せいちゃんの不協和音

せいちゃんは1歳半まで言葉が出ていた。
バナナ、はな、アンパンマン。
ママとパパは言えなかったけど。
積み木を積み上げて出来たよと
笑顔を向けてくれる事もあった。

1歳半検診の直前、言葉が消えた。
急に全ての言葉が消えたというより
覚えていくのとまるで反対のように
一言ずつ減って行くような感じだった。

1歳半から2歳半までは
言葉でのやりとりは難しく
口から出るのは宇宙語のようなもの。
まるで聞いたことのない言語を
超スピードで聞いているような
そんな感じだった。

ジャーゴンというのよと
子育て支援センターに来る
言語聴覚士の先生が教えてくれた。

自閉症の診断がでて訓練を始めるまでは
頭から倒れたりかみついたり
言葉以外でのコミュニケーションが
ほとんどだった。

2歳半の頃、嫌な事があると
んー (高) んー(低) んー (高) んー(低)
と歌うように表出していた。

救急車のサイレンみたいな感じ。

私はそれを 
『せいちゃんの不協和音 』 と
呼んでいた。

殴り書きの日記を読み返すまで
完全に忘れていたけれど。

あの頃の私は受け止めていたかな。

せいちゃんらしさを楽しめていたかな。

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