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内定辞退者の本音に迫るー企業がとれるたった二つの辞退予防策とは?


6月は多くの企業が内定を出す時期です。全ての選考を通過した学生に内定を出す瞬間は、人事にとって達成感のある瞬間でしょう。しかし内定出しが終われば束の間、次は「内定承諾を貰えるか」というステージが待ち構えています。

内定辞退率の高さは多くの人事にとって悩みの種。そこで今回は内定辞退の実態と、企業ができる予防策について紹介していきます。

内定辞退率は何割が普通?

自社の内定辞退率は高いのか、低いのか。気になる企業も多いと思います。以下は『マイナビ 2021年卒 企業新卒内定状況調査』における企業の回答の集計結果です。

辞退率2割が全体のボリュームゾーンですが、辞退率4割以上と回答している企業も3割は存在し、辞退率は2〜4割ほどになる可能性が充分にあると予測しておく必要がありそうです。

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出典)『マイナビ 2021年卒 企業新卒内定状況調査』p32 を集計した結果をグラフ化

内定式を越えれば安心?内定辞退時期のピークはいつか

ディスコの2019年10月時点の調査によると、内定辞退のピークは6月上旬。そこから一度下降した後、内定式直前の9月にも増える傾向がわかります。

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出典)DISCO 『2020 年卒採用 内定動向調査/2021 年卒採用計画』p3

基本的に、内定通知後の承諾判断は学生に委ねるしかありませんし、尋問や拘束といったオワハラは決して行ってはいけません。では企業ができるアピールは皆無なのかと言うとそうではないと考えます。

学生の内定辞退理由・内定承諾理由には傾向があります。よくある辞退理由・承諾理由を知ることで、事前に予防線を張ることは可能になります。


実はどの業界も同じーよくある辞退理由の1位とはー

就活サイトONE CAREERに投稿された「内定辞退理由」を集計してみました。表を見ると、全業界において最も高い辞退理由は「業界」か「戦略・事業」のいずれかです。

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出典)ONE CAREER上の「内定」に関する2020年卒〜2021年卒就活生のクチコミ・体験談の回答を分類し集計した結果(2021年5月20日時点)

具体的に「業界」「戦略・事業内容」の何が問題で辞退しているのか、詳細を見ていきましょう。

● 辞退理由「業界」の詳細とは
理由はシンプルで「そもそも第一志望業界ではなかったから」というものがほとんどです。身も蓋もないように感じるかもしれませんが、就活生の4割が大学3年の秋〜冬に志望業界を変更するという調査結果も出ており、採用活動で会社を売り込むのと同じぐらい、業界の魅力を伝える必要性があることがわかります。

● 辞退理由「戦略・事業」の詳細とは
「戦略・事業」のコメントで多いのは「事業ドメインに興味が持てない」という内容でしたが、残りの3〜4割は「伝え方の問題」である様子が伝わってきました。実際のクチコミ(要約)もあわせてご紹介します。

1. 「働くイメージ、仕事のやりがいがわからない」
結局最後まで「具体的に自分がどう活躍できるのか」のイメージが湧かず承諾できなかったというコメントが散見されています。

「仕事についてやりがいを聞いたのに、プライベートでの楽しいことについて回答され、あまり仕事が楽しくないのかと感じてしまった」
「仕事内容の幅が狭く、自分が働き成長する姿を想像することができなかった」


2. 「新規事業開発を行っていない(行っている様子がない)」
この回答は特に大企業・メーカーなどで多く見られます。今は業績好調、待遇も魅力的な安定企業だが、新規事業を行っている様子がない。既存事業が苦しくなる日に備えられていないと感じたという回答が見られています。

「技術に強みがありシェアも高く安定しているが、その技術に頼りすぎて新規事業開発を行っている様子がない。斜陽産業になった時に厳しいのではと考え辞退しました」

3. 「『この会社でなければ』できないことがわからない」
大手・ベンチャー問わず多く見られた回答です。「会社独自の強みは?」「この会社だからできることは?」と言った質問に、満足のいく回答をもらえていないと感じている学生が一定数いる様子が伺えます。

