プロダクト・サービス開発で陥りがちな注意点と気をつけるべき3つのポイント

過去にアプリ開発に2度挑戦して大失敗を喫した経験から、プロダクトの開発で気をつけなければいけないポイントをまとめました

1.経験・スキルよりも、その事業に対して「熱烈な当事者意識」をもった人がプロダクトオーナーを務めること

社内新規事業でありがちなのは、「これやってみて」という形でボールが渡されて事業検証がはじまるケース。

それが0⇒1まで終わっているケースであれば、あとは推進するだけなので実行力、戦略策定力、マネジメント力の優劣によって事業の成否が決まってきますが、こと0から1に推進する初期段階においては、プロダクトオーナーは「その事業をなんとしてでも成功させたい、成功させねば」という熱烈な当事者意識、コミットメントをもった人が臨むことが絶対条件であるように思います。

そこで重要なことは、自らその事業の当事者として、プロダクトが解決するペインに対して深い共感、当事者意識を持っていること。そうでなければ、なぜそのプロダクトが価値を提供するユーザーが、その事業に感動するのか、Stickするのかということを、自らの肌感覚で理解できません。

KPI、数値ドリブン、市場の仮説といったマクロ的なアプローチから始まる事業がうまくいかないことが多いのは、この「圧倒的当事者意識・熱量の欠如」に帰着するのではないでしょうか。

おおよそうまくいった新規事業は3、4回のピボットを経て最終的に立ち上げ当初から全く別物のプロダクトに変容していくと言われますが、それもペイン・当事者の熱量という意味では軸を一貫し続けていることを忘れてはいけません。

手法論、ビジネスモデル論、マーケット・アプローチ、市場のモメンタム・・・こういった「外形的に成功要素が揃ったからアプローチする」マーケットイン的なやり方ではもはや通用せず(なぜなら、そのようなアプローチで表層的に得られるビジネスチャンスは大方すべての起業家、あるいは企業によって検証され尽くしているはずなので)、Web3などよほど市場の勃興期やタイムマシン経営的な”市場のひずみ”が存在しないところにおいては、このような外部からのアプローチは徒労に終わると考えます。

何よりも、3、4回ピボットすることを大前提とした事業開発において、自分が汗水垂らして作った事業がマーケットに受け入れられず撤退の憂き目にあうのは結構なメンタルダメージを生みます。そのような心的疲労が何度も蓄積すると、薄っぺらい動機では人は極限まで走り切ることは出来ず、いわゆる燃え尽き症候群的なものにかかってしまうことも多々あるでしょう。

「特定個人のユーザーのペインをなんとしても解消してあげたい」「俺・私がどうしても欲しい物作りたい!」という熱量がなければ、”ずらし”を続けて、正解にたどり着くまで自走する燃料を担保することが難しく、だからこそ、初期はスキル経験よりも圧倒的熱量が重要と思うわけです。

スキルや経験、データの不足は、事業メンバーやメンタリング人材の後方支援によっていかようにでも調達が可能です。しかし「熱量」だけは外部から調達ができない。だからこそ事業のコアリソースとして、代替不可能なオーナーシップをまずは充足させることこそ、新規事業の最重要要素になるのではないでしょうか。

2.作り出したら止められないからこそ、それは本当にその手段(アプリ・ウェブ問わず)でないと解決できないのか?と、徹底して問いぬくこと

果たして、あなたが今はじめようとしている事業は、本当にその手段でないと実現ができないのでしょうか?
例えば、もしUberEatsがないときに、UberEatsのコンセプトを検証するために、ゼロからあれだけリッチなネイティブアプリを作らなければUberEatsのコアバリューは検証できなかったのでしょうか?

