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路半ば、先は見えず

雪が降ると、明るくなる。

電灯が雪で散乱して、道に雪の影ができる。札幌の冬としては有り触れた景色に初めて胸を打たれたのは、もう13年前のことだ。

色々すったもんだはあったけれど、それなりの勢いと速度で駆け抜けてきた。一つ一つのプロセスが意外に無駄になっていないのは大きく湾曲しながら正弦波のような道筋が一つ見える生き方をしてきたからだろうと思う。

研究者になりたかった頃も、僕は臨床医になることを想定していた。医師として患者の前に立つ以上、求められるのはプロとしての対応と成果だ。研究者としての生き方が本筋で臨床がサブだとか患者にとっては関係無い。ましてや患者は金を払って診療を受けに来ているのだ。一定の水準以上の医療を期待するのはごく自然な事だと思う。

そう思った時、医学部にいた6年間は、本当に短いなと感じた。6年したら臨床に立つ。臨床に立った時点で、基礎から臨床に至るまで、少なくとも知識としては最高水準に立ってしていなければならない。モラトリアムは僅かな時間しかない。

そんな強迫めいた意識を纏って駆け抜けた結果、今の僕の姿がある。13年前、医学部に進んだばかりの僕が想定していた自分の姿には到底及ばず、修練に明け暮れる日々ではあるが、少なくとも間違っている感触はない。

これが吹雪の道であっても、僕はきっと進み続ける。

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