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「生成AIパスポート」の勉強は、本+ChatGPT+YouTubeで完結した(2024年 第1回試験)

ChatGPTなどの生成AIをビジネスに活用するにあたり、技術はもちろん、法的リスクなどについての理解も不可欠です。 そこで注目されているのがそれらの知識を認定する「生成AIパスポート」試験です。体系立った勉強ができると聞いて受験してみたのですが...。

想定外だったのは、本+ChatGPT+YouTubeの3本で、効率よく勉強が完結してしまったことです!

本記事では、こうした新たな勉強スタイルの有効性についてレポートしたいと思います。ぜひ参考にしてください。

【注意】
この受験記は、2024年第1回試験(2月開催)のテストに限った内容です。次回以降で、出題傾向が変わる可能性もあるため、ご承知おき下さい。


第1章 「生成AIパスポート」を受験したきっかけ

この度、2月に行われた「2024年 第1回 生成AIパスポート試験」を受験いたしました。

合否は2か月以内に発表されるそうで、まだ結果はわかりませんが、自己評価では8~9割正解しているため、多分合格しました。(もし落ちていたら泣くしかありません)

ChatGPTが世に放たれてから1年余りが過ぎ、「なんとなくChatGPTを使ってはいるけど、そろそろ知識のバックボーンが欲しい」と感じる時期であり、この試験のトピックが私の需要とマッチしました。

この試験を選んだ理由は、トピックが網羅性が高く、レベルが高すぎず数学も不要であること、公式テキストと公式問題集が揃っていることでした。

【問われる知識】
1.生成AIやChatGPTの技術的な成り立ち
2.セキュリティや権利、法的なリスク
3.プロンプト(命令文)の基礎
4.ビジネスへの応用

これら4つの分野が問われており、知識だけでなくビジネス現場でChatGPTを活用するための具体的な実務まで幅広く網羅されていると感じました。

※具体的な出題範囲は、以下のページにシラバスが掲載されています。
https://guga.or.jp/outline/

第2章 「仕事に使える速攻ノウハウ」のような試験ではない

この試験は、「仕事に使える速攻ノウハウ」のようなものを求める方には、そういうものはほとんど出題されませんので、受験をおすすめしません。

扱われるトピックは広範囲にわたり、単に「ChatGPTを仕事に役立てるプロンプトの書き方」といったノウハウに限らず、AIの発展と成り立ちやその周辺技術、生成AIによるリスク(知的財産権など)、国が定めたAIガイドラインなども含んでいます。

技術的なテーマは当然、難しい

序盤の「生成AIやChatGPTの技術的な成り立ち」の部分は、数学不要とはいえ、当然難しいです。
技術的なワードが多用されるため(ディープラーニング、CNN、VAE、GAN、Transformer、GPT等)、テキストだけでは理解が難しく、丸暗記の試験対策に終始してしまう恐れがあります。

そこで、YouTubeを参考にしたり、ChatGPTに質問することで理解を深めるよう努めました。

あまり具体的なケースに踏み込まれてはいない

この試験では、テキストの生成、画像の生成、動画の生成、音楽の生成など、広範囲のトピックを扱っていますが、逆に言えば、個別の分野について深く踏み込んだ具体的なケーススタディーはあまり問われませんでした

例えば、こういうケースは扱われません:
画像生成において、既存のイラスト作品と類似のイラストをAIが生成した場合に、そのイラストをビジネスに利用して良いか」など。そうした現場で起こり得る具体的なケースには触れられておらず、試験でも出題されません。

それよりも「知的財産権とは何か、著作権とは何か?」といった形式的な概念を学ぶことに焦点を当てています。したがって、より具体的なケーススタディーについては、別の方法で学習する必要があるようです。

国が定めた「AIガイドライン」についての学習が苦痛だった

また、日本が定めた「AIガイドライン」について1割くらい出題されますが、この部分は他の出題範囲と異なり抽象的で理解しにくく、正直なところ、学習していて苦痛でした。

例えば、「AI社会原則(7つ) 1. 人間中心の原則、2. 教育・リテラシーの原則、3. プライバシー確保の原則、 … etc」のようなものです。

ただし、丸暗記する必要はありませんので、意味を理解し、択一問題に答えられればよいです。

第3章 試験の形式とレベル

(以下はChatGPTに表にまとめさせた情報です。)

四択問題、ひねくれた選択肢は無い良問

テストの出題形式は四択問題です。記述形式の問題はありません。
多くは「最も適切なもの/最も不適切なものを1つ選ぶ」という形式ですので、丸暗記していなくても内容を理解さえしていれば回答できます。

