レビューRadio現場vol.47『経営者が介護職に知って欲しいこと』feat.大平怜也さん(11分弱で読めます)
2022/12/03配信 12月3日は、吉田真一さんの誕生日おめでとうございます!
先週、コロナに感染してしまった吉田さん。症状は軽いとのことで、まずは一安心。
日本国内はサッカーW杯カタール大会で盛り上がっております!
ベスト16で対戦する(した)クロアチアがお気に入りチームの吉田さんと、引っ越しで忙しくて見られていない(はず)の森近さん。興味がない訳ではない!決して!
今回のゲストは、株式会社ケアクラフトマン代表の大平怜也(りょうや)さん(以下、大平さん)。
汐留のスタジオからではなく、鹿児島県の会社事務所(達者の家さん)からの放送参加でございます。
大平さんが介護業界に入ったきっかけについて。
大平さんは高校卒業後、介護とは全く無縁の専門学校=CGデザインの学校に進学され、その後福岡で1年間フリーターをされていたという。その際に居酒屋でバイト全員クビにされたアオリを喰らってしまい職を失う憂き目に。
そのタイミングでお父さまから、就職をせっつかれ、アイドルオーディションさながらに新設特養へ履歴書を出されていたという。「福岡から鹿児島へ帰れ」と。
根回しされてトントン拍子のお膳立てがあり、イヤイヤながら介護の仕事を始めたという大平さん。考えうる限り最低の介護職デビューであったとの寸評。
帰郷前に「半年で辞めて福岡に帰ってくるから!やってられるか!」と当時友人たちに宣言されたそうで。
そして働き始めには、介護に対して何のイメージすらも湧かない感じであったそうです。
大平さんが新設の特養へ就職された際、経験者は二人くらいで他全員未経験。2000年3月からのスタート。そこで彼女ができて、現在まで介護に携わっているという。
当時処遇改善もなかったから、手取り14万の世界。
21歳で就職して、34歳の時に起業された=13年のお勤め期間。
現場9年、施設ケアマネ4年のご経験ありという叩き上げ感が半端ない大平さん。
介護の仕事について、あれほど最悪のスタートだったのにもかかわらず、やってみたら案外ハマったとおっしゃる大平さん。介護の知識や技術を身につけることで、目の前の利用者さんの問題解決ってできるんだな、と分かり、そこから面白くなっていったとのこと。
それに加え、現場仕事の低賃金による将来への不安と、自分がやりたいことをやる!との思いが湧き上がり、起業に至ったという。
就職した年の2月、オープン当初は利用者さんがほとんどいなかったため、よその施設へ研修に行き、そこで、下痢便&出血してたお婆さんのオムツ交換に当たったことが、大平さんのファースト介護であった。臭いがキツくて退室からの、次の日遅刻してしまったという、しくじり体験。「何の洗礼だよソレ!?」状態であります。
そんなこんなで、他のスタッフから後ろ指をさされる事態に陥ってしまい、それがあまりに悔しかったという大平さん。
「足引っ張ってるって思われたくない」との思いがとても強かったとか。
当時といえば、研修に行く周りの施設が、拘束をバリバリしていた時代。出られないよう居室施錠・弄便しないよう鍵つきツナギ服など安易に活用。それが23年前の常識。
大平さんを起業に導いたきっかけとは?
曰く「勤務表みたら、不定休のシフト制。そして夜勤誰だろう?のチェック…というのを明くる月もその次の月も繰り返している。そしてある日「これいつまで続くんだろう?」と将来への不安が湧きおこったという。
大平さん自信が還暦になった時、手取り20万?まあまあキツいオッサンになってるだろう、と。
そう考えて大平さんは、もっと収入高い仕事はないか?と探したりもしていた。
さらに、施設ケアマネになってからというもの、現場を離れたこともあって「どう人を動かすか?」という課題と向き合い、試行錯誤されてきたという。
しかし、現場で指示される側は、ほとんど年上の逆転現象。当然のように現場職員とのぶつかり合いがあり、そしてみんなから無視されたりといった状況が立ちあがってくる。
そんな課題感から『人を伸ばす力』(*1)という本を読んだ大平さん。
そのココロは「あいつらを伸ばしてやろう!」と思ってのこと。
ところが、本に書いてあった内容は“内発的動機づけ”という考え方であり、他者を変えるのではなく、自分が変わらなきゃいけないということを唱えた本であった。
喜んでやってもらうための言葉がけが上手くいき始めると、大平さんは経営の方に興味を持ちだしたという。
そして、「田舎の社会福祉法人って、上から三番目くらいまで同じ苗字とかザラだから」、自分で起業してみたとのこと。
起業の強いきっかけは、業界の有名人である藤田英明氏の存在であった(大平さんは当時、氏との付き合いがあった)。藤田氏は当時、茶話本舗というデイサービスを400万円で作ったという。
それで早速、特養の事務(同級生)に「今辞めたら、退職金いくら?」と聞いてみたところ「400万です」って言われ、その週には「辞めます!」と言っていた大平さん。そのくらいの行き当たりばったり感であったとの振り返り。SNSでの発信や落ち着いた佇まいからは想像もできないくらいの思いきりの良さである。
大平さん、最初にデイサービスを立ち上げたのですが、実際には2000万かかったとか。「400万?無理無理」とのこと。
それからデイサービスの黒字化に1年半はかかったという。
1年経たないうちに訪看、居宅もつくってと、多角的にやってみたけど、当初全部門赤字!
