見出し画像

絵が苦手

ケーキが好きなら

昔勤めていた会社には毎週月曜に朝礼があって、同じフロアに全社員が集まっていた。あの頃は人数が少なかったからギリギリできていたように思う。ある日の朝礼で、

ケーキが好きだからと言ってケーキ屋さんで働きたいというのは安易だと思う。ケーキが好きにも、作ることが好き、売ることが好き、ケーキのレシピを考えることが好き、食べることが好きなどいろいろあるはずだから…

のようなことを話していた。言われてみればその通りなんだけど、そういう風に分解して考えられるなんてすごいなぁと思った。

「絵は好きですか?」と聞かれると、答えに困って「苦手です」と答えてしまう。質問と答えがあってない。どうして苦手か考えてみると、一番には自分の絵が下手だからだと思う。下手にもいろいろあると思うけれど、一番は自分が描きたいような絵が描けたことがない。理想が高いのだろうか。壮大な絵を書きたいとかそういうわけではないんだけれど。ケーキの話で言えば、絵をどのように切り取っても好きにはなれなかった。

大嫌いだった美術の授業

小さい時は絵を描くことが嫌いではなかったと思う。でも、お世辞にも上手い方ではなく、幼稚園の頃に描いた絵は、顔が逆三角形のようになっていて、頭は平ら、男の子は髪が短く、女の子は長い。左上にはいつも太陽があった。

小学校に入ると、周りにたくさん上手だなって思う子がいた。先生から「もっとがんばりましょう」のスタンプをもらう度に、自分の絵はダメなんだなと烙印を押されたような気がしていた。自由に書いて良いと言われる度に、何を書いていいのかわからなくなった。絵の具は一度書いたら消せないから、鉛筆で何度も下書きして結局時間がなくなって、中途半端に終わっていた。

中学の修学旅行では、陶器に好きな絵を描いて自分だけのマグカップを作るので、下絵を事前に授業で描くことになっていた。私の好きな半跏思惟像のページを資料集で開いて、その上に紙を乗せて上からなぞって仕上げた。なんとか課題を終えたとお気楽に考えていた私は、本番は粘土を資料集の上でなぞることができないなんて想像もしていなかった。

絵を描くことに苦手意識が芽生えると、だんだん絵を見ることも苦手になっていった。何が良い絵で、どこがすごいかわからないことが恥ずかしかったからだと思う。それまでも行かなかった美術館は、よりいっそう足が遠のいた。

絵に対する意識がちょっと変わった

絵に対する意識が変わったのはPodcastを聴き始めてからだった。

Podcastはインターネットラジオ番組で、今はSpotifyやらなんやらたくさんプラットフォームがあるけれど、聴き始めた当時はAppleが提供するApple Podcastくらいしか知らなくて、iPhoneに最初から入っているアプリで聴けるのに聴いている人にほとんど出会えなかった。

さらにPodcastはいろんな人がいろんな番組を持っているから、同じ番組を聴いている人が身の回りにいることなんて奇跡に近い。それでも誰かと一緒に番組のこととか話したいなぁと思って勇気を出して参加したのが「行け!世界遺産と雑学の旅★(セカザツ)」のオフ会だった。ポツンと参加した私に話しかけてくれたリスナーさんが、個別で開催するリスナー会にも招待してくださったりして(いや、実は勇気を出して「行ってもいいですか?」と直談判したのだけどw)少しずつリスナーさんの輪に入っていくことができた。そこには実際に本名も職業も知らない人ばかりだったけどけど、共通の何かがあるだけで、グッと距離が近く感じた。

そのリスナー会で出会った方に絵を描かれる方がいて、自分が参加するグループ展に招待してくださったのだ。正直絵はよくわからないままだったけど、その人の絵見たさに初めて展示会というものに行った。まさに右も左も順路もよくわからなかったけど、そこには絵画以外にもたくさんの美術品があって、その迫力に驚いた。もちろんその方の絵も素晴らしかった。陳腐な感想だけれど、生で見ることができて本当によかったと思う。

いろんな番組でリスナーさんに出会うたびに、美術に携わる人にも多く出会い、その方が展示をしていれば足を運ぶようになった。いろんな人のいろんな表現を見る度に、感じ方もそれぞれでいいんじゃないかと思うようになった。そんなこと昔から言われているんだろうけど、見る機会が増えていくうちに実感するようになった。それでもまだ自分の絵は下手だと思うし、上手くなりたいという情熱は正直ないのだけれど、手帳の挿絵イラストくらいから描き始めてみようか。

絵は苦手だけれど、見ることは好きになりました。

Podcastがきっかけで出会った好きな画家さん

SHIBUちゃん|TOCINMASH

SHIBUちゃん(番組ではみんなSHIBUちゃんと呼んでいるのでここでもそう呼ばせてください)は、「墓場のラジオ」「月曜トッキンマッシュ」など数々のPodcast番組を手掛けて実際にパーソナリティとしても出演されている。詳しい説明はすごくかっこいいWEBサイトがあるのでそれを見てほしい。

