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ボカロP外部提供楽曲の魅力と、ボカロP制作楽曲2021年1選

※表紙画像はTask have Fun様の「ぎぷす」MV内よりお借りしました。問題がございましたらご一報ください。削除いたします。


はじめに

こちらの記事は、obscure.さん主催の「#ボカロリスナーアドベントカレンダー2021」参加記事です。
…そう、2021年に書こうと思っていた記事です。当時は間に合わず、そのまま一生下書きで眠っていたものを掘り起こして土を払ってなんとか体裁を整えています。obscure.さん本当にごめんなさい…。
そして、2023年で書きたいテーマは別にあるのですが、そちらはまだ1文字も書けていません。完成次第リンクを貼りますので、そのときはまたお読みいただけたら嬉しいです。何度でも土下座して靴ペロするので許してください…。DECO*27さんがUSJにポケモンハロウィン楽曲を書き下ろしたことについて書く予定です。クリスマスだけどいいのいいの!

というわけで、以下からは、2021年当時の文章になります。
しかし読み返してみて、自分の根っこは全然変わっていないなぁと思いました。2023年はこのテーマをさらに煮詰めたものをお出しする予定です。がんばります。

ボカロP、サイコ~~~~~❣️❣️✊✊

というわけで、リスナーアドカレ2021、お付き合いいただければ幸いです。



メリークリスマス!!!!(大遅刻)

周回遅れにもほどがありますが、ボカロリスナーアドベントカレンダー、18日担当やっていきたいと思います。綿麻と申します、どうぞよろしくお願いします。

みなさ〜〜〜ん、ボカロPが人間(非ボカロ界隈)に提供した曲は聴いていますか?

……...👂🤚

そうですか…

聴きましょう‼️‼️✊💥💥

(地獄に落とす勇気がなかった)



ボカロP提供楽曲の魅力

ボーカルが人間だからこそ生まれてくる文脈というものがあります。より詳細に言えば、その文脈とは、ボーカロイドを地盤に持つ作曲家が人間に書き下ろしたからこそ、そのボカロPの活動史のなかで新たな切り口として見えてくるもののことを指します。私はそういったものを栄養素に日々を生きるオタクです(自己紹介)。

魅力①:推しPに他方から声がかかったという事実がもう嬉しい

まずはこれです(後方腕組みオタク)。俺たちの推しPの魅力を理解してくれてありがとう。俺たちの推しPの魅力を信じてくれてありがとう。私の推しはボカロP活動で生計を立てている方なので輪をかけて嬉しいです。これからもアーティスト活動でおいしいご飯を食べてほしい...。
これらは提供先の規模感に関わらず思いますが、とくにそれが超ド級ビッグプロジェクトとかだった場合はマジかぁ〜!?となりますね。時代が推しPに追いついた。

魅力②:推しPの新しいテイストの曲が聴ける!

楽曲を制作する前に先方と打ち合わせして、我々のこういう部分の魅力を引き出してほしいなどのオーダーを受けるわけです。そしてその部分を、そのボカロPにしかないチャーミングな視点から解釈し、作品として世に出されます。これはもうボカロPによる提供先とのコラボ、あるいは二次創作と言っても過言ではないでしょう(?)。
なのでなるべく、提供先のことも知った上で楽曲を楽しみたいなと思っています。まだまだ私自身十分に実践できてるとは言えませんが、推しPの楽曲提供という一大イベントを最大限楽しむ上でなるべく押さえておきたいポイントです。

心構えはさておき、つまりは外部の存在により化学反応が起きて、普段は見えない一面が見られるのです。
こんな引き出しがあるのか!こういう解釈をしたのか!この部分は提供先のここを拾っているな...。勉強や仕事の時だけ見られる眼鏡をかけた真面目な姿にキュンとするような、そう、そういうアレです。