「ひねり」を加えた選択肢はあまりありません。そこで問題集を解きながら、選択肢を読み込むことで学習の理解を含めることができるというメリットもありました。

たまに「適切なものはいくつあるか」という問題もありますので、そうした場合は消去法では答えられません。

全部で60問、制限時間は60分です。

理解さえしていれば即答できる問題もあるので、そうした問題を即答すれば、残り時間に余裕ができます。

(例えば「テキスト生成AIの出力は必ず正しい内容である」といった明らかに間違った選択肢があれば即答できる)

試験はネット完結、受験日は固定

試験はIBT形式のためインターネットで完結します。会場に行く必要がないため、時間がない方や私のように子育てで家を空けられない方でも受験しやすいです。これは非常にありがたい点です。

ただし、受験日は決まっており、今回は2月16日から2月17日の間に受験する必要がありました。

このような仕組みはメリットもあります。受験を申し込んだら逃げることができないためです。

随時受験の試験では、いつ受験しても良いため、つい先延ばしにしてしまいます。「完璧に勉強してから受験日を決めよう」と考えがちです。
ですが、受験日が決まっていると、その日までに間に合わせるように勉強を仕上げなければならないという期限があるため、良い意味でのプレッシャーがかかります。

合格点は不明。合格率は7割以上とのデータ

合格点は公開されていないようです。「2023年 第1回 生成AIパスポート試験」の受験者数は1,031名、そのうち合格者数は760名で、合格率は73.71%だったとのことです。

第4章 テキストや問題集

この試験の教材は、大きく分けて2種類あります。

1つは「生成AIパスポート テキスト&問題」です。こちらはテキストと問題集を兼ねた教材です。
最後の章に、テスト本番と同じ形式の問題が60問収録されています。
問題の再現度は高く、テスト本番でも、かなり似た問題が出題されました。

ただし、テキスト部分は内容がコンパクトにまとめられており解説が少なめなので、「理解する」という目的では初学者には難しいかもしれません。

もう1つは「生成AIパスポート公式テキスト」です。こちらは問題集は付属していませんが、各項目を詳細に解説したテキスト型の教材です。

いずれの教材を選択したとしても、機械学習やディープラーニングについて1ミリも学んだことがない人にとっては、テキストを読むだけでは理解が難しい部分が多いでしょう

特に技術的な説明、ディープラーニングや、GPT(言語モデル)の成り立ちや仕組みなどについては、私はYouTubeの動画をいろいろ見て回り、全体的な理解を深めるようにしました。

第5章 YouTubeのフル活用と、おすすめのチャンネル

学習方法としては、教材のテキストを読みながら、YouTubeで関連する解説動画を視聴し、重要ポイントの理解を深めていきました。
動画視聴はスキマ時間を利用して家事や育児の合間に行いました。

その上で、問題集を繰り返し解き、答え合わせをしながら自己採点を行い、理解不足な点についてはChatGPTに質問を投げかけてフォローを行いました。

参考動画を選んだポイントについて述べながら、おすすめのチャンネルを紹介します。

各チャンネルごとに代表的に1つ動画を貼り付けていますが、チャンネル内には他にも生成AIパスポートの勉強に役立つ動画が多数あります。ぜひチャンネル内の動画を辿ってみてください。

①シラバスに準拠した動画

まず、試験のシラバスに準拠して解説されている動画です。初心者にとっては、シラバスやテキストだけでは、「何に重点を置いて勉強すべきか」がわからないため、このような動画がありがたいと感じます。

(例)
生成AIパスポート対策講座- ITエンジニア_ノイ様 
生成AIパスポートについて50分以上も解説されている動画。全体の要所を網羅されていて、一気に全体像を知るために大変有益な動画です。チャンネルには第1章・2章の技術的な側面を掘り下げて解説された動画もあり、それも有益。


②1つの用語を掘り下げた動画

上記の①を見た後でもわからない用語や概念があれば、それ単体を解説している参考情報(動画や記事など)を探して、掘り下げていきます。色々な人による、さまざまな角度からの説明を見ることで、多角的に理解を深めていきます。

「ChatGPTの仕組みと課題について解説!」 - 技術ブログ「AGI Robots」

ChatGPTが「サービス」としてなぜこれほど受け入れられるクオリティになったか、RHEFにより改善された仕組みから紐解いている。また今後いかに改善されていくかを期待する理由が説明されている。チャンネルにはその他にも人工知能やロボットについて技術的に掘り下げた動画が多数。

