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今年の上半期に見た映画の中で印象に残ってる作品10本

はじめに

noteの使い方などを把握するために、私が実験的に投稿したnoteです。

一つ注意しておくと、著者の映画嗜好が反映されており俗に「シネフィル」と呼ばれる映画好きの人たちが好む作品が多く選出されており、そこはご了承ください。

第三世代

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1979年西ドイツ 監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

1970年代の西ドイツ映画界で起こった一大ムーブメント「ニュー・ジャーマン・シネマ」の中心となった監督で、マーティン・スコセッシなどの有名な監督に大きな影響を与えたが47歳で亡くなったライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品の一つ。哲学性、緊迫感や真剣身の無さと正反対のシリアスさ、悲劇性などの雑多な要素を猥雑な形で一本にまとめあげられたような作品。一回見ただけでは形容する事が出来ない複雑な形をした映画で、とてもインパクトがある。ファスビンダーの代表作である「マリア・ブラウンの結婚」や「ヴェロニカ・フォスのあこがれ」と同じような戦後ドイツの影を描いているのではないかと思ったが、その辺は個人個人違ってくると思うのでこの作品の事を他人と話し合って考察するのも面白いと思う。

確かレンタルDVDでこの作品は取り扱われていないが、現在U-NEXTで配信しているためそこで鑑賞する事が出来る。

アイヌモシリ

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2020年日本・アメリカ・中国 監督福永壮志

アメリカに渡って映画を学び、初監督作品「リベリアの白い血」で新人監督として高い評価を集めた福永壮志監督の次回作。伝統と現代の狭間で生きる現代アイヌの人々の生活感とそこにリンクした主人公の少年の成長を描いた作品でとても素晴らしかったです。キャスティングされているアイヌ側を現代のアイヌの人々が演じ、ドキュメンタリー的に撮影されたカメラも主人公の力強い眼差しなどの印象的に残るショットなどを捉えておりそこも魅力的だった。

インディーズの映画やマイノリティの人々を題材とした映画だと観客に受け入れづらい価値観・要素を出してくるものもありますが、本作は監督の手腕でそういったものはごく僅かで多くの人が受け入れやすい映画となっております。

本作は配信サイトなどで配信されておらず、公式サイトを見てもどの映画館でも上映が終わっているためまだ配信サイトなどで観れる機会は無いかなぁと思いますが前作の「リベリアの白い血」もamazonプライムで配信されているためインターネットで配信される日などが来ると思います。

僕の帰る場所

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2018年日本・ミャンマー 監督藤元明緒

東京国際映画祭でアジアの未来部門作品賞などを受賞した作品。日本で移民として生活を送るミャンマー人家族の物語で家族を支える事が出来ない父親と母親、ミャンマーで育った親と日本で生まれた子供に生じるジェネレーションギャップ、少年の成長などを一つにまとめて描いた映画で、ドキュメンタリー的に撮られたカメラによるリアリティもクオリティが高い。

アイヌモシリ同様にマイノリティとマジョリティの関係を問うといった観客の受け入れずらい要素が少ないため、インディーズ系映画を漁らない人間にもオススメできます。

海辺の彼女たち

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2020年日本・ベトナム 監督藤元明緒

「僕の帰る場所」の藤元明緒監督の次回作。日本に技能実習生として来たが、不法移民として働く事になったベトナム人女性三人が主人公の題材の通り前作のような価値観の受け入れやすさなどはまるでなく逃げ出しても地獄が続いていく感覚の世界で生きていく事を描いている。だがそこに快感などは無く自分の過ちと運に見放された事による苦しみや、日本で生きていくための金の重みなどをドキュメンタリー的なカメラで撮影されており彼女たちや三人が暮らす世界が全く虚構の世界とは思えない作りとなっている。

ただ、「僕の帰る場所」や「海辺の彼女たち」も配給会社などの方針でレンタル店への貸し出しや大手配信サイトでの配信はしない、だが自社サイトでの配信や自主上映会での作品貸し出しなどを展開していくと発言しているのでその機会があったら是非とも鑑賞してほしいです。

フィールズ・グッド・マン

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2020年アメリカ 監督アーサー・ジョーンズ

アメリカのコミック「ボーイズ・クラブ」の主人公として生み出されたキャラクター『ペペ』が、最初はインターネット・ミームになりやがて極右主義者らによって排外主義・人種差別などへのアイコンとして使われやがてアメリカ大統領選挙に利用されヘイトシンボルに認定、トランプ政権誕生の一因となり、『ペペ』のイメージ改善のために作者のマット・フューリーは立ち上がるしか無かった…というドキュメンタリー映画。

この映画で扱われるのは自分が生み出したキャラクターが多くの人々によって最悪の方向に動いていく、自分たちだけのものと思っていたモノがみんなのものになっていきその反発で過激化していく過程などが描かれておりその光景が昨今のスターウォーズなどのファン界隈を巡る問題などに共通点があり、とても他人事とは思えなかった。話題は2016年のアメリカ大統領選挙だけではなく、アメリカのインターネットサイト「4chan」やTwitterなども題材になっており日本のファン界隈やインターネットなどにも共通の問題を見つける事が出来る映画で、オススメできます。

ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー

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2019年アメリカ 監督オリヴィア・ワイルド

3年間の高校生活で同級生とパーティーにも行かず、勉強ばかりして輝かしい進路を勝ち取ったモリーとエイミー。しかし、卒業式前日に遊んでいたばかりの同級生たちも輝かしい進路を勝ち取っておりそれを知った二人は高校生活を取り戻そうと卒業前夜のパーティーに参加する…