魅力③新しいテイストが増えてもなお揺るがない推しPの核を感じられる

提供先に寄せる部分もあれば、”ここ”を求めて依頼されたという揺るがない芯の部分もある。むしろ仕事として提供先の色をしっかりと織り込んだ分、光り輝く核の部分がよくわかるのです。
...みなさん、今年発表された超豪華コラボコンピ「キメラ」、大好きですよね?他の色が混ざることで際立つ各ボカロPの特色。それは歌詞であったり音色であったりメロディーであったり、それらを総合して醸し出される雰囲気であったり。その人以外には出せない味がしたと思います。そしてそれらは合わさってひとつの作品になっても味が曖昧になることはなく、むしろしっかりと際立っていた。つまり、ボカロP本人以外の外部の要素が加わることで、際立つ個性を強く深く感じることができるのです。

あとは楽曲提供された歌手の歌い方から感じる仮歌の波動が良すぎるとか、細々をあげるとキリがありませんがとにかく魅力がいっぱいです!

ボカロP制作楽曲2021年1選

ここからが本題です。みんなに聴いてほしい。

『ぎぷす/Task have Fun』

作詞作曲編曲:ピノキオピー。今年の秋に公開された新しめの楽曲です。

通称「タスク」。Velvet managementに所属する熊澤風花・白岡今日花・里仲菜月で結成した3人組のグループ。

グループ名である“Task have Fun”に込められた意味は「人生の課題(Task)を楽しみながらクリアしていこう」。この名前を冠するアイドルが人生の全てを包容する作風のピノキオピーさんに楽曲依頼したの、天才だ...と思いました。

Task have Funという言葉の、そうはいってもFunだけではいられない現実にしっかりと目を向けて、その上でFunであろうとする強さ、めちゃくちゃかっこいい。それに、それこそがTask have Funを体現することなんだろうと思いました。
↑ここめちゃくちゃピノキオピーさんとの共通点じゃないですか...?本当に本当にありがとう...。

※筆者は3次元2次元問わずアイドルコンテンツそのものにかなり疎い人間のため、知識や着眼点で至らない点があるかもしれません。ご容赦ください。



Apple musicさん曰く、2021年私が最も再生した曲だったみたいです。
ぎぷすに勇気づけられ、現在進行形で活力をもらっている人間の自分語り備忘録も兼ねています。こんな聴き方をしてる人間もいるんだな〜ということで、よろしくお願いします。


「ぎぷす」の魅力とピノキオピーボカロ楽曲との対比


早速聴きましょう。おれは何度でもリンクを貼るぞ!!

…聴きました?ありがとう。
次項から、ピノキオピー楽曲の「ボカロが歌っていてかつ提供楽曲でない曲」と比較しながら、ぎぷすの魅力を深掘りしていきます。


①動画

ピノキオピーさんの動画だ!!!!!!!!!!

急な大声すみません。MVの話をさせてください。MVがよすぎるんです..........
これ絶対いつものボカロ曲MVのときの要素拾いまくってますよね!?!?!!作ったの誰!?好き!!ありがとう!!
...と思ったら後日クレジットが公開されまして、動画もピノキオピーさんが編集されたとのことです!!!やったあーーー!!!!

人物のバストアップカットがテンポよく続くところ、
リキッドアニメーションとビビッドな配色、動画なのに漫画のコマ割りを目で追うような錯覚になる映像展開...「すろぉもぉしょん」や「アルティメットセンパイ」を彷彿とさせる、目に馴染んだいつものピノキオピーさんの動画です。
そしてこの演出が3次元とも合うんですよ!!!!タスクの皆さんをさらに魅力的に見せている。まっさらな背景と固定カメラが切り替わるシンプルな構成で、かわいさとエネルギーがまっすぐに伝わってきます!!!どこを切り取ってもかわいい...全フレームスクショして額に飾ろう。

この漫画的なMVがピノキオピーさんの持つ特徴であり、魅力のひとつだなあと思いました。曲だけじゃなく動画まで依頼してくださってありがとう......(誰視点?)
おかげでアイドルに馴染みのない自分でも親近感を持って見ることができました。またこういった形式のMVが見たいですね。


②音

アイドル(明るい人間の少女たちの歌声)だからこそ映えるアレンジ!なんとなくだけど、初音ミクとピノキオピーさんのコンビは少なくともこのアレンジでは歌わない気がする...(音色が明るすぎる)。
i☆Risの「ありえんほどフィーバー」という曲もピノキオピーさんの提供ですが、こちらも第一印象は明るいですね。底抜けの明るさではなく、底があるからこその懐の深い明るさ。そんなところがSUKI...。

(隙あらばリンク貼り大魔神)

普段のボカロ曲とアイドル提供楽曲で何がどう違うかめっちゃ考えたんですが、これ!っていう回答は浮かびませんでした...有識者の方何か思いついたら教えてください。メジャーキーの曲だから...?(普段のボカロ曲はマイナーキーが多い?)