事業の創造段階においては、徹底してギリギリまで紙と手作業(あるいは少しだけのプラスアルファの技術要素)によって、価値検証ができないのか?ということを徹底して問いぬくべきです。

プロダクトが少しでも開発に入ると、要件定義が完璧にされない限りエンジニアが走れず、その要件定義もユーザーのインサイト理解が不十分なままでは十分な精度を担保できません。にもかかわらず、一度走り出したプロジェクトは日増しにサンクコストが増えて辞めるにやめられない、止めない理由はいくらでも見えてきます。

一方で、プロダクトを作る前であれば、素早く仮説検証のフィードバックサイクルを回すことが出来ます。

例えば、プロダクトのコアバリューが本当に受け入れられるものなのか、モックアップを紙に起こして街に繰り出し、街頭インタビューでユーザーの声を100人集める、そういったことも1日か2日で出来てしまう作業です。 こういった簡単な検証を素早く回し、得られた声から次の仮説の着想を得て、精度を高めていくことが、その後の開発工程における無駄な機能の削減、精度の低い要件定義といった粗をできるだけ削ぐことに貢献してくれます。

加えて、そのコアバリューの提供が目的であって、その目的を実現するにたる手段が本当にそれ(アプリ・Web)でないといけないのか というのも問うべき内容です。

およそ多くの起業家が、それを作ること自体が目的化してしまうケースが散見されますが、本当に作りたいものはプロダクトではなくて、価値提供・問題解決のソリューションそのものです(客がほしいのは穴であってドリルではないという有名な話)

かつ、人類80億人もいれば、あなたが思いついたような案はすでに他の人類によって散々に思いつかれ、検証され、こすられ続けた事業案であることが大半なはずです。

今市場にそのようなプロダクトが見当たらないのであれば、その理由はおおよ3つしかなく、

・すでに検証されたが、そんなものにニーズはなかった
・すでに検証されてニーズがあったが、その表現方法は適合していなかった
・まだ検証されていない

おそらく、大半が前者2つに集約されているはずです。

だからこそ、市場を見て、似たようなものがないのであれば「黄色信号」と捉えて、より一層、インサイト調査、開発前の検証段階に熱量を注ぐべきでしょう。

走ったものは止められない。始めることは終えることよりも簡単だが、終えることには恐ろしいほどのエネルギーが必要となる。

ということを肝に命じて、事業開発にとりくむべきです。

3.最終的にどのようなビジネスモデルで、いくらの売上を目指すのか?出口を描かずはじまる事業に成功なし

そのプロダクトが提供するコアバリュー、ソリューションが定まるのであれば、必然的にその事業が狙えるマーケットサイズ、提供ビジネスモデル、予想売上が連関して求められます。

すなわち、コアバリューが刺さるペルソナ像がマーケットサイズになり、ソリューションが解決する付加価値が金銭対価(ARPU)となり、それをどのようなビジネスモデルで(BtoC・BtoB・BtoBtoC)、誰からお金をもらうのか が見えてきます。

これらを何も描くことなく、ただ自己満足の解決として事業をはじめても、それは芸術活動(対価の生まれない表現活動)の一貫にしかなり得ないことは深く注意するべきでしょう。

例えば、自分がめちゃくちゃ欲しいアプリ(例として、ダイエットの記録アプリだとする)があったとして、

・1であげた当事者意識があり(自分がダイエットに悩んでて深い当事者意識がある)

・2であげた仮説検証が実証されている(ダイエットに悩むユーザーみんながほしいと言ってくれる)

が担保されていたとしても、その事業に対して一体誰がいくら払ってくれて、ビジネスとしてどこまでグロースする腹積もりなのか。これがないままに走っても、ビジネスとして「ここまで行けば成功」がないからこそ、撤退戦のない泥沼に突入します。

ビジネスとして売上を立てるからこそ、KGIに紐づいてKPIが定義され、
KPIを実現できているかどうかをモニタリングすることで、その事業が当初狙った売上にいくのか という弾道予測が可能になります。

逆に言えば、ビジネスモデル不在、売上目標不在の事業(そんなものは事業とは呼びませんが)では、事業の価値を定性評価しかできず、KGI・KPIが定義不能で、事業としての成否が全く測れないという笑えない状況に陥ってしまうでしょう。

プロダクトとそれが提供するコアバリューが確たるものであるならば、その仮説が正しい延長線上には、正しい介在価値(マネタイズポイント、キャッシュポイント)が生まれてしかるべきです。

これを厳密に描きながら、

・当事者意識をもって、
・車輪の再発明をせずに、
・ユーザーが求めるものを最小スコープで実装し
・適切な指標で事業進捗を評価し、
・すばやいフィードバックサイクルを回す

という、綱渡りを”折れずに”やりきれたものだけが、(それでも3-4回の挫折の果に)成功するというのが、事業開発のリアルです。

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