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電話ボックスの話【軽く怖い話③】

小学生の頃

同級生の妹が亡くなった。2歳とか3歳とかだったと思う。近所に住んでいたからお葬式にも参列した。

交通事故だった。同級生が通りの向こう側の電話ボックスで遊んでいるのを妹が見つけ、それを追いかけて駆け足で横断歩道に飛び出したところ、走ってきた単車と衝突してしまった。

同級生も親御さんもすっかり気が滅入ってしまい間もなく一家で他所の街へ引っ越してしまった。

10年ぐらい過ぎて

地元からは少し離れたバイト先で、何歳か年上だけど地元が同じという先輩と偶々出会った。ある日の休憩時間でその先輩が地元の心霊スポットの話を始めた。

「〇〇(施設名)んとこの電話ボックスヤバいのお前知ってる?」と先輩。

「その電話ボックスはわかります。なにがヤバいんすか?」何も知らないフリをして俺。

「なんか夜中に単車で通ると電話ボックスの中から小さな赤ん坊がコッチ見てるって話。夜中の電話ボックスの中に赤ん坊ってチョー怖くね!?」先輩は走り屋で仲間内では有名は話だ、と。だが事故の事は知らないようだから打ち明けた。

「実は10年ぐらい前にそこの電話ボックスの目の前で俺の友達の妹が2,3歳で亡くなってます。電話ボックスの中にいた友達を追いかけてきてボックスに辿り着かずに単車に轢かれました。葬式にも行きました。もしかしたらその子なのかもしれません。」

先輩はその場で俺の顔を見たまま真っ青に。俺も地元から離れた場所でこんな話をする事になろうとは思わなかった。

ここまでは霊感の無い俺が何やら怖い話にリアルに一枚噛んじゃってるネタとして時々周囲に話したりもした。

更に時は過ぎ去って最近

大人の趣味が高じて知り合い、公私ともお世話になっている人が所謂「見えちゃう人」なのだそうで。
俺自身は一切見えないのだけれど、本当に見える人に何度か接して思うのは「そういう世界は存在する」ということ。

ひょんな事から前項までの話をその人に披露したところ興味を持たれ、現場の写真は無いかと求められた。

もう地元を離れてしまってるし、そうそう普段から通る道でもないので手っ取り早くGoogleマップのストリートビューで探すと、電話ボックスなどめっきり減った現在にあっても同じ場所に佇むボックスがあった。

それをそのままスクショしてその「見えちゃう人」に送ったところ…
「電話ボックス周辺に赤ん坊はいないので恐らく成仏した、と言うより成仏させてもらえた、と思います。」と。

ん?心なしか遠回しな言い方が気になり
「なぜそこまで判るんですか?」と周辺情報を全く漏らさないようにトボケて質問した。

すると…
「赤ん坊はいませんが電話ボックスの背後にある植え込み?垣根?の間という間から沢山の霊がこちらを窺ってます。ところが皆共通して穏やかな面持ちなので怨恨を遺した霊達ではない。その垣根のあたり一帯が言うなれば“霊道”のようになってる可能性があります。」と。

この回答に俺は「うわ、この人マジに見えてるわ」と確信し白状した。

「実はこの電話ボックスは斎場の麓にあります。背後の植え込みは斎場に向けて葬儀の車列が亡骸や遺骨とともに何千回何万回と往来している入路に沿ってる垣根です。」

実際にあったあの悲しい事故から約十年、更にそこから二十年以上経って二段階で忘れられない電話ボックスになってしまった。
「俺が微妙に一枚噛んじゃってる」長ーい月日をかけたちょっと怖い話。


おわり


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