ブルーアワーに思い出すことは
あれから東京に行くのは何度目になるだろう。もうはっきりとは覚えていないけど、飛行機で行くのはたぶん3回目か4回目くらいのはず。
普段は自転車か原付か林くんの車でしか移動しないから最寄りのバス停の時刻表がまったく頭に入っていない。空港に向かう電車と二駅先で乗るバスの乗り継ぎだけを調べて最寄りのバス停に向かった。9時台という中途半端な時間には数本しかバスは来ないだろうと時刻表を見る前から諦めて、歩みの向きをバス停から駅の方向へ、右に90°ほど翻した。
鈍い青色のスーツケースを引きずってよく晴れた国道を歩く。1週間用のかなりの大きさのものだ。東京を出るときに母さんに買ってもらった黒い2, 3日用の小振りのスーツケースはファスナーが降りなくなってしまったので、もう閉店してしまったイオンで適当にこしらえたやたら大柄なこれを久しぶりに押入れから引っ張り出したわけだ。
今回は3泊するので着替えとタオルが大目に入っている。むしろ他には大して物が入っていなくて中身には余裕があるくせにやたらと重い。仕事用のパソコン、お前のせいだ。
駅まで歩く道中に何年か前に会って少し話してこないだ久方ぶりに見かけた人と町ですれ違った。すれ違うときに一瞬目が合ったような気がしたけど、きっと気付いているのはこちらだけだと決め込んですぐに俯いてしまった。何度も初めまして、と言われることが多くてそんなことをしてしまうことが多くなった。わたしをわたしであると認知してくれる人はどれくらいいるのだろうか。
買ったばかりのCDを取り込んだiPodを聴き耽っていたことも、そうしてしまった理由の大部分を占める。今更買ったPetalのMagic Goneは本当に素晴らしい。
今日は時間に追われていたせいで、途中でパン屋航路に立ち寄って買ったパンを電車とバスの中でゆっくり貪るということは叶わなかった。代わりに、駅に新しく出来たコンビニでサンドイッチとおにぎりをひとつずつ。CAFEE LATTE ダブルクリーミーと洒落た印字のされた甘い甘い飲み物は今日もとても美味しい。見かける度に美味しそうだなあと思って見つめている山わさびとローストビーフのサンドイッチは今日も見つめるだけだった。代わりにチキンベーコンのもの。
大事な友達の結婚式だ。心から祝福しよう。
ポストロックとマスロックを教えてくれて、いろんなところに連れ出してくれた大切な友達。
わたしは大勢の前で挙式することは正直なところしたくないし、できることならばひっそりとしたい。二次会だって用意せずに大事な友達を幾人か呼び出して何もないようにお酒を飲み交わして、実は結婚したんだ、なんて報告したい。それで喜んでくれて楽しくなってそのまま川辺で飲み明かして夜半を過ぎる。そんなのがいい。それは自身の場合の話であって友達の結婚式に参列することは好きだ、たまらなく幸福感が満ちている。おめでとう。おめでとう。心からおめでとうと祝います。優しさと確かな行動力とそれを裏付ける実力が彼にはある。あたたかくて誠実な式になるんだろうなと楽しみにしている。幸せな表情が安らかに空を引き込んでいくのを見られるのを楽しみにしている。
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