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心の中で「カチリ」と音がした瞬間/気まぐれ雑記

子どものころから「特撮モノ」を見るのが好きだった。仮面ライダーにウルトラマン。戦隊モノに宇宙刑事。「変身」というきっかけで人知を超えた力を奮うヒーローへの憧れを、ずっと心の奥に持ち続けてきた気がする。

現実の世界では「変身」なぞできようはずもなく、子どものころの憧れは年を経るにつれ心の中の押し入れの奥へ奥へと少しずつ押しやられていき、気づけば疑うこともなく「その他大勢」としての人生を送り続けていた。

そんな中、私は2021年の2月からYoutubeでの朗読配信を始めた。いまにして思えば、私の中の無意識が「形のわからないなにか」を取り戻そうと、もがいていたのだろう。

だが知名度も発信力もないただのオジサンの朗読が、簡単に受け入れられるわけもなく、Youtubeでの活動はひとつの壁に突き当たった。

コンテンツとしてのクオリティが高くなかったこともあるが、「私が何者なのか」を発信しなければ、共感は得られない。そう感じた。

あきらめることもできた。

やりすごすこともできた。

だが、もう少しもがきたい。そう思った。

「自分という人間を知ってもらう手立て」として、私はnoteを選んだ。ショートショートを書き、コメントをつけ、企画に参加し・・・と少しづつ交流の輪を広げていく中で、私の音声コンテンツに興味を持ってくれる人も出始めた。

その中で、「ああそうか」と気づいた。

それは「自分に興味を持ってほしいなら、周囲の人に敬意と関心を持たねばならない」ということ。

note内で秀逸な文字コンテンツを公開している人たちに「朗読させてほしい」と懇願した。反応があると「自分が求めているものの形」がおぼろげながら見え始めてきた気がした。

ポッドキャストラジオの配信をしている方々と交流が生まれ、ゲストとしてお招きを受けたりもした。求めているものにグッと近づいた感覚があった。だが、なぜだろう。・・・何か、が足りない。

そして2021年11月、そんな思いを一気に払拭する出来事が起きた。

「拝啓!あんこぼーろ」さんと「あこはるか」さんのポットキャストラジオ「あんこはるかの寄せ書きRADIO」の出演者募集に飛び込みで応募。

↓ゲスト決定時のあこはるかさん記事はこちら!


↓実際の出演時の様子はこちら!

心の広いお二人は、ナニモノかもよくわからぬ私を優しく受け止めてくれただけではなく、神対応で接してくれた。

初対面のあんこぼーろさんは、収録のためのzoomがつながった瞬間、こういったのだ。

「いぬいさん、ぼく今回はやりたいことがありまして!」

それは奇抜な演出だった。

あんこぼーろさんに成り代わり、リスナーにとっては誰とも知れぬ門外漢の私がメインMCとしてあこはるかさんとオープニングトークをする、というものだった。

「・・・いいですね、やりましょう!」

そう答えた瞬間、私の心の中で何かが「カチリ」と音を立てた。

押し入れの奥で眠っていたヒーロー願望が、ムクリと目を覚ました。そう、これは戦いなのだ。どこかで自分のことすらも人任せにしていた、怠惰な自我とのバトル。

勝たねば。そう思った。

「変身!」とは言わなかったが、覚悟を決めた。

出る時か、引く時か、あこはるかさんの呼吸を読む。脳内の情報をサーチして、ワードを選ぶ。次の展開のために、伏線を張る。ボケるならやりきる。ツッコむならためらわず。

私なりに「ゾーン」のようなものに入った状態でオープニングの数分が終わり、その後、ホストのあんこぼーろさんが戻る。勢いにまかせて収録に臨み、気がつけばあっという間に60分が経っていた。楽しかった。とてつもなく楽しかった。その時にはもう、勝つか負けるかといった感覚は消え失せていた。

収録後に、あんこぼーろさんがこう言った。

「ご自分でもラジオ配信、やったらいいじゃないですか!?」

ああ、そうか。そうだったのか。

『声で、自分の世界を創る』

あんこぼーろさんが図らずも仕掛けてくれたイタズラのおかけで、私はようやく、求めていたものの姿を見定めることができた。

やみくもにあがき続けている私を受け止め、きっかけをくれた「あんこはるかの寄せ書きRADIO」には感謝の思いを抱き続けている。

そして私は、自分の世界を創り始めた。

人と深くかかわるのは、怖い。

間違ったり失敗したり、傷ついたり傷つけたりして、落ち込むこともある。でも、運命の巡り合わせで得たこの機会を、いまは大事にしたい。

自分で光を発していたい。

たとえそれが、小さな小さなローソクの炎であっても。



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