アメリカで批評家・観客共に高く評価され、シネフィルを自任するオバマ前大統領の2019年のベスト映画にも選ばれた本作。青春コメディ映画らしい主役二人の掛け合いの面白さ、それでいて登場人物一人一人から伺えるしっかりしたキャラクター造形、「それが伏線だったの!?」と思える回収の仕方など高評価される理由を理解する事が出来る映画で、俗にいうアート系映画やシネフィル映画が多い本noteの中でも映画に興味の無い方でもオススメする事が出来る数少ない映画。

本作は既にNetflixやAmazonプライムなどの配信サイトにも配信されております。

私は確信する

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2018年フランス 監督アントワーヌ・ランボー

2000年のフランスで起きたスザンヌ・ヴィギエの失踪事件から始まった夫による殺害疑惑と一連の裁判の流れを基にしたフィクション映画で、関わっている人間の無実を証明しようとする主人公のノラが事件に入れ込んでいって正義感と義憤にかられてズレていく一連の描写はSNSなどでも頻繁に良く見るもので、とても現実味があるものに仕上がっていた。

登場人物たちの人間関係などを巧みな編集で描いており、見ごたえがある。終盤の『裁判とは何のためにあるのか』などを観客に説く展開は非常に説得力があり、作品のテーマにも沿っているため本当に面白かった。

本作はAmazonプライムビデオやU-NEXTなどで配信されており、それらのサイトから視聴する事が可能です

私たちの青春、台湾

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2018年台湾 監督フー・ユー

2014年の台湾で起きた「ひまわり運動」の当事者である社会運動家チェン・ウェイティンと中国からの留学生ツァイ・ボーイーの二人を監督のフー・ユーの視点で描く政治ドキュメンタリー映画。

「ひまわり運動」の中で自分たちが抗議している政府と似通った行動を取っていく運動の当事者たち、投票という行動を神聖視している中国人の幻滅、若者の政治へのファッション的な感覚、台湾は台湾でありたいという台湾人の意思などとにかく熱の入った政治ドキュメンタリーであり詰め込まれた情報量があまりにも多いが、チェン・ウェイティンとツァイ・ボーイーが辿った結末は見逃す事が出来ないものになっている。また、監督のフー・ユーが二人に期待していったものがズレていく光景もまた、日本で暮らす我々にもそれと似た光景を見ているのではないか?と思う映画でした。

本作は、まだネット配信サイトなどに配信されていないが時期を待てば配信されるのではないかと思います。

オルフェ

オルフェ

1950年フランス 監督ジャン・コクトー

ギリシャ神話のオルフェウスの冥府下りを題材として舞台を1950年代のパリに移し替えているが、本作の最大の改変ポイントはオルフェウスに当たる詩人の主人公「オルフェ」と死神の女性のラブストーリーとなっている。

オルフェの劇中に出てくるアナログな異世界描写が2019年のクリストファー・ノーランが監督した映画「テネット」のある劇中描写に連なっており、ゴダール作品に出てくる同じような詩の描写など現代の映画に繋がる1950年代の映画の要素に感動するかと思いきや劇中に出てくる冥府が如何にも1950年代の人間が考えたような異世界と思える描写やシュールな光景になっている振り返ってはいけないの光景と現在の視点で見たら笑ってしまう光景もある。

だが、本作の最大の魅力であるオルフェと死神の『人間と人間ではない者のラブストーリー』は決して色褪せる事が無いものになっており、初めて鑑賞した時に感動を覚えました。

本作は、Amazonプライムなどで配信されているが生憎画質が芳しくないパブリックドメイン版しか配信されておらず以前、AmazonプライムやU-NEXTで配信されていたデジタル修復版なら本作の綺麗な映像美を体験できるのですがどのサイトにも現在配信されていないです。

ヒッチャー

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1986年アメリカ 監督ロバート・ハーモン

アメリカの砂漠地帯で車の長距離陸送を行っていたジム・ハルジーは一人のヒッチハイカーを拾う。男はジョン・ライダーと名乗りナイフを突きつけて自分を脅迫、前に自分を拾った運転手を殺害した事を告げる。ジムの逃避行が始まった――

DCコミックのヒーロー「バットマン」とヴィランの「ジョーカー」の関係性を思わせる主人公ジムと彼を執拗に追い続ける悪役「ジョン・ライダー」の複雑な関係性が見事で、終盤まで観ると二人のブロマンス的なものまで感じ取れてしまう。SF映画の名作「ブレードランナー」で名演を演じたルドガー・ハウアーのカリスマ性などが本作でも発揮されておりルドガー・ハウアーのファンなら見るべき作品の一つです。反面、作品に出てくるヒロインの描写が一種の使い捨てみたいな扱いであるためそこは注意が必要。

本作品はまだ配信サイトなどで配信されておりませんが時が来れば配信される日が来るとは思います

終わりに

本noteを完成させる事に熱量を注いだため、書き終わってみると作品ごとにテキスト量が違って自分でも作品ごとの熱量がそれぞれ違くないかな?と見られるかもしれませんがどの映画も自分の記憶の中に印象に残っている映画で、皆さんに観てほしいと思っている映画だと思っています。

アイヌモシリやヒッチャーといったまだ配信されていない作品や、僕の帰る場所や海辺の彼女たちといった視聴する事が難しい作品も含まれておりますが本noteを観てこれらの映画を観たい、鑑賞したいと思っていただけたなら幸いです。


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