配信回ごとにトークにあわせて作られたアートワークは、いつも一捻りあって見ていて楽しい。以前番組のイベントでは個展のようにアートワークが壁一面に飾られていたり、オリジナルの番組のグッズがたくさんあって、見ていてワクワクした。

墓場のラジオのアートワークとして描かれた作品(墓場展2018)

SHIBUちゃんは、画家さんではないと思うけれどたしか美術予備校の講師をされていた経験もあり、墓場のラジオ Season1 の第4夜「絵を描くということ談義」などたびたび絵に関するお話をされている。初心者でも聴きやすくて、たしか番組内で行ったリスナーが選ぶランキングでも上位に入っていたはず。番組イベントもいいけど、またSHIBUちゃんの作品を目にできる機会があったら嬉しいな。

NEWS
第3回JAPAN PODCAST AWARDSにて「月曜トッキンマッシュ」が、
ベストパーソナリティ賞ノミネート、リスナーズ・チョイスでは第10位入賞!

追記(2022.5.16)
墓場のラジオ内の人気談義ランキングに入った回の配信を残してくれていました。


②江藤玲奈さん

Podcastの番組リスナー同士ということで知り合い、個展にご招待いただいたのがきっかけ。日本画を描かれると聞いていたけれど、作品を見てビックリ。日本画って浮世絵に出てくるような風景とか美人画みたいなことではなく、日本に古来から伝わる画材で描かれたものを言うんですね。

初めて見させていただいたのは西荻窪のガレリア青猫さんという画廊で開催されていた時。人生で初めて画廊に行った。私みたいな人が入っていいものなのかわからなかったけど、恐る恐る入っていった。

江藤玲奈展 回遊す光-命の輝きー

そこにはいきいきとした絵がたくさんあって、色使いもとてもきれいだった。目の前で見ないとわからないような細かい装飾が特に美しかった。画廊にいらした店主のかたもとても気さくな方で、絵しか置いていない狭くて静かな場所(言い方が悪いけど)に入ることが少しだけ怖くなくなった。

レイナさんが在廊されている他の展示も見させていただいたことがあるけれど、ド素人の質問にも丁寧に答えてくださって、絵からだけでなくレイナさんからも力をもらった気がした。最近はアクリル画の作品もあるらしいので、機会があったらぜひまた見に行きたい。

NEWS
今年パリでも展示をされるらしい!

③成田侑未子さん

おそらくセカザツのリスナーさんということでTwitterでフォローさせてもらったことがきっかけのように思う。よくご自身が描かれていた絵をTwitterに載せられていて、ほのぼのした絵がいつもかわいらしいと思っていた。特に好きなのが動物のイラスト。見ていてとてもあたたかい気持ちになる。母もこういうイラストが大好きで小さい時によく絵本を読んでくれていた。(どちらかというと母が好きな作家さんの絵本を見せてくれていたんだと思うw)

そして、思い立って母の誕生日にゆみこさんの絵を送らせてもらった。まさか自分で絵を買う日がくるなんて。しかも人にプレゼントする日がくるなんて。でも、絶対に喜んでもらえると思えるような素敵な絵だった。コロナということもあり、直接渡せなかったので内緒で送ったら怪しいと思われ、宅配業者引取という事態になってしまった。(知らない郵便物受け取らなかったのさすが)想定外のことでビックリしたけど、なんとか母の手元へ渡すことができた。その後、大喜びの母のメールと絵の中の動物と同じ笑顔の母の写真が送られて来た。このプレゼントには、ゆみこさんにもいろいろご協力いただいたこともあり、こんな風に喜んでくれましたと御礼と共にお伝えすることができてこれまたほっこりした。

いつか、実際にたくさんの絵を見ることができる日を楽しみにしています。

NEWS
インスタグラムには最新のイラストがいっぱい
https://www.instagram.com/yumiko_on_insta/

他にもたくさんいる。絵を描かれる方もそうだし、現代アート、番組のファンアートなど刺激を下さる方はたくさんいる。

よーく考えると…

厳重に鍵をしていた自分の記憶の扉を開けてみると、いろんなことを思い出す。そして思い出したのは、最初に「この絵が好き」とはっきり思った場面があったこと。お正月に母の友人が毎年恒例で集まっていてそこに遊びに行った時に、母の友人のお父さんが描いた年賀はがき用の原画を見せてもらった。有名な漫画家さんということもあって、コミカルだけどとても味があってひと目で気に入ってしまった。

私が珍しく「あの絵よかったなぁ」と何度も言ったものだから、両親はそれを覚えていて翌年私の節目になった年の誕生日にプレゼントしてくれた。販売用ではないけれど、なんとかお願いしてくれたらしい。すごく嬉しかった。飾ってはよく見ていた。引っ越してきてからはまだ飾れていないけれど、その干支がきたらぜひ飾りたいと思う。それまでは撮った写真を度々眺めている。でもやっぱり本物がいいんだよなぁ。

長くなってしまった。
絵に対してこんなに文章が書けることにまずビックリした。

そうだ、浮世絵の話してないな。
意外と出てくる絵との思い出。
あの頃に比べて苦くない記憶になってるよー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?