泥になって過ごす

私には人間の形を保つのが辛くなることがよくある。

この場合の『人間の形を保つ』というのは、簡単に言うと生活をすることを指します。

朝に起きて、歯を磨いて、顔を洗って、化粧をしたり着替えたりして……という外に出る準備をする、夜にはお風呂に入ったりご飯の準備をすることなど。他人と円滑にコミュニケーションと取るのも含まれる。

健康で元気な人にとっては当たり前のことだと思います。

ですが現在うつを患っている私にはそれらの行動一つ一つにとてつもないリソースを割く必要があり、常に生活するための元気が足りない。

なので充電のために所謂『何もしないをする』必要がある、それが私にとっての泥になるということです。

泥になるというのは感情や感覚などの内面の話でもあり、生活をしないという物理の話でもあります。

まず沢山寝る、飽きるくらいにもう寝られるだけ限界まで寝る。
起きてもしばらくは何もしません、ひたすらゴロゴロします。暇だな〜とか思えるくらいに意識がハッキリするまで。

そしてスマホを眺めます。

大抵はTwitterを見ていて、呟ける時もあれば何も出てこない日もあります。LINEは見ません、返せないし。

お腹が空いたら何か食べます。何を食べるか考えるのが億劫なので、大抵事前に用意しているインスタント食品か備蓄してるお菓子を適当に。

そうしてスマホを眺めている間はずっと横になっています。座ったり立ったりするのは人間の形が保たれていないと難しいことです、泥になっている間の私は身体感覚が液体に近いため寝転がることしかできません。

泥として過ごしている時はできるだけ何も考えないし決断しません、ストレスを極力減らす為です。なのでひたすらに何もしません、Twitterの他に何かしたとしてもソシャゲのデイリーをこなすくらい。

もちろんお風呂にも入りません、しんどい事は全部避けます。
2〜3日入らなくても死なないし、泥の間は外には絶対出ない(というか出られない)から気にしない。

ただし歯は定期的に磨きます、子供の頃から虫歯になりやすい体質で歯医者さんに通う大変さは身に染みており痛いのは嫌いなので。

体に痛みがあると面倒です。そこに意識が持ってかれて気になるしボーッとするのにも苦労する。

時々音楽を流したりもします。私はプレイリストに感覚の名前を付けているので、その時の気分に合わせています。

音楽を聴く為に聴く事もあれば、とりあえず不快じゃない音で耳を塞ぐために聴く時もあります。

そうやって生産性のあることは何もせず、液体に近い状態で横になり続けることで自分を癒します。

好きなだけ寝て、ひたすらにボーッとして、難しいことは考えずに決断も行動もしない。

そういう時間が私には必要不可欠なのです。

泥になっている間は誰の役にも立っていないし、自分のためになることすら碌にできません、しません。

まあセルフネグレクトだとは思いますが、でもそれによって精神がケアされる自覚もあるのでしょうがない。

そうやって脳も体も休めていると、だんだんと色々な事を考えられるようになってきます。

食べたいものが出てきたり、流石にそろそろお風呂に入りたいなと思ったり。特に、何気なく人と話せるようになれば大分回復してる証拠です。

液体から固体になれるように、人間としての形を保てるように気持ちも体も整える。

そう表現すると、まるで幼虫が蛹になって羽化する過程のようにも思えますね知らんけど。

実際は小汚くて死んだ目をした女がお風呂に入れて、ご飯を座って食べられるようになって、頑張れば外にも出られる状態になるというだけですね。

でも、そんな当たり前の生活をすることが私には難しい。

きっとこの泥になる時間が無くなったら私の精神は簡単に限界を迎える。

何にも迫られず、何にも急かされず、何にも縛られない、やらなきゃいけないことなど何も無いから何も考えなくて良いししなくて良い。
その状態に自分を沈めることでしか回復しないものがあるのです。

自分の癒し方というのは人それぞれだと思いますが、私の場合はこうだよという話でした。

いつかは必死で整えた泥じゃなくなって、何の苦労も絶望も感じずに朝起きて、9時〜17時まで働いて、自炊して、毎日お風呂に入って、夜には眠剤も安定剤も必要なくすんなりと寝られる『人間』になりたいです。でも今世は無理かな。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?