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落語の映画、映画の落語/「二つ目物語」北海道上映会と寄席

かねて注目していた林家しん平師匠の映画「二つ目物語」。
この度めでたく、2023年12月16日に北海道発上陸と相成りました。
私の「推し」林家あんこさんが出演のみならず、助監督として携わったこの作品。
ようやく見ることができると勇んで上映会に行ってまいりましたよ。

会場はダルマホールという名の小さなイベントホール。
「だるま寄席」とあるのは、この会が映画上映のみならず、ひきつづいて寄席としての口演があることを示しているのです。

高座に上る方々は「二つ目物語」監督の林家しん平師匠を筆頭に、オムニバス3本のうち「貧乏昇進」で主役を務められた柳家㐂三郎(きさぶろう)師匠、同じく「貧乏昇進」で居酒屋の客として味のある演技を披露された春風亭柳朝師匠。そして「モテ男惚れ女」で協会幹部の役を務められた三遊亭歌る多師匠の4人。
上映に先立って挨拶されたしん平師匠は直前に少し体調を崩されたとのこと。そんな中で寒い北海道へのお越しに感謝でした!

上映はコンパクトなスクリーンでの簡易なもの。
気になる内容。
一応ワタクシ、映像に携わるプロですので、映像作品としての技術的なクオリティについては思うところがないわけではありません。
が、それを補って余りあるクリエイティビティが溢れていました。

しん平師匠の心の中にある落語への愛。
落語人生の中で様々な転機を迎え、その度に思い悩み、しくじり、葛藤した二つ目時代。
その時代を映像化することで、自分の跡を継ぐ若い世代の噺家さんたちに無言のエールを送り続けているのではないかと感じました。

「俺の二つ目時代なんて、ヒドいもんだったよ。だからね、オマエらの失敗なんか小さい小さい。むしろマジメ過ぎるんじゃねえか?噺家なんてやらかしてナンボ。全部、芸のこやしなんだから。
映画なんて言って、変なモン作ってるなって思うだろ?いいんだよ、オレはやりたいことやってんだから。やりたいことやってコロっと死ぬんだから」

そんなしん平師匠の心の中の声が聞こえてくるような、優しさとユーモアにあふれる作品でした。

上映後の師匠の話では「次回作は、ちょっとホラー」とのこと。楽しみです!

『真打4人が豪華競演』

そしてそんな4人の師匠が次々高座に上がるというお楽しみの時間が到来。
開口一番の㐂三郎師匠は「手水廻し」をかけられました。
江戸と大阪の文化の違いから生じる勘違いを楽しむネタですが、この日は小学生らしき子供たちが数名いたこともあり、わかりやすい面白さで会場を沸かせていました。

少し体調が思わしくないようだったしん平師匠が次に高座に上がられ、

『林家しん平の、アタックヤング!!』

と、40年近く前に北海道で担当されていたラジオ番組のタイトルコールを披露されました。当時、リスナーとして聴いていたひと(私も)が数多く来場していて熱い拍手が沸き起こりました。
いやあ、感無量です。
師匠が披露された「大山家ゴーストバスターズ」は池袋で一度拝聴しましたが、今回は懐かしの地・北海道での口演とあって無理をおして熱演していただき、ありがたい限りです。お体、ご自愛ください。

中入り後は歌る多師匠の「替り目」。冒頭の俥屋のくだりをカットして、「いけねえ、元帳みられちまった」でサゲる形でした。これについては少し後述しますが、前列で聴いていた小学生も聴き入るほどのすばらしさでした。

オオトリを務められた柳朝師匠。札幌はゆかりの地ということもあり、ご当地の思い出をマクラに「源平盛衰記」を軽妙洒脱なテンポで熱演され、熱狂のうちに幕となりました。

<アフタートーク>
閉演後に小一時間ほど演者の皆さんとの懇親の時間がありました。しん平師匠がご参加されなかったのが残念ですが、実りある時間でした。
歌る多師匠にこの日の「替り目」の話を伺うと「俥屋のくだりを入れると長くなっちゃうから」とおっしゃっていましたが、なるほど、家の中のやり取りから始まると師匠の演じるおかみさんの味わいも色濃くなり、サゲまでの軸がしっかりして納得感が高まるなと思いました。
柳朝師匠はなんと私と生まれ年が一緒だったことを知りました!札幌のどこかですれ違っていたかもしれないと思うと感慨深いですね。
喬太郎師匠がナイスアシストをしてくれたという一朝師匠への弟子入り秘話や、若かりし頃のしん平師匠の思い出話など、書ききれないほどのエピソードを聴かせていただき、そのお人柄に触れて温かい気持ちになりました!

そして私にとっての一大サプライズ!
林家あんこさん北海道来訪の予定が見えました。これは楽しみ!!
北の大地でお待ちしております。

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