赤字がひどくてキャッシュも回らなくなってきた。そこで経営改善計画書を作って、銀行から600万借りることができたという。それがなければ潰れていたという。
その他にも倒産の危機がいっぱいあったとのこと。
吉田さん曰く、現場の人に知っておいて欲しいこととしては、「結構簡単に会社って潰れるよ!」という話。
大平さんは、現場スタッフには言わないけれども、管理者レベルには「ちょっと現金が減りすぎてるからヤバい」といった話は今もされているとのこと。
「中小企業は綱渡りですよね」と実感を込めたお話しをされつつ、次の瞬間には「借りたらなぜか返さないといけないのが不思議ですよねぇ」とおっしゃる歴戦のツワモノ・大平さん。
大平さんが、声を大にして唯一言いたいことは、「売上あげて、利益上げなきゃ、潰れるってことだけは知っておいて欲しい」ということ。
ですよねぇ。
マーシャルの唱えた「資本主義のもとに行わないと福祉国家とはいわない」に通じると思いました(社会福祉士勉強中)。
誰が言ったか知らないが、「利益は空気と一緒だと。空気を吸うために生きてる人間は居ないけど、無いと死ぬんだよ」「売上を上げてくれというのは、溺れているときに、息したいというのと同じだよ」と。
蓋し名言である。放送後から、でぃぐにてぃの訓辞に使われることが決定いたしました。
売上を上げるために介護職がすることとは、「良い介護をして、それを発信することである」と森近さんからの質問に即答された大平さん。
発信って広告を打つってことなんだ!
大平さんの経営する「達者の家」での発信について、SNSでされているのが、FacebookにInstagramにTikTok。特にTikTokは萬アカだという。
TikTokと介護事業所って相性抜群らしい。
口コミも大事で、事例検討会を開くとか。正統派ストロングスタイルの宣伝手法も有り寄りの有り。
SNSでの発信は、職員の中で実際にやっている人に頼んだという大平さん。
発信がその人だのみなのでリスクはありますけどね、と危機管理にも余念がない。
大平さん自身、ツイアカ3つめか4つめくらいなのだという。Twitterが始まったくらい(2007〜2008年頃)から呟かれているとのことで、その頃に、今もつながっている方たちと知り合えたのだそうです。
採用につながればいいと思って始めたTwitter。最初はフォロワー増をメインに考えられていたのだとか。
140文字では伝わりにくく、食い違いが食い違いを呼ぶので、Twitterはめんどくさいと感じている大平さん。
実は大平さん、YouTubeもされていて、これは完全に仕事。
違う事業所が同じコンセプトでデイを開いて、売り上げなどを競い合うという企画「3匹の子豚プロジェクト」!(*2)。
40歳の時に経営学の大学院に進学した大平さん。
淡々と向上心がガッツリある感じ、との評に、「どうもそうらしい」とご本人談。
「わかんないことをググらない人の気持ちが分からない」知らないまま放っておくのが不思議だという。天性の好奇心と探究心をお持ちである。
介護事業所でMBA(経営学修士)取得まで勉強している人は少ない。でもきっと必須なんだろうとのお話しが出ていました。
吉田さんは元々マーケターとのこと。だから採用大好きである!らしいです。
大平さんが大学院まで行ったのは、「マジで会社潰れるな」という危機感が理由だそうで。
会社はトップの能力以上には大きくならないとの信念が強かったので、自分がレベルを上げないと会社は大きくなれないと発奮。
読書だけでなく体系的に学ぶとなると、やはり学校に行こう!となりますとおっしゃっていました。
経営者が困ったときや潰れそうなとき、最初に駆け込むのは(白装束で)銀行。二手目が大学院。
大学院に行って「悩み方が分かるようになった」とのこと。
現場職員に、これはすごく勉強になるから伝えておきたいことは「財務諸表を読めるようになる」ことですって!。難しそうで簡単だと。
お金に“ただことじゃないくらい”執着のある吉田さん。一族の口癖が「寝てても一文の得にもならない」。
