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夢の世界へと続く道〜太陽の散歩道2

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
大人な表現ありです。過激な表現もありなので気をつけてください。

夜のきらめきへ

モヤモヤしながら歩いていたら、久しぶりに大好きな弟レンにバッタリ再会した知里。

2人は急行電車に乗り、外を眺め、夜の光達が高速で流れていくのを感じた。

産後初めて電車に乗る知里は、何だか初めて電車に乗る子どもの気分を思い出した気がした。

レンはふわりと微笑んだ。

やがて電車を降り、サラリーマンや遊びに繰り出す若者達の間をすり抜け、どんどん電車を乗り継いでいった。

知里が新社会人から働いていた会社のそばを通り、大きな河を渡り、やがて電車は海に出た。

知里の心は、都会の壮大さ、昔の会社で仲間たちと過ごした喜びを思い出し、次は大好きな海や夜景に胸が高鳴ったのだ。

レンは大型犬のように愛くるしい笑顔で知里を見た。

やがて電車を降り、夜の海辺の前に2人は降り立った。

まだまだ客船や漁船達がキラキラと光を放っているし、遠くに観覧車や水族館の光達が見える。

所々ベンチがあり、恋人達が身を寄せ合って話している。

10月の夜、爽やかな秋の風が気持ち良い。

レンとは夏場、若い時に海水浴に行ったな。

こういう夜の海辺のしっとり大人のデート?は初めてだ。

柵と海を左手に見ながらゆっくり歩いていく。2人手を繋いで。
都会なのに星もそこそこ見えている。

それなりに大きなホテル前に着いた。椅子がたくさん並べられていて、野外にある夜の喫茶店とバーのようだった。

「少し休んでいく?」
レンが聞いてきた。

知里は、今晩は旦那と昨日のカレーの残りをカレーうどんにして食べる事にしていた。
旦那、きっと待っているだろうな…。
ふと現実に戻った。

スマホは恐ろしくて確認していない。

何だか悪い気もしてきた。

知里の心の中「でも目の前にはレンがいる。私を楽しませてくれようと一生懸命だ。
 
まぁ良いか。」

飲み物だけ2人で頼んだのだ。

加えてもし帰宅してご飯が無かったら困るからホテルのレストラン仕立てのオムレツもテイクアウトしたのだ。

知里も授乳中のため、ノンアルコールのカクテル、レンは普通のカクテルだ。

色白だが血色が良いレンの顔がさらにピンク色になり、何だか湯だったようでセクシーに見えた。

2人は乾杯をし、チビチビ飲んだ。

夜風に当たり、海を眺めながら。

突然、前の通り道までの広場にオーケストラの楽器が置かれていき、人も先程より少し増えてきた。

偶然演奏会が行われる予定だったようだ。

何と幼い頃から今でも2人が大好きな竜騎士伝説の曲が演奏され、それが中心で、他はクラシック音楽がパラパラと演奏されていた。

とにかく2人は心の奥底からブーっとパワーが湧いてきて、気分が上がって来たのだ。

それが終われば、ダンサーさんやDJさん達が出てきて小1時間、その場で起立して出来る簡単なダンスをして盛り上がったのだ。

ダンスビートに乗ってノリノリで踊ったのだ。

レンも汗をかいてニコニコ踊っていた。
知里も同じ。

こんなにニコニコしたのはいつぶりか?

「いける!」
知里は叫んでしまい、口を手で押さえた。

ワハハ!
レンは笑い、知里の頭を撫でた。

気がつくと知里が死んだような気持ちで自宅から出てきて4時間近く経っていた。

楽しい時間はあっという間だった。
2人ともスッキリし、知里は明日頑張って宮参りに行く決心が出来たようだ。

全てレンのお陰だ。

2人は帰路についた。

知里は旦那に怒られる事を覚悟していたが、レンが知里の家まで来て、旦那に頭を下げてくれたのだ。そしてレンは近所のマンションに帰って行ったのだ。知里も旦那から咎められる事は無く、カレーうどんとオムレツを2人で仲良く食べたのだ。

