算した採用目標の設定」「採用目標から計算した時間と予算」を基に、自社にあった採用の始め方と計画に落とし込んでいただければと思います。
筆者の所属する部署にも今年から新入社員が入ってきていますが、とてもフレッシュで良い刺激を与えてくれます。目の前の仕事に全力で立ち向かう姿には勇気付けられますし、長年働いていると「当たり前」になってしまっている業界や社内の慣習を素直に問い直してくれるような意見・発言には考えを改めさせられます。
新卒採用のメリットの一つに「組織活性化」といった言葉を聞きますが、それはかけがえのないものだと感じます。この記事がこれから事業を、人を成長させていく多くの企業様にとって、新卒採用を開始する上で役立つ情報となれば幸いです。
ワンキャリアではより本質的な採用活動を目指す新卒採用担当の方向けに、新卒採用の体系的な考え方から、すぐ活用できる実践方法まで、最新の事例をもとに解説する「 #新卒採用のトリセツ 」を公開していきます。
このシリーズが企業の採用力を高め、そして実践する企業が増えることで、学生の就職活動もより健全になることを願っています。
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この記事の筆者
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