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名古屋市 石垣部会に名古屋城天守台石垣の保存方針(案)を示すも審議時間が取れずいったん廃案 4月以降に議論へ

名古屋市は、23/3/17(金)に開催した特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 石垣・埋蔵文化財部会(第55回)で、2022年度中にまとめるとしていた名古屋城天守台石垣の保存方針(案)を示すも、石垣部会から「審議時間が取れなかった、内容も十分ではない」と意見がでたため、いったん廃案にし、2023年4月以降にあらためて議論することにしました。
名古屋市は、23/3/24(金)に開催する全体整備検討会議に、「特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画 第2章 石垣等遺構の保存」部分は2022年12月に全体整備検討会議で議論したものをそのまま出す方針とのことです。

・23/3/17(金)特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 石垣・埋蔵文化財部会(第55回)配付資料
 (資料3-1、3-2、3-3はいったん廃案)
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230317.pdf
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230317-1.pdf

名古屋市は、市議会にも市民説明会でも、「2023年3月までに、木造天守整備基本計画をまとめる。『石垣保存方針』『基礎構造の方針』『バリアフリーの方針』もまとめる」と公言してきました。

・22/7/13特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会第24回部会 配布資料
 https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/uploads/3f1fd4c3e39fef4bfb21b36eea469a95.pdf
・令和4(2022)年度開催 名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会
 https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/tenshu_information/2022/12/20221218_1412.html
 
ようやく23/3/17になって、天守台石垣の保存方針(案)を石垣部会に示すも、当初3番目に位置づけられていた議題の順番が、急遽最後(5番目)に回されました。

議題5(4番目に議論)の天守台穴蔵石垣背面調査の調査成果が報告され、はじめて粒径分布の測定結果が示され、50mm未満の粒径が多数を占める地点もあれば、150mm以上の粒径が多数を占める地点、その中間の地点もあることが判明しました。
宮武正登・佐賀大学教授は「背面の7割方がほぼ土のところがあり、背面の体をなしていない。今回調査していないが、小天守も同様ではないか。
しかも、調査箇所によって差があまりにもある。
構造物の危険度を把握することは無理ではないか。南海トラフなど大きな地震がある可能性があり、手をこまねいてみている時間はないのでは」と指摘しました。
千田嘉博・奈良大学教授は「今回の調査成果は、工事図面とどこも違っていたことが判明し衝撃的だ。本丸は人が通り、本格的な調査をして対策が必要だ。
鉄筋天守そのものの耐震性に問題があっただけでなく、穴蔵石垣背面調査で、栗石であるべきものが土であったことが判明した。より詳細な調査と対策が必要だ」としました。

名古屋城総合事務所は「背面がここまでひどいことが数字で判明した。名古屋市としては、穴蔵石垣をどうしていくか、現天守がある状態での調査は限界がある。
現天守を解体後、しっかり調査・把握した上で本来の姿に戻したい。
解体したらどう影響があるのか、どう調査するかは、あらためて石垣部会に諮りたい」と述べました。

赤羽一郎・元愛知淑徳大学非常勤講師は「表層を調査しただけに留まり、天守台そのものまで言えるのか。また、このデータをもって、木造天守云々は全くなりたたない。現天守はケーソンの上に載っており、まったくこのデータと関係がない」としました。

宮武教授は「木造天守の議論はしていない。木造であろうと、鉄筋であろうと、全て取っ払い天守台石垣だけになろうと、今の内面石垣は極めて不安定で、極めて危ない。穴蔵石垣は持たない」と述べました。

千田教授は「今回の調査で、今後どう活用しようとも、穴蔵石垣に人を入れるのは事実上できないことが見えてきた。広い範囲を調査しないと活用は難しい」としました。

宮武教授は「熊本城穴蔵石垣の方が、名古屋城穴蔵石垣より遙かにマシだが、地震後どうなったか見ている。人がいたら絶対助からない。数百キロの石が飛んでくる。木造であろうと鉄筋であろうと関係がない。どうするか、物理的に重機いれるか。手順すら見えていない」と述べました。

千田教授は「内面穴蔵石垣の状況は懸念されるが、『外面石垣も不安定』とは違う」と念を押されました。

この時点で15時54分と、終了予定時刻の16時ギリギリになり、駆け足で資料3-1、3-2、3-3を名古屋市が説明した時点で16時02分と、終了予定時刻を過ぎました。
・資料3-1「天守台周辺石垣の保存方針について」
・資料3-2「天守台石垣の保存方針(案)」
・資料3-3「特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画 第2章 石垣等遺構の保存」