「「世界一」と述べているので具体的にどうやって世界一になるのかを質問したが、全く具体的な回答をいただけず、同業他社と比較した強みもわからなかった」

これらの回答から見られる共通点は、学生が「この会社で働ける・成長できる」という納得感がないことです。逆に承諾理由で「戦略・事業」を挙げている学生は「X年後にこうなれるイメージがもてた」「XXな人材になれる環境があると感じた」など、その会社で働き、事業とともに自分が成長していくイメージが描けており、その根拠に腹落ちしている様子が伝わってきます。

内定承諾先はどうやって決める?ー承諾の決め手からわかる学生の本音ー

反対に、学生が内定承諾する企業の決め手は何なのでしょうか。内定辞退理由の裏返しかと思いきや、ここでの最大の理由は「社風・人(36%)」次いで「戦略・事業(29%)」です。なお「社風・人」の内訳は「(人事以外も含めた)社員の雰囲気(80.4%)」次が「人事・面接官の人柄(16.3%)」最後に「経営者の人柄(3.3%)」の順になります。

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出典)ONE CAREER上の「内定」に関する2020年卒〜2021年卒就活生のクチコミ・体験談の回答を分類し集計した結果(2021年5月20日時点)

業界や事業といった辞退理由を見て、動かし難い理由と感じたかもしれませんが、多くの学生にとって入社先の最後の決め手は人なのです

また、「社風・人」のコメントの中身を見ていくと「特別な人格者がいた」と言った内容はほとんど見受けられず、選考中の誠実な対応と、人事以外の社員との接点・コミュニケーション量が充分にあったかにつきるといった印象です。実際のクチコミ(要約)もご紹介します。

選考中の対応に関する承諾理由
「通過連絡なども素早く、採用方針がしっかりと固まっていることが伺えた。誠実な対応を受けて一緒に働きたいと感じた」
社員との接点・コミュニケーション量に関する承諾理由
「現場の社員と話す機会が他社と比べて圧倒的に多く、働くイメージが付きやすかったため承諾した。」
「選考中も説明会や沢山の座談会を設けていただき、選考で聞いていた通り「XXを大切する会社」だと肌で感じることができた。」

就活サイトONE CAREERのクチコミに「社員と接する頻度」という項目がありますが、この点数が低い企業が案外多いです。そもそも就活生が「社風・人」が自分に合うか判断ができるほど、充分な社員との接点を提供できていない会社が多い可能性が考えられます。

内定辞退を予防するために人事ができること

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これまでの経緯から内定辞退の予防策をまとめます。学生の自由な意思を尊重しつつ辞退率を下げるために人事ができることは二つです。

・「なぜこの会社で成長できるのか」の具体的な説明
・「できるだけ多くの社員との接点」の提供

多くの企業が「自社の魅力的なイメージ」を言葉で伝えることで内定承諾率を上げられると誤解しています。これは広報段階では有効ですが、内定承諾のステージではあまり効果を発揮しません。

伝えるべきは「ここでどのような仕事ができるのか」「そのやりがいは何か」そして「どのくらいの期間で、どんな成長できるのか」「成長の根拠となる環境や制度は何かといった具体的な話です。そして、その実績かつ裏付けとなる、リアルな社員との接点です。

これらの情報は、学生が内定承諾先を決める「判断材料」であり、これらが不十分であれば「判断ができないため辞退している」という事実があることを見逃さないようにしましょう。実際に内定辞退率が大きく落ちてしまったという企業の事例でも、同様の課題が紹介されています。

2022年卒の候補者に対してこれからできること

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まさに今月、2022年卒の候補者に内定を出すという企業も多いと思います。候補者に今一度、以下のような質問を投げかけてみましょう。

「自社で働くことでなりたい自分になれるイメージが持てているか」
「入社に当たって不安なことはないか」
「確認しておきたいこと、会っておきたい社員がいないか」

こうした学生の声を聞き、できる限り具体的な回答を行います。選考段階でのこういった認識合わせは、入社後のギャップによる退職防止にもつながります。


以上となります。いかがでしたでしょうか。

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この記事の筆者

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