鋼鉄都市 アイザック・アシモフ

作者から連想される通り、直球のSFミステリー。

超有名なロボット三原則がもちろんこの作品にも出てくるんですが、やっぱりというか、今回も強力なこの制限をどうやってくぐり抜けるかがポイント。

ロボット三原則の構造からして『①人間に危害を加えてはならない。②1に反しない限り人間の命令に従わなくてはならない。③1,2に反しない限り自分の身を守らなくてはならない』という入れ子式の論理ルールなので、これを弄り回してどう三原則に反しているような事例を成立させるかの論理ゲームになるし、そこがアシモフ先生のロボットものの楽しみですね。

で、ミステリーの筋立てとロボット三原則に密接な関係があるのと同じく、今作の舞台設定もミステリー的な進行としっかり関係してるのが面白いところ。人類が完全に人工的な巨大都市の中で暮らすようになった地球で、人類の上に立つ存在の宇宙人(元地球人の他惑星移民)殺害事件を巡る騒動。それが担当刑事とコンビのロボットのサスペンスと同時進行で地球の未来を決定付ける決定も動いていくのがワクワクします。こういう、ミクロとマクロの出来事が絡み合う展開、好きなんですよね。

徹底して論理的で融通が利かない、ロボットのR・ダニールも、舞台装置的な動きあり、主人公の刑事ベイリとの哲学的な問答ありと面白いキャラクター。最後に人間心理をちょっと理解するところもお約束ながらいいシーン。

しかしこの設定、どうにも今読むと現実の世界情勢を連想してしまうところがありますねー……。作中では、人口増加による行き詰まりと宇宙人・ロボットとの軋轢は、新たな惑星への移民というフロンティア探求で解決してしまうわけですが、さて現実はどうなりますか。

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