そういうのいいから

月火木金の夜のお楽しみ、Mリーグ。何だかんだと言いながらも結構見ている。映像を見ながらやいやい言うのはエンターテイメントを楽しむ作法みたいなものなので、これはこれでいいのだろうと思っている。

昨日の試合には、冒頭から贔屓のパイレーツの朝倉の髪形にやいやい言った。個人的には似合わないとは思うのだけれど、本人がトキだのアミバだのとネタに走っているのかなと思わせるツイートをしているから、周りもそれに乗っかってやるのが作法と言うべきだろう。

もちろん、真剣勝負を謳う場なのだから、まず対局ありきであって、こういうネタに走って結果が出ないと叩かれるのも普通のことだ。朝倉という男の人となりを僕はそこまで知っているわけではないのだが、色物路線は合わないのではないかという印象だけはずっと持っている。

というか、立ち位置が良く分からない。

ストイック路線なのかと思いきや、こういうちょっと痛いネタに走ったりもする。なぜ痛いかというと突き抜けていないから。覚悟が無いのだ。ストイシズムも色物も中途半端で、陰キャが無理してはしゃいでいるような、そんな感じを受ける。

だから、やらかすと収拾がつかなくなる。

髪形をネタにしてきたのだから、やらかしてしまったのなら始末は頭を丸めるのが色物路線のお約束だと思うのだけど。

「大変申し訳ありませんでしたー!」と丸坊主にして登場して、「かみさんにいいヘアワックス買ってもらったんですけど、使える頭じゃなくなったんで、欲しい方いたらサイン入りで差し上げます。薄毛と引きの弱さは伝染らないと思いますから」

くらいのことは思い描いてやってるのかと思いきや、そっちには行かないで、腹でも切りかねないようなツイートをする。色物路線にも覚悟は要るんだぞ。

言っておくが、誤ツモなんてのは起きる。みっともないことではあるのだけど、起きないなんてことはない。チョンボだって少牌だって起きる。

鍛錬に鍛錬を重ねて、それでも起きるのがヒューマンエラーだ。(逆に言えばだからこそ鍛錬はしなければいけない。鍛錬しない人間が起こすヒューマンエラーは見るに堪えない放送事故であってエンタメにはなり得ない)

もちろん僕は怒る。贔屓のチームの選手が、0-3で負けている状況でバックパスをミスって相手FWにプレゼントパスして失点なんてしようものなら、その時点で画面を閉じる。(昔の柏レイソルにはわりとあった)

でもそれでやらかした選手が引退しかねないようなことを言ったら、いやお前それは違うだろうと言う。

そんなの責任の取り方じゃないじゃん。プレイヤーが本番で犯した失敗は本番で取り返すしかない。麻雀打ちがチョンボしたらそれは卓上で取り返していくしかない。

朝倉の醸し出す悲愴感の正体は何なのだろう。今まで僕はその正体を「ネット麻雀によって最初に世に出たプレイヤーとして、その名を汚さないように」みたいな使命感なのかなと思っていた。だとしたら、今回の汚名もプレイヤー人生を賭けて取り戻していくしかないだろう。どれだけ屈辱を味わっても、石にかじりついてでも一流のプロとして認めさせる。

朝倉が使っていた「百折不撓」とはそういう言葉ではないのかな。朝倉お前まだ3回くらいしか折れてないだろ。

でもあれだね、「失敗したら責任を取って辞めます」みたいなのってすごく日本的というか、それこそ大昔から行われてきたことではあるんだけど、それは問題を何一つ解決しないというのが知られてきた今日でも、まだそういうこと言う人がいるんだよね。

「加茂でW杯に行けなかったら私が会長を辞めます」

と言ってむちゃくちゃ叩かれたサッカー協会のお偉いさんの話だって、かれこれもう20年以上前のことだと思うんだけど、そのころまだ幼児だった世代の朝倉が、こういうこと言い出すのってわりと切ない。

そういうのいいから、本当に。

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