スケールの上を行ったり来たりするピポピポシンセ、「いてっ!」とか、Take care!とか、パートのつなぎ目に仕込まれた掛け声的な部分を聴くと、あぁピノキオピーさんの曲だな〜!と思ってニコニコになります。耳に残るフレーズ。ライブ時の掛け合いを意識した感じ。ボカロ曲ではこういうのはゆっくりの役目ですね。

安定感のあるエレキギターと、みょんみょんとしたコスミック系のシンセ。音色という観点だと「ブラックホールヶ丘商店街」「遊星まっしらけ」「化物宇宙」「I.Q」などと近い感じがします。どれも宇宙がモチーフの曲ですね。ピノキオピーさんの曲って宇宙が題材になることが多いけど、音が宇宙っぽいのは宇宙がテーマだからなのか...?


③歌詞

全治何週間? 君のハートの痛みが
全治何週間? 誰にも見えない傷が
良くなるのを信じて
ぐるぐる巻く巻く
ぎぷす Take care!

誰にも見えない傷はきっと自分にも見えない傷なんだ、それをこの曲は見つけてくれて手当をしてくれるんだ......。
全パート通してストレートな表現で寄り添ってくれるから、「手当て」という文字通り、心の傷口にそっと手を当てられているような温度を感じます。
ボカロ曲ではもっと婉曲な表現をされることが多いから、その婉曲の中のたましいを見たような感覚...

機械 機械
機械 機械じゃなくて 人だから
勝ち目のないバトルでも
やるしかないぜ

ボーカロイドという非実在存在ゆえの面白みを描いてる人の「機械じゃなくて人だから」というフレーズの重みよ...
機械じゃなくて人への書き下ろしだからこそ、ボカロ曲より肯定的で希望的な歌詞で、俯瞰ではなく二人称の主観視点(「あなた(聴き手)」へ向けた「ぼく」視点の歌)にしたのかなと感じました。
このことは、ぎぷすの歌詞全体の構成にも現れており、Aメロが「現在」・Bメロが「展望」・サビが「主題」という展開で、過去と地続きの現在を未来から信じ支える構成となっています。

全治何年間? 途切れそうな幸せが
全治何年間? 元通りくっつくまで
この場所で待ってるぜ
近い未来 ぎぷすの取れた世界を

サビの最後のフレーズ

また、ぎぷすには、先述した宇宙っぽい音に加えて宇宙に関連する歌詞も多数登場します。というか改めてピノキオピー楽曲、宇宙多いな...!?


ピノキオピーと宇宙

さてここで、ピノキオピーさんにとっての宇宙について紐解いてみましょう。
ピノキオピー楽曲における宇宙とは、ささやかで壮大で、いまわしくも愛おしい、物質的で概念的、永遠で一瞬の、二極とそれ以外の些事もすべて飲み込んだわたしたちの全体のことである、と私は解釈しています。

理想と現実のゆらめきは
やがて宇宙という大きなバケモノと
仲良く暮らせるのかな

化物宇宙

しらけたふりして愛していた
ろくでもない世界を

遊星まっしらけ

上記に挙げた曲のほかにも、MV内によく宇宙が登場したり(すきなことだけでいいです、ぜろ等)、アルバムのテーマとなっていたり(Comic and Cosmic、零号)......かなりの数宇宙に関する楽曲やアルバム名が挙がるから、相当創作の地盤に宇宙があるのだなぁ...と思いました。