ブラック家庭だったと一族を振り返る吉田さん。ユダヤの金持ち的発想ではないかと思うのです。
財務諸表が読めるようになると、利用者減っても人増やせとか給料上げろ!がいかにおかしいこと言ってるか理解できるようになると大平さんは力説する。
職員に請われて、経営状況を毎月伝えるようにしたという社長業の吉田さん。
良い社員さんと良いシャチョさん。
家計簿と同じで、財布の中身を知る心意気って生活のために重要。
貸借対照表くらいまで解釈できると素晴らしいけどねぇ、とのこと。勉強しよう。
職員が経営のこと勉強しろよ!ではなくて、経営者、ちゃんと情報与えましょうよ!と声を大にする大平さん。
のび太のママみたく「今月も赤字だわ〜」だけではいけないってことですね!
大平さんの事業所では、人時売上高を公開し、全国平均を出して管理者教育に活用されているという。
自分の時給を知るって大切だし、意識づけが必要。
今までマネージャーレベルまでしか伝えていなかったお金のことを、現場スタッフにも伝えていった方がいいという結論に至った経営陣のお二人。
ここで【個人的業務連絡】>(人時売上高)(人時生産性)←調べること。
オンエア中、コロナに罹ってる間に期が変わっていることに気づいた吉田さん。
物事をシンプルに考えるためのツールが数字である、との言葉に勇気づけられます。
資格取得や、仕事の仕方に根拠が得られるから、やはり現場レベルで学ぶべきですね。
経営の数字に関していえば、介護福祉業界はサービス業に比べたら20〜30年レベルで遅れをとっていると個人的には思う次第です。
「大平さんの平熱感が素晴らしい」と吉田さん。
お金のことを知らずして、ソーシャルアクション的に「総合事業NO!」とか「税金上げるな!」「介護保険料据え置き!」「俺の給料上げろ!」「子供には金渡せ!」などと言って怒るだけなのは、お門違いではないか?と吉田さんは続ける。
現場のみんなも財務諸表を読めるようになって、「批判より提案を」!
【放送終了後のちょっとしたエピソード】
※お話を伺っていて文字起こしをしておる私ですが、知識不足から間違ったツイートをしたところ、大平さんから心の広いご返信をいただいたので、反省と感謝の意を込めてその時のやりとりを記載いたします。
【私の引用リツイート】
お話しの中に出てきた“人事生産性”について、
「自分の価値を時給に換算したらいくらになるか?」を把握する概念がある事は教わっていたが、それを指す言葉があるのをこの場で知ることができた。
ここでは人事を“にんじ”と読ませる。何故だろうか?
そこには潜在的選別の意識が見え隠れしている。「日本人なら己の干支を即答できる」に類似した表に出ない意図。
本を読んでの勉強だけでは不十分であり、人の話を聴くという行為もしなければならないとの訓示ではなかろうか?
「こんなにややこしいから日本語も経営側もはク◯」から「こういう伏線が張られていたのか!」へのパラダイムシフトが現場側に求められていると感じる。
【大平さんの返信】
人事(じんじ)ではなくて、人時(にんじ)生産性が正しいです!
【注釈】
*1 エドワード・L・デシ,リチャード・フラスト,桜井茂男訳『人を伸ばす力ーー内発と自律のすすめ』1999年(原著は1996年発行)
>著者のデシは,動機づけ理論の一つである自己決定理論の提唱者。
「外から与えられる報酬が,内発的なモチベーションを低下させる」というアンダーマイニング効果は、“飴と鞭”の対局に位置する概念として当初批判を受けた。
この理論を実証するための“ソマ・パズル実験”がとても面白い。
参考;https://www.earthship-c.com/psychology/edward-l-deci/
*2 介護経営チャンネル−三匹の子豚プロジェクト;https://youtube.com/@user-rg1qf8ne1s
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?