知里の心の中「本当にできた弟だ。それに旦那がいながら不謹慎だけど、私、レンが好きかも。」

さりげなく、「明日の宮参りの場所と時間教えて」
とレンに聞かれ、知里は駅近の神社で朝10時からだと教えたのだ。

宮参り

やはり次の日の朝、知里は億劫だったが気持ちはレンと会う前とは全然違っていた。

レン様様だった。

次の日朝から知里の家に全員集合し、神社を目指したのだ。
旦那のお母さんは無理して頑張って笑っているように見えたが、特に何かしてくる様子もなく。

知里の旦那も両親と普通に仲良く話していた。

あとは旦那のお姉さんやな…。
知里は構えた。
そう思っていたらすぐに現れたのだ。

お姉さんはスッキリした笑顔だったのだ。ケロッとしていたのだ。

知里と旦那の家族の心を無茶苦茶にしたとは気づいていないようだったが、その方が助かった。
機嫌が悪いよりずっと良い。

知里達夫婦の息子を連れ、神社に移動し、お堂に上がった時に知里の携帯にピロンと着信音があったのだ。

振り向くとレンがついてきていて、ピースしてくれたのだ。

「何かあったら速攻で入る!」
とメッセージも送って来たのだ。

その後の食事も、一時期沈黙があり、知里はどきりとしたようだが結果的に何ともなく、宮参りは無事に終わったのだ。

次の週も旦那の実家でお食い初めだったが、本当にゴタゴタがあったのか?というくらい和やかだったのだ。
流石にお食い初めにはレンは来なかった。
全てオーライだった。

知里も、本当に逃げなくて良かったと心から思ったようだった。

これ以降知里も旦那もお互いの家族とはあまり関わらないで、子育てをして息子と3人で幸せに暮らしたのだと。

エピローグ

実は事件の2年後、知里達夫婦の間に2人目の子どもが産まれたのだ。
次は元気な女の子だ。

息子とは前世で師弟関係だったのか、息子はお兄ちゃんらしく、娘にいろいろ教えたり引っ張っていっていた。

次は宮参りもお食い初めも家族4人だけで行い、知里もワンオペで頑張ったのだ。

知里も2年前のように、すごすごと逃げる事を考えずに強くなり、子育てに仕事に家事にバリバリこなしていた。

旦那のお母さんやお姉さんも舌を巻くようになり、一目を置いたのだ。

レンも2ヶ月に1回くらい、仕事帰りに知里の家に来て手伝ってくれる事もあった。

子ども達はスクスク育ち、2人とも20歳を超えた。
そして2人とも20代半ばから後半に結婚をして家を出たのだ。

知里達夫婦も70歳が見え始めて来て、2人でゆっくりしようとしていたら旦那が亡くなり、知里は1人になってしまったのだ。

お互いの親はもちろんもう居ない。旦那のお姉さんや知里のお姉さんとは全く連絡がつかないのだ。

旦那のお姉さんは、知里達夫婦の息子の宮参りから1年経った頃、大好きになった外国人と結婚して海外に行ったのだ。そこから顔を見る事は無かった。

そんなあるクリスマスの日、レンに誘われて知里は食事に行ったのだ。

レンとは旦那がいない時に会ったり、旦那が亡くなってからはしょっちゅう会っていた。

カラオケも歌える大好きなお店で、夜の開店直後の静かな時間に2人食事をしたのだ。

食後、レンから
「2人で暮らしませんか?」
と話があったのだ。

このまま1人で死んでいくのは知里も寂しかったのだ。

知里は幼い時からきっとずっとレンの事が大好きだったのだ。
レンも同じ。

やがて2人は大阪の北に落ち着き、暮らし始めたのだった。
やっとこさお互いの想いが叶ったのだ。

お互い歳を取ったが、お互いの温もりがあれば不安など全く無かった。
短いであろうけど、残りの人生を2人で行けるなら何も要らなかった。

知里の息子や娘も家族を連れて来て、程よい距離で付き合えていた。
何と知里の息子はレンに何もかもがそっくりだったのだ。

不思議なものに導かれ、今知里とレンは陽だまりの中、ベンチに座って語り合い、幸せな時間を過ごしていた。







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