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生きのびるために ノラ・トゥーミー

2017年アイルランド・カナダ・ルクセンブルク合作映画。タリバン政権下のアフガニスタンが舞台。主人公のパヴァーナは両親と姉と幼き弟と暮らしていた。そんなある日学校の教師をしていた父親がタリバン政権を侮辱したという冤罪で逮捕され刑務所に送られる。ストーリーはその父親を連れ戻すために奮闘する娘であるパヴァーナを中心に描かれる。アフガニスタンでは女性だけでの外出は禁じられ、取り残された家族は仕事や食料を買うことすらもできず窮地に立たさた。そこでパヴァーナへは髪を切り男装し男として街で働き家族を支える。情勢が不安定の中、最終的にパヴァーナは刑務所から父を連れ戻す。以上が概要で私の感想は下記の通りです。

私はアフガニスタンといえば医師の中村哲さんがが長年にわたって医療やインフラ工事を支援し尽力していが、2019年に銃撃され死亡したイメージが強い。彼の著書やテレビの特集などで映像を見ていたので彼の死を知りとても落胆した。アフガニスタンでタリバン組織ができるきっかけは冷戦下1979年に社会主義のソ連にアフガニスタンが実権を握られる所まで遡る。ソ連がイスラム教徒の弾圧を始めそれに対抗するためイスラム原理主義のムジャヒディーンと呼ばれる人々が蜂起しその後タリバンという組織を作る。冷戦後ソ連が撤退し、2001年9月11日の同時多発テロをきっかけにアメリカ軍は、アフガニスタンに対して戦争を開始しそれが20年間続く。その間はアメリカ軍がタリバンを抑え民主的なアフガニスタン政府を助けていた。しかしアメリカ軍の撤退を機にタリバンが20年ぶりに国家の実権を握り、そして今に至る。今日ニュースで放映される映像は混沌を極める。劇中ではアフガニスタン戦争前のきな臭ささも影響しているのだろう、どこか余裕のない張り詰めた緊張感と憂鬱感が感じられた。その中での生活は男女差別が甚だしく女性だけの外出が禁じられている。ただ男性がみんな女性に厳しいという訳では無く中には心優しい人間もいた。父親が刑務所に送られたパヴァーナ達は買い物や仕事が困難となり辛い生活を強いる事になる。そんな中、女性であるパヴァーナが髪を切り男として働きに行くシーンは女性の静かで偉大な逞しさを感じた。最終的に父親を連れ戻し彼女の信念の強さに尊敬の念をを抱いた。映画を見終わった後、私は結局戦争に巻き込まれるのは無実の一般人だというのを改めて考えさせられた。

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