【深層学習】GPT-2 - 大規模言語モデルの可能性を見せ、社会もざわつかせたモデルの仕組み - データサイエンスVTuberアイシア=ソリッド

VTuberによるホワイトボードを用いた講義形式。ある技術について、これ以前にあった課題や背景などを取り上げながら、それを解決する技術が登場した流れや、業界へ与えたインパクトを説明し、その上で数学的な解説に入るという流れ。数学的な解説はほとんど分からないとしても、その前談までを聞くだけでも理解が深まる作りになっています。


③技術が「何に使われているのか」を解説された動画

例えば、「BARTという技術はGoogle検索エンジンに導入されている」といった具体的な情報を解説している動画です。技術と世の中との接点を具体的にイメージできる情報が解説されています。

(例)
【6分で分かる】BERT!Googleが人間の意志を理解する! - スタビジ


④技術が「どのような流れ・背景で発展したか」を解説された動画

例えば、「GPT-1からGPT-4までの流れ」といった、一連の技術が開発、発展していくまでのストーリーが解説されている動画です。

(例)
「【ゼロからわかる最新生成AIの歴史】」 - データサイエンス研究所
講義形式で8回に渡り、機械学習、ディープラーニング、生成AIに至るまで技術的な背景や成り立ちを順序立てて解説してくれています。

【11分で分かる】最近話題のGPTシリーズの進化の軌跡と違い!」 - スタビジ

GPT-1からGPT-4まで、どのように発展を遂げてきたのか、どう違うのかを時系列に解説されています。チャンネルにはデータサイエンスや機械学習について多数解説動画があります。

第6章 ChatGPTをフル活用。役に立ったプロンプトとGPTs

その上で、ChatGPTを学習サポートとしてフル活用しました。例えば、テキストの理解が曖昧な箇所が出てきたら、ChatGPTに「ここは何が言いたいのかわからない。もっと易しく説明して」と投げかけることで、きめ細かなフォローをしてもらえました。

役に立ったプロンプト

[ChatGPTへの質問]
学生時代、「こんな質問したら先生に悪いし、授業妨害になるから質問できない」と感じてた質問が、AI相手ならいくらでもできるのが良いですね。

・「つまりどういうこと?」
・「その技術は世の中で何に使われてるの?」
・「具体的なサービスは何?」
・「ビジネス的な狙いは何なの?」
・「何のためにあるの?」
・「難しいので小中学生にわかる説明をして」
・「余計わかりにくくなったので⚪︎⚪︎に例えてみて」
・「⚪︎⚪︎って認識であってる?」
・「AとBの違いがわからない」
・「重要なことを1つだけに絞るなら何?」
・「Webで検索して調べて」

こうしたおバカな質問でもAIならいくらでも答えてくれるから、独学には非常に助かりますね。

役に立ったGPTs

VoxScript
YouTube動画を要約、翻訳、質疑応答。
参考動画を貼り付けて質問できる。
WebPilot
WebサイトのURLを貼り付けて要約、翻訳、質疑応答。

第7章 「Excelでわかるディープラーニング超入門」

しかし、動画とChatGPTだけではイマイチ実感できない方もいるかもしれません。手を動かしてみないと実感できないタイプの方には、少し遠回りになりますが、次のような方法もおすすめです。

私の場合、ChatGPTが登場する数年前から、ディープラーニングに興味を持ち、素人ながら少し学んでいました。

例えば、「Excelでわかるディープラーニング超入門」という書籍を読んで、シート上でニューラルネットワークを模倣したモデルを動かしてみたり、具体的に実感できる形で学習していました。

本来であれば、Pythonを用いて実装してみるのが適切でしょうが、私自身がPythonの環境に慣れ親しんでいないため、一般ビジネスパーソンにもわかりやすいExcelというツールを使用している書籍を参考にしました。

完全に再現できていなくても、「人工ニューロン」というものがどのような仕組みなのか、なんとなく実感できました。それがその後の理解につながりました。

最後に(まとめ)

「数式が不要」とはいえ、生成AIパスポートは、決して簡単な試験ではありませんでした。

トレンドをけん引しているChatGPTをはじめとする現在の生成AIがどのような技術的な背景で発展してきたのかを改めて知るためのきっかけになりました。

その過程で、素晴らしいYouTubeチャンネルにも数多く出会い、勉強を助けられました。

また、ChatGPTをフル活用することで効果的に自己学習する方法を試すことができたのも有益な体験でした。


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