不連続殺人事件 坂口安吾

好きだけど、あんまり緻密な作品を書くイメージじゃない(失礼)安吾先生の推理小説って、どんなもんなんだろと読み始め。結論としては、文章はいつもの安吾味で、かつしっかりと推理小説していました。

のっけから10人以上の文学者やら絵描きの、誰々が誰々と別れて別の誰々と再婚したなどのただれた人間関係が語られ、こんなのいちいち覚えてられないよ!と不安になるものの、文章は読みやすくサクサク進行。いいのか?ってくらいテンポ良く殺人が起きていくのもあって、すらすら読み進められます。

推理小説としての構造は、いわゆる密室トリックのようなパズル形式の謎ではなく、話の流れの不自然なところを見つけていく、間違い探しの方向。なので、推理せずに推理小説を読むタイプの僕でも読みやすい構成でした。種明かしが済んだ後では後知恵で確かに怪しい展開だったなと思うところはあれど、読んでいる途中は気にならないのではないかと思います。また、巻末の解説でも触れられてるんですが、ラスト2ページで一気に物語中からの犯人の印象が変わるあたり、坂口安吾作品だなぁと思わせてくれて好きですねー。

それと、他の作品にはあまりない特徴としては、各章の末尾にある雑誌連載時の附記がいい味出してるんですよね。謎解き懸賞付きだからか、読者や知人をいちいち煽り倒すプロレス感、人柄が出ててニヤリとしてしまいます。


巻末の「アンゴウ」も、さらりと読めて悲しくも爽やかなラストが印象的で良い出来。両作とも青空文庫でも読めますが、一冊の本にまとまっている新潮文庫版をあえて読むのもいいのではないかと。すんなり読めて楽しい本です。

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