日本水準原点の平面構造について(メモ)

                                                                             2015.1.21更新 

(主にネットと図書館で調べた文献調査の結果です。)

 まず、国立国会図書館サーチで「水準原点」「水準原標」「佐立七次郎」で検索してみた。結果一覧よりいくつか資料を見てみた結果、以下の4点の資料に水準原点の平面図の画像が掲載されていた。

1)『国土地理院時報 (74)』(国土地理院,国土交通省国土地理院 編 国土交通省国土地理院 1991.10) p58~65「日本水準原点創設100周年 / 西村修 箱岩英一」
平面図の画像(白黒)あり。おそらく戦前のものを引用したものだが引用元の明記なし

2)『測量 41(5)(482)』(日本測量協会 日本測量協会 1991.5) p21~46「〔特集〕 日本水準原点創設100周年 / 箱岩英一」
1)と同じ画像あり(カラー、青焼き?)。引用元の明記なし

3)『偕行社記事 (82)』(偕行社,偕行社編纂部 [編] 偕行社編纂部 1892.4) p40~443「水凖原点解説 / 藤井包總」
1)2)とは別の図で簡易な平面図の記載がある

4)「水準原點解説 附水準原點ニ水晶ヲ用ユル理由」『研究蒐録 昭和19年5月号』収録→『十五年戦争極秘資料集 補巻38[第3冊]』(不二出版 2011.6)にて復刻あり。
1)2)3)とは別の図で簡易な平面図がカットとして掲載されている。本文は「和紙に墨書した標記の古い記録」との事。「明治廿三年七月」の奥付あり。内容は立地についてと、水平構造について及び原点に水晶を選択した理由が書かれている。「水準原點ノ構造」(立面図)及び「水準原點建設地価断面圖」も掲載。

 → 1)2)3)は国立国会図書館デジタルコレクションの図書館送信資料なので送信館では閲覧可能。

 以下の資料には平面図の掲載はなかった。

5)『陸地測量部沿革誌. 第1至5編』(陸地測量部 編 陸地測量部 1922) p112「水準原點落成」
文章による形状や設置場所の選定などの説明がある。図はない。

6)『陸地測量部写真帖』(陸軍参謀本部陸地測量部,陸地測量部 [編] 陸地測量部 1932)「水準原點」
標庫の外観写真(正面から)のみ

7)『測量・地図百年史』(測量・地図百年史編集委員会,建設省国土地理院,1970)
p.169-173第8章第2節水準原点に文書による説明および外観写真(巻頭口絵にもあり)及び立面図(「水準原点基礎図」)あり。

8)『新建築 51(7) 1976年6月臨時増刊「日本の様式建築」』(新建築社 新建築社 1976.6) p.30「古典系の貌 水準原点標庫 / 佐立七次郎」
標庫の外観写真のみ

9)『官報』
1890年12月20日に申出、12月24日に建設の指令、1891年5月に完成とあったので各月索引等を見てみたが記載なし。

その他外観写真は『日本近代建築大全 東日本篇』(伊藤隆之 撮影,米山勇 監修 講談社 2010)、『時代の地図で巡る東京建築マップ』(米山勇 著,伊藤隆之 写真/著 エクスナレッジ 2013)にも掲載されていた。

 →5)9)は国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開資料、6)は図書館送信資料。

 そのほか、1)2)記載の参考文献に挙げられている資料から掲載されていそうな以下の資料を調査

10)『三角測量方式草案』(陸地測量部)
NDLサーチ、CiNii Books、国立公文書館(デジタルアーカイヴ、アジア歴史資料センターとも)ヒットせず。
所蔵元?として国土地理院史料館とあり。国土地理院の現在の組織図にはない。「地図と測量の科学館」のことか?

11)『三角測量法式』(陸軍参謀本部陸地測量部 陸地測量部 1901) p.253-256「第二十四章 水準原点」
文章による形状や設置場所の選定などの説明がある。図はない。

2)の本文中に「水準原点基礎図其二」という資料の記述があるが、NDLサーチ、CiNii Books、国立公文書館(デジタルアーカイヴ、アジア歴史資料センターとも)ヒットせず。

12)『建築雑誌』(日本建築学会)
建築学会のサイトで1890~93年分の目次をみたが掲載はなかった。

 → 11)は国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開資料。

 施工をした清水建設(当時は「清水方」)の関係資料も調査した。

13)『清水建設百五十年』(清水建設株式会社清水建設百五十年史編纂委員会 編 清水建設 1954)、『清水建設百七十年』(清水建設株式会社 清水建設 1973)、『清水建設百八十年』(清水建設株式会社 編 清水建設 1984)、『清水建設二百年 作品編』(清水建設 編 清水建設 2003)
いずれも記述なし。

清水建設HPサイト内検索で「水準原点」「水準原標」ヒットせず。「佐立七次郎」で検索すると以下の資料がヒットした。

14) 『清水建設研究報告第89号』(清水建設技術研究所 2012.1) p.105-114「明治・大正期の建築作品集にみる清水組設計組織(その1)」(松波秀子)
p.118に「明治廿五年九月製『清水方建築家屋撮影』」という資料が紹介されており、その16として「水準原點臺 明24 佐立七次郎」の記述がある。
『清水方建築家屋撮影』明治25年9月はNDLサーチ、CiNii Booksともにヒットせず。日本建築学会図書館に1892年12月発行の『清水方建築家屋撮影』があるが同一資料かは不明。

