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23/1/28名古屋城シンポ パネリスト「木造復元してできるのはあくまでも令和の城」

23/1/28(土)に名古屋市は名古屋城シンポジウムを開催しました。
450人の定員が開始20分前には満席になるほど大盛況でしたが、会場からの質問時間はありませんでした。
パネリストの萩原さち子氏(城郭ライター)は「一つ気に留めるべきなのは、あくまで復元であり、かなえられない技術や資料があるため、あくまでも慶長の天守ではなく令和の天守である。
愛をもって本質的価値を見るべきで、何を選ぶのかが大事」と述べましたが、具体的な問題については触れませんでした。

・配付資料
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230128.pdf
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230128-1.pdf

今回、写真撮影は遠慮するよう事前にアナウンスがありました。新型コロナ禍の中、前後左右とも狭い席が満席で、しかもネット中継はありませんでした。
23/1/21市民説明会で配付した資料は、今回は配布されませんでした。

パネルディスカッションとは「ある問題について五、六人の対立意見代表者が聴衆の前で議論をかわし、のち聴衆全体に討論への参加を求める方法」(精選版 日本国語大辞典)とのこと。
https://onl.tw/M7555wv
今回壇上に上がったパネリストの小和田哲男氏(静岡大学名誉教授)、クリス・グレン氏(お城好きラジオDJ)、萩原さち子氏(城郭ライター)はいずれも大の城好きであり、いずれも名古屋城木造復元を積極的に推進し、全く意見の対立はありませんでした。

しかも、会場に来た人に、大高城を訪れた人はどれくらいいますかと質問したところ、半数以上が手をあげるなど「普通の客ではない」(コーディネーターの原史彦氏(名古屋城調査研究センター主査))。
会場は大変盛り上がり、会場で募集していた金シャチ募金への寄付受付にが大勢が集まっていました。

小和田名誉教授や上田剛名古屋城総合事務所所長が、いろいろ名古屋城の歴史や経緯を説明していましたが、「徳川家康が築いた究極の城」がどうして幕末に機能しなかったのか(家康が想定した最悪の事態である『西から江戸に向かって進軍してくる敵』を名古屋城でどうして防げなかったか)は全く説明がありませんでした。

それよりも、どうして2022年12月までに完成させると言っていた木造復元がここまで遅くなっているのか(いまだに文化庁の現状変更許可も出ていないどころか、名古屋市は解体と復元を一体とする現状変更許可申請もまだ出していない(2023年4月以降に提出予定))は説明がありませんでした。

萩原さち子氏も、「何を選ぶのかが大事」とは述べるものの、具体的な問題を挙げることなく、改善方法の提案もありませんでした。

小和田名誉教授は「木造復元は何年かかってもいいと思う。孫子の代までかかってもこの流れは絶やしてほしくない」と述べ、暗にいつまで木造復元に時間がかかるかわからないことを認めました。

河村たかし名古屋市長は、今回は挨拶をしませんでした。


名古屋城木造復元事業のボトルネックである「バリアフリー」「基礎構造」「石垣安全対策」は竹中工務店が2016年3月に優秀交渉権者に選ばれて以降7年かけても解決できませんでした。
バリアフリーは日弁連が「憲法や条約、法律に違反する」とした小規模な昇降設備を導入する方針です。
しかも河村市長は「昇降技術の設置は、1階もしくは2階までとし、3階以上は設置しない、これが合理的配慮」と述べ、障害者団体が猛反発しています。
石垣等遺構を破壊しない「基礎構造」については、現在「調整会議」が開催出来ない状況です。
「石垣安全対策」については、これ以上調査を行うのが危険だと判断した場合、それを踏まえて検討予定とのこと。
これらを2023年3月末までにまとめる方針です。

金シャチ募金は約7億円寄付が集まったとのことですが、目標は100億円です。
名古屋市が今後53年間の試算を2016年6月に公表していますが、運営管理費も含めて979億円の事業中、利子は約101億円と試算されています。 
https://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/cmsfiles/contents/0000083/83234/1-4men.PDF

木造復元へ寄付した人には「あなたはどんな木造天守が出来ると思いますか」「江戸時代になかった昇降設備、階段を付けようとしていますが、それでも
寄付しますか」「昇降設備や階段がなければ、文化庁は許可しません」「天守台地下に、貴重な石列が発見され、それらを破壊するような基礎構造はできませんし、どう保存するかはまだ未定ですが、それでも寄付しますか」などを問いたいです。

何回も言うように、「資料さえ豊富なら、江戸時代そのものの天守が復元出来る」わけではないのです。
あくまでも「令和の城」であり、技術的制約だけでなく、各種法令を守る必要があるのです。
その上で、収支見通しが議論になるのですが、残念ながらそもそも法令が守られるかも分かりませんし、収支見通しも立っていません。
これらは、今回のような「シンポジウム」では明らかにならず、会場からの質疑や市議会での討論で明らかになるのですが、今回名古屋市は質疑がある市民説明会を年1回に減らしました。

名古屋城は、一部の城好きの人だけのものではなく、「日本全体の宝」なのです。
事実を踏まえたきちんとした議論を望みます。


・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
 http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm

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