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《キリストの埋葬》

「好きな画家は?」と聞かれれば食い気味に「カラヴァッジョ」だと答えることができる。ただ、「何の絵が好きなの?」と聞かれると困ってしまう。ただ一枚に絞ることができないし、その絵がどう好きなのか、語彙力のない私は表現することができない。

こうなることなら、大学時代、ゼミでの絵に関する討論などをもっと真面目に受けておくべきだったと少し後悔する。

カラヴァッジョ全体を見れば好きな部分は明確なのに。強烈な明暗表現と、臨場感。それらを殺さぬ静物における繊細さ。一般人かのように表現される聖人たち。それを生み出す画家の人生。これに尽きる。どれかが欠けてもいけない。全て揃うからこそ好き。

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好きな絵を一枚選ぶことはできないが、私が待ち焦がれている2021年3月に延期された「カラヴァッジョ展」に、30年ぶりに来日する≪キリストの埋葬≫を見ていく。私が生まれるより前に一度日本に来ているなんて。

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カラヴァッジョ≪キリストの埋葬≫1602〜1604、ヴァチカン絵画館

気になるポイントはいくつかかある。

突出表現による立体感
①ニコデモの肘
②全員が乗ってる墓石の角
③キリストの腰でたわむ麻布。
手前に垂れている。
これらによって奥行きや、立体感が生まれる。
キリストの上半身を抱えているのは聖ヨハネ、キリストの下半身を抱きかかえているのがニコデモ。

視点誘導
視点は低くとられている。この作品を前にした時、観覧者はこのシーンを、下から見上げているような感覚になる。まるで墓の中から様子を伺うかのように。キリストの遺体が、実際にこちらに降ろされているかのような錯覚に陥らせる構図。イイネ。

登場人物と構図
登場人物としては、右側から、クレオパのマリア(聖母マリアの異父妹)、マグダラのマリア、聖母マリア。こちらを向いているのがニコデモ、奥にいるのが聖ヨハネ。クレオパのマリアが両手を上げて、神に祈るポーズで人の存在が扇状に広がりを見せる形となっていて、構図的にも気持ちいい。

キリスト要素
聖ヨハネの右手にも注目したい。イエスの脇腹の刺し傷に触れている。この傷は、十字架にかけられたキリストの死亡確認のために、ロンギヌスが刺した跡。これで、画面上のキリストは死んでることを表してる。いやもちろん、この絵をパッと見ればキリストが死んでることなんて分かるんだけど、こういうポイントでも分かるってなるともっと楽しい。

背景
やっぱり私はカラヴァッジョの真っ暗な背景が大好きだから、背景の効果にも触れたい。どこが舞台なのかもわからない真っ暗な闇。場所の特定は墓石の上であることだけ。
これによって、この絵はキリスト死と、それを嘆く弟子や聖母たちの悲しみを直接的に訴えてくる。一番伝えたいことをストレートに描き、真っ直ぐに照らし、他の事象には口を閉ざす。この潔さがかっこいい。好き。

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私は、名古屋で開催されたカラヴァッジョ展には行けなかったけど、≪ホロフェルネスの首を斬るユディト≫が来る説があっただなんて。来なかったみたいだけど。

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