団地の踊り場

昼前に目を覚ましていつも通り週末が始まる。寝ても寝ても眠たいのはいつになったら直るのだろうかと不安になりながら体を起こした。目の前の障子に映る光と影がとてもきれいな朝だった。

そういえば、母親と実家の近くにある神社に行く夢を見た。ないはずの千本鳥居を屈みながらくぐって、階段の脇の広場で遊ぶ子供たちを眺めていた。その神社のことは〇〇神社という名称ではなく、ごうしゃと呼んでいたが、漢字では郷社と書くこともその意味も今調べるまで知らなかった。最近時折何かをくぐり抜ける夢を見る。

眠たい目を擦りながら自転車に乗って、数年前に高円寺で買った古い腕時計を直すために商店街の時計屋さんへ向かった。2年ほど前に止まってしまって、別の時計屋さんで電池交換をしてもらったが、数週間で再び止まってしまったままだった。
店主のおじさんに診てもらうと、この時計は水晶に電圧をかけて動かす現行のクォーツと呼ばれる時計の前の動力を用いる時計らしく、使用する電池が今の時計とは異なるそうだ。そしてその電池は廃番になってしまったそうで、製造再開を待つしか出来ることはないのだそうだ。それまでこの時計を再び動かすことができないのは残念だったが、一目でそれが分かる時計屋さんと出会えた事は良かった。何年先になるか、再開することはないかもしれないけれど、いつの日かを気長に待とう。

それから駅に向かっている途中、のんちゃんが東風を営業していたので、コーヒーを淹れてもらってホワイトガトーショコラを買った。話していると、ヒロさんが通りかかって久しぶりだねと声をかけてくれた。お会いするのは数年ぶりだったけど、覚えていてくれて、元気してるかなと時折思い出してたよ、と言ってくれて嬉しく思った。のんちゃんもそうだけれど、頻繁に会うわけではなくても気にかけていて貰えるだけでとても嬉しい。

山陽本線に乗って東へ1時間、岡山に着いた。東口を出ると今でも前の会社のことを思い出してウッとなる。息を止めるようにして駅前を抜けて、大通りを曲がった筋の小さい喫茶店に入った。白髪を結ったおじさんが元気な声でいらっしゃい、どこから来たの?と声をかけてくれて口元が緩んだ。尾道です、と答えると、あらあ、随分近いね!とまた元気な声が返ってきた。ワッフルを焼いてもらって、熱いコーヒーと一緒に食べながら、尾道の話をした。休業してしまった蕎麦屋さんの話や近所のワッフル屋さんの話、海岸通りの海鮮が美味しいお店の話など、美味しい話ばかりした。おじさんは何度も尾道に遊びに来ていて、ほとんどのお店を知っていて、アンテナを高く張っている人だった。ライブを観に来ましたと告げると、KOTORIってバンド知ってる?こないだ店に来たよと聞かれて、数日前にMVが公開された曲を聴いてオオォ、、、となってばかりだったので、少し笑ってしまった。

まだ少し時間があったので、日常では行くことのない百貨店に入った。ネクタイに1万円代後半の値が付いていることを初めて知った。そういうものなのかと、知らない世界を覗き込んだような気持ちになった。ポロベアかわいいなぁと後ろ髪を引かれつつも逃げるように退店した。

Maelstromのライブがピカイチで良くて昂ってしまって、かげおくりのゆうきくんに会ったら彼も高揚したのでこちらも嬉しくなって終電を逃した。なんか見たことあるセンター分けいるなあと思ったんだよー!と言われ、斜め分けですと思いながらトレードマーク的な髪を維持しててよかったなと思った。
終演が近づいて、泊まっていけよー!と言ってくれた度々ライブ会場で会う岡山のバグみたいな人が去っていったので、近くのネットカフェに泊まった。1泊1000円という価格破壊を起こしていた。朝帰ってリンゴジュースを飲んだら喘息みたいな症状が出たので全部流して寝た。

10月の終わりころにシンガポールに行ってからずっと胃もたれみたいなのが続いているし相変わらず眠りが浅くて常にもやもやするけど、何とかやれている日々です。
外に出て人に会うと嬉しくなることがあるんだ。それでも出不精な性質は容易に治るわけではないけれど。


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