座長の北垣聰一郎・石川県金沢城調査研究所名誉所長は「資料3については内容に入れていない」とし、どう扱うかとしましたが、名古屋城調査研究センターの村木誠副所長は「石垣部会に提出した資料として、23/3/24の全体整備検討会議に出したい」と述べました。

宮武教授は「議論することが多いし、資料が整理できていない。組み立てから議論すべき。まだまだ時間がかかる」と述べました。

赤羽氏は「熊本のことが反映されていない。熊本を教訓にすべき」と述べました。

千田教授は「事実関係の位置づけが、石垣部会の認識とかなり違う。一度文化庁に出せば『名古屋市の見解』となる。
過去、『部会では承知していないが、名古屋市としては文化庁に出す』とした恐ろしい歴史がある。それは良い方向には行かないと思う」と述べ、北垣座長も同意しました。

宮武教授は「これが一人歩きするのが怖い。これが文書として残ると、当該石垣の補修は見直すことにならず、後々の影響がある」と述べました。

鈴木整備室長は「3分だけ事務局で相談する時間が欲しい」として暫時休憩に入り、11分後に「石垣保存方針は全く十分な段階ではなく、石垣部会でご議論いただきまとめないといけないと認識している。
一方、1年前に文化庁にお許し頂いた途中経過のものはある。
・特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議第48回会議(令和4(2022)年3月31日)
 https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/2022/02/20220216_1155.html
4月以降に早急に皆様に諮って議論し、まとめたい。
23/3/24全体整備検討会議には、1年前の資料をそのまま出したい。
また、木造天守整備基本計画の2章石垣部分については、昨年12月に全体会議に示したものをそのまま示したい。」
・特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 第53回会議(令和4(2022)年12月9日)
 https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/2022/05/20220523_1352.html
としました。

上田剛・名古屋城総合事務所長は「今回配付した資料のうち、3-1、3-2、3-3は一旦廃案にしてやり直す。
天守台石垣の保存方針(案)は昨年度のバージョン1の段階。本日バージョン2にいきたかったができなかった」と明言しました。


調べたところ、第50回石垣・埋蔵文化財部会部会(令和4(2022)年7月15日)で特別史跡名古屋城跡石垣の保存方針について議論されていましたが、「天守台石垣の保存方針(案)」は議論されませんでした。
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/2022/05/20220523_1352.html

木造天守整備基本計画の第2章については、第24回天守閣部会(令和4(2022)年7月13日)で議論されました。
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/2022/05/20220523_1352.html

石垣部会では、この1年、まったく「天守台周辺石垣の保存方針について」「天守台石垣の保存方針(案)」「木造天守整備基本計画 第2章 石垣等遺構の保存」が議題になっていませんでした。理由は不明です。

名古屋市民オンブズマンは、これまでの石垣部会傍聴後、「今回も天守台石垣の保存方針は議論しなかった」と繰り返してきました。
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm

2023年3月までに名古屋市がまとめるとしていたものの現状は以下です。
・木造天守整備基本計画→2章 石垣等遺構の保存 は石垣部会で議論せず
・石垣保存方針→石垣部会で議論せず廃案
・バリアフリー→2022年12月に新技術公募結果公表 日弁連から「憲法等違反」
・基礎構造→23/3/24 全体整備検討会議で示す?

「2023年3月末までにとりまとめありき」で強引に進めてきた名古屋城木造復元事業。
有識者会議の十分な議論はなされませんでした。
それだけではなく、現在の穴蔵石垣背面状況は極めて悪く、「人を入れることは事実上できない」のも事実です。

今後どうするのか、じっくり落ち着いて議論する必要があるのではないでしょうか。

なお、今後の有識者会議の予定は以下です。
23/3/22(水)天守閣部会では、バリアフリー、完成後の維持保全・修繕計画、復元計画が議論される予定です。

23/3/22(水)午後2時 天守閣部会(KKRホテル)
https://www.city.nagoya.jp/templates/kaigioshirase_2022/kankobunkakoryu/0000161891.html

23/3/24(金)午後2時 全体整備検討会議(名古屋国際センター)
https://www.city.nagoya.jp/templates/kaigioshirase_2022/kankobunkakoryu/0000162256.html


・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
 http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm

2023年03月17日 19時31分 NHK東海 NEWS WEB
名古屋城天守閣復元計画 石垣の保存方針は改めて議論へ
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20230317/3000028186.html

2023年3月17日 21時00分 朝日新聞
石垣の保存方針案、承認得られず議論持ち越しへ 名古屋城天守木造化
https://www.asahi.com/articles/ASR3K6SZKR3KOIPE01Z.html

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