10)の『三角測量方式草案』の作成には田坂虎之助が大きく関わっていたとのことだったので田坂虎之助について調査。

15)『三角点・水準点をつくった人 : 近代の測量から現代まで』(西田文雄著

国立国会図書館、広島県立図書館、広島市立中央図書館、三原市立図書館、駒澤大学図書館、広島修道大学図書館に所蔵あり。
ただ、同書を紹介したHP(http://file.fukuoka-chousashi.or.jp/FILE/h26/26R127.pdf )で読める「はじめに」及び目次によると田坂に関する章は『国土地理院広報478号』(2008.4)、『同479号』(2008.5)に掲載の「わが国の三角測量を創業した田坂虎之助(上)」(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/996515/www.gsi.go.jp/WNEW/koohou/478-6.htm)「同(下)」(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/996515/www.gsi.go.jp/WNEW/koohou/479-5.htm)及び『日本測量協会中国支部報 No.44』所収の「三角測量を創業した田坂虎之助 青山霊園に眠る」(http://www.jsokuryou.jp/Corner/kikansi/sibu/chugoku/cg1201_11-13.pdf )の改題・改稿。図書、雑誌とも水準原点についての記述はない。
 ただ、同書にはp.114-119に「6.  佐立七次郎」の項があり、そちらにはp.118に「水準原点の設計図抜粋」として、水晶製尺度の図面が記載されている。巻末参考文献によると出典は「国土地理院資料」となっている。

16)『近代測量史への旅 ゲーテ時代の自然景観図から明治日本の三角測量まで』(石原あえか著 法政大学出版局 2015.9)
水準原点については記述がない。

 16)によると田坂虎之助はドイツに長期留学をして測量学を学んだということだったのでドイツの水準原点について調査。

17) “Normalhöhenpunkt 1879” 1879年にベルリン天文台(“Neue” Berliner Sternwarte)に設置された(現存せず)

Wikipedia: https://de.wikipedia.org/wiki/Normalh%C3%B6henpunkt_1879 に立面図と正面からの画像あり。

平面図は天文台の平面図(Wikipedia : Neue Berliner Sternwarte( https://en.wikipedia.org/wiki/Berlin_Observatory )に掲載されている)しかない。

みたかぎりでは平面形状は八角形を半分した形(見ようによっては船形にみえなくもない)で、扉の開き方などは日本水準原点にも共通の形状となっているなど一定の影響関係はあるかもしれない。

その他、Deutche National BibliothekやLandesvermessung und Geobasisinformation Brandenburgのなども検索したが、詳細な平面構造がわかる資料(インターネットでみられるもの)はなかった。 

18) “Der Normal-Höhenpunkt für das Königreich Preussen an der Königlichen Sternwarte zu Berlin : festgelegt von der Trigonometrischen Abtheilung der Landesaufnahme”(Unveränd. Nachdr. der Orig.-Ausg. Berlin, Mittler, 1879 / [Landesvermessung und Geobasisinformation Brandenburg] Landesvermessung und Geobasisinformation Brandenburg)

19) 上記wikipediaの画像の出典である”Nivellements der Trigonometrischen Abteilung der Landesaufnahme band4” 1880 は国内所蔵なし。ベルリン州立図書館及びフンボルト大学ベルリン(元のベルリン大学、22)によると田坂虎之助は学籍及び聴講記録はなかったが講義を受けていたとのこと)の附属図書館に所蔵がある。どちらもインターネット等で本文は観られない(2016/1/21現在)

ベルリン州立図書館:
 http://stabikat.de/DB=1/XMLPRS=N/PPN?PPN=391069128

フンボルト大学ベルリン附属図書館:
http://primo.kobv.de/primo_library/libweb/action/display.do;jsessionid=490127F34EA18FDBD83235DB53F21443?tabs=detailsTab&ct=display&fn=search&doc=hub_aleph001906668&indx=3&recIds=hub_aleph001906668&recIdxs=2&elementId=2&renderMode=poppedOut&displayMode=full&frbrVersion=&dscnt=0&vl(1UI0)=contains&query=any%2Ccontains%2CNivellements+der+Trigonometrischen+Abteilung+der+Landesaufnahme&vl(173155009UI0)=any&scp.scps=scope%3A%28HUB_UB%29%2Cscope%3A%28HUB_EDOC%29%2Cscope%3A%28MAN_NL_ALL%29%2Cscope%3A%28HUB_ALEPH%29%2Cscope%3A%28hub_ebooks_all%29%2Cprimo_central_multiple_fe&tab=default_tab&dstmp=1450589791876&highlight=true&mode=Basic&dum=true&search_scope=HUB_ALL&displayField=all&bulkSize=10&pcAvailabiltyMode=false&vl(freeText0)=Nivellements%20der%20Trigonometrischen%20Abteilung%20der%20Landesaufnahme&vid=hub_ub&institution=HUB 

課題
・ 国土地理院所蔵の水準原点の設計図にはどの程度詳細な図面が記載されているのか?
・ 上記19)や18)ほか、Normalhöhenpunkt 1879の詳細な平面および立面構造がわかる図面はあるか?
・ また、それらが水準原点の実際の設計に於いて参照されていたのか否か→これは難しいか?
・ 田坂虎之助をはじめとする陸軍測量部と佐立七次郎の水準原点設計に於ける役割について。佐立は水準原点自体の構造にも携わっていたのか?それとも標庫だけなのか?




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?