魂の重さは何グラム? 科学を揺るがした7つの実験 レン・フィッシャー

作者はイグノーベル賞受賞者とのこと。検索したら、「ビスケットを紅茶に浸す最適な方法」を考えた人らしい。日本では行儀が悪い寄りの食べ方ってイメージですが、こういうパンやビスケットの食べ方は欧米じゃメジャーらしいですね。


本編の話なんですが、全体を通じて繰り返されているのが「科学には常識的な感覚から逸脱した事実(だと思われる事)がある」点で、取り上げられている7つの実験はどれもそういった性格を持ったものになっています。

表題になっている魂の重さを計る実験等の、奇抜な実験を通して科学史を語る内容なんですが、全てが今から見るとトンデモ学説に関わる話ではなく、光の波動論なんかの当時の常識から見ると奇妙な学説にまつわる話も半々。

魂の重さを計るというと、いかにも怪しい実験のように聞こえるものの、検証の方法についてはしっかりと科学実験のフォーマットに沿ったまっとうな実験だったらしいです。

また、客観的な視点から物事を見る人間の集まりという科学界のイメージに反する、科学者の俗っぽさや科学界の政治的なやりとりに関わる話も多数。異端児のイメージがあるガリレオも、実はまっとうに体制の中でキャリアを積んで出世を目指していた(でも性格は科学者らしく偏屈なトラブルメーカー)ことなんかが語られてます。

人間の常識というのは、現時点の知識と自分のスケールの世界を基準としているので、全く新しい発見や、マクロ・ミクロの世界の出来事に対してはほとんど役に立たないのかな、というのが読み通しての感想です。宇宙論や量子力学なんかはもはや「実験や推論の結果はこうなるから、普通に考えたら絶対におかしいけどともかくそういう事だと考えざるを得ない」みたいな事実がゴロゴロしていて、専門家ですらよく話についていけなくなるというのも納得。ただ、物事をいかに客観的に判断するかは科学の歴史上ずっと問題になってきた事なので、ステップを上げていった結果、そういう傍から見ると訳の分からない事態になるのも不思議ではないのかもしれません。

しかし、他の本でもそんな話が出てきた覚えがあるんですが、一昔前の化学薬品の扱いの適当さは今見ると恐ろしいものがありますね……。家庭用医薬として水銀が常備されてたり、学校の実験で爆発する薬品を使ったり、面白そうだけどスリリングすぎやしないかと思うところがちらほら。

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