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ノリで入管視察した話

はじまり


某テレビ局の選考を受ける友人がいた。ホテル代が浮くと聞いて私も行った。名古屋に来るのは初めて。何かの流れで入管に行くことになった。お互いがジャーナリストを目指していることもあり、興味があったからかもしれない。

当日、我々は乗るバスを間違えて、別の場所にきてしまった。桜本町から千年駅で乗り換え、競馬場前で降りる。名古屋入国管理局がある場所だ。その外観の清潔さは世間の悪いイメージとかけ離れていた。

施設の四階以上は関係者のみ出入りが可能だったので、まず三階へ。審理部や社内報を眺める。なんだか雰囲気が暗かった。実際、照明はほとんど点いていなかった。節電でもしていたのか?すれ違う職員が皆悪者に見えてならない。彼らも外国人じゃない我々を物珍しそうに見ていた。

特に何を見つけるでもなく二階に降りると、雑多に人が溢れていた。在日外国人を対応するエリアだ。入管本来の業務とは何だったかを思い出した。「なんだ、ちゃんとしてるじゃないか」。再び1階へ戻る。在留申請する外国人の列が一階まで続いていてた。他に珍しいものもなく、どうにも拍子抜けしてしまった。施設を出ようとしたが、一階奥側に面会室という立て看板を見つけた。拘留者と面会できる場所だ。

偶然

13時の面会開始時刻まであと15分。折しもその時、二人組の外国人が来た。私は彼女たちの早口英語に耳をそばだてた。ここまで来て何もせず帰るわけには行かないと思い、つたない英語で話しかける。「学生で、入管の問題を勉強しに東京からきたのですが」どうにかそう伝える私に、その女性は快く話をしてくれた。

ウガンダから来たというその女性は、同じくウガンダ人の被勾留者に会いに来た。彼はスマホやパスポートを取り上げられていて、外に出ることもできない。スタッフも英語を喋れないので、そういったことに対する抗議もまともにできない。と彼女は言い、怒りをあらわにする。
 "come, together."
連れて行ってくれるという。面会する相手のいない我々でも、内部に潜入することができた。バスを間違えたおかげで変な巡り合せに遭遇したのか。

面会申請時間になると、スタッフが扉を開けに来た。面会申請を書く際には、なぜか身分証明の提示を求められた。理由は聞かなかった。スタッフは外国人相手でもすべて日本語で対応していた。友人は選考の関係でスーツ姿だったことから弁護士と勘違いされていた。彼はそれを否定せずに書類を書き、学生証を提示しているのが面白かった。

奥の待機室まで案内されると、最初に呼ばれたのは私達を中に入れてくれた二人組の外国人だった。二人ずつしか対面することができないためだ。その時すでに申請から二十分が経過していた。三十分が面会時間と言われていたが、それよりも長く行われていたように感じる。それは入管側の情けなのだろうか。

入室前に荷物をすべて預けることになっている。

三階以下の入管に対するイメージは特に悪いものでもなかった。そのイメージは面会によって変わる。四階以上のフロアに本質隠されていたのだと今では思う。

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