藤子・F・不二雄先生のSF短編集が家にあったんですが、これを子どもの頃に読んだ影響が大きいですね。宇宙人視点で地球人を見るという作品が多いので、そこから「普通」だと思っていることが、実は普通じゃないと考えるようになりました。

https://originalnews.nico/331651

「愛」というものはありとあらゆるものを結びつけるもので、それは「君と僕」もそうですし、過去も未来も、宇宙全体も含めて……って結構スピリチュアルな話になりますけど(笑)、そういう全体的なことを描けたらと思いました。

https://realsound.jp/2021/08/post-834746.html




そしてぎぷすも例に漏れず、宇宙からの視点があるのですが、宇宙というマクロな描写の前に、ミクロな視点が入ります。

ジャンプで骨折って 転んで擦りむいて
正論で深く傷ついて
 (中略)
山で捻挫して 海で足つって
宇宙で星にぶつかって

どんどん視点が高くなる歌詞

壁にぶつかって 心が折れて
地球上にいっぱい 痣出来て
なんとなく空見ちゃうし
なんとなく空見ちゃうし

失敗した時にそれが自分の全てだって考えちゃう時の描写わかりすぎる


この過去と地続きの未来、そして宇宙からの視点の歌詞。目の前のちいさな事象をつぶさに観察したあと、徐々に視点を引いて、それを壮大な宇宙のなかに配置する。このカメラの引き寄りによって、自分ってこの“世界”に“居る”んだなぁってストン腑に落ちるような...救われますね.......。
ボカロ曲にもそういうカメラの引き寄りは多くて、ピノキオピーさんの歌詞や世界観ってここが核のひとつだよなぁと思います。

違うところといえば、ボカロ楽曲のほうは正反対の概念を同時に持ち出して対比させていたり、ノスタルジーと切望だったり、回想と諦念とちょっとの切望だったり、破滅があったり...
特に切望について。ピノキオピーさんの切望は未来に対しても、破滅に対しても掛かっていて、楽曲全体を見渡すと、破滅に対して掛かっている度合いの方が強い印象です。
が、それはハチワレちゃんの「なんとかなれーッ!!」と同じ状況で、どうにもならんと諦念した故の未来を切り開くための全力の破滅、というイメージが2021年時点では強いですね。もちろん曲にもよりますが...。

対してぎぷすは、傷ついてもうだめだってなってる状態への肯定に加え、近い未来(遠い未来ではない)に治ると信じてくれるところに、切望ではなく希望を感じます。普段のピノキオピー楽曲と対比するとこの温かみが際立ちますね...!!もちろんどちらもLOVEですが...!!!


おわりに -宇宙に内包されたLOVE-

あと、私はピノキオピー楽曲のCメロにグッとくることが多くて、そのフレーズのことを剃刀と呼んでいます(?)

・狂っているのは一体どっちだい
・か弱い兎でいいの?

対してぎぷすのCメロは、

丸い丸い背に そっと手を当て

剃刀を握る手を上から優しく包み込むような......
余談ですが、以前メンタルがやられて友人の前でおしまいになったことがあったのですが、背中をさすられながらこの曲を思い出して「まじで背中ってこんなに丸くなるんだ.........」と思いました。ぎぷす.........。

そしてこの曲を歌うTask have Funのファンのみなさんにとって、この曲こそが、“そうはいってもFunでいられない部分”と共存していくときに何よりの活力となるのでは。そしてそういった場面で自らが活力源であることは、Task have Funというアイドルグループが、自らのためにファンのために、自身の名を体現することに他ならないのでは。
それをつくって表現するのってすごくすごくかっこいいなぁ...と、アイドルファン初心者ながらに感じました。



何兆何億、それ以上に気の遠くなるほど長い宇宙という歴史のなかのほんの一瞬として、この曲を聴く“いまここを生きる私”を宇宙に刻み込んでくれる、そんな「ぎぷす」という楽曲と、ピノキオピーさんの作る曲が大好きです。

このnoteが、「ぎぷす」の魅力と、ピノキオピーさんの魅力と、ボカロP外部提供楽曲の魅力を少しでもお伝えできていれば幸いです。

ここまでお読みくださりありがとうございました!


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