イーストワードのストーリー考察

 最後までプレイしてもストーリーに考察の余地があり、またネットにあるのストーリー考察にもあまり納得ができなかったので、備忘録ついでにイースワードの私的考察を書きなぐろうと思います。勿論ネタバレ注意です。

 最初にタイトルやカロン内の壁画に描かれているような最古の歴史を時系列順に纏めます。

人類繁栄期

異常気象による大規模な災害(おそらく海面の急激な上昇・下降など)が定期的に起こるようになり、人類が衰退し始める

人類はそれに対抗するための技術が模索され始める(ロボット、人間培養器など)

幾年にもわたって大量の人間工場を動かすことができるほどの桁違いのエネルギーを持つ”マザー”の発見。また異常気象を未然に防ぐことのできるが同時に人をも蝕む”タタリ”を制御できる”珊”の発見。そしてエネルギーとタタリを運ぶ線路網と列車によって「人が生活可能な地域を守るため、そこで異常気象が起きそうになると未然に防ぐためにタタリを解放し、それによってそこにあった共同体は滅ぶものの、また新たに人間培養器によって人間を製造し、新しい共同体を再度作る」という文明再生のルーチンが完成する。しかしこのままでは共同体の破滅自体は避けられない為、それをいつか克服する為に、タタリによるリセット毎に共同体の情報を”収穫”し、そこから得た学びによって次に生まれる人類を改良をしていく。こうしてグリーンバーグを始めとした滅亡と再生を繰り返す共同体が各地に生まれた

 そして、そんな共同体の一つであり、世界中の頭脳が集められた都市”未来”では、収穫による改良以外の共同体存続の方法がいくつか見出されました。
 まず、ソロモンは時間と記憶の凍結保存という技術を開発し、タタリ解放前日の”未来”近辺の空間ごと凍結させて、ループさせることで共同体を存続させました。ちょうどプレイヤーが冷蔵庫に記憶を保存し、好きな時に取り出して冒険を再開していたように、凍てつく地に住む未来の住人も記憶だけは変わらず引き継がれ、疑似的に不老不死の存在として研究や日常生活を変わらず営むことができたのです。
 そしてそういう研究者にとって理想的な環境である未来にて、アルヴァの祖父がタタリの研究の末、巨大な送風機によってタタリが解放されても共同体に達する前に退けることができるシステムを開発しました。彼は未来を脱出し、ダム城に居を構え、技術を活かして共同体存続の為の防衛装置、風神を備え付けました。
 また同様にレヴィは日光のない地下でも育つクラブアップルという作物を発明し、(誰によるものかは不明ですが)その技術が外に持ち出され、タタリによる被害を受けづらい地下にポットクロックという共同体が生まれました。
 そんな有望な技術を次々に生み出した未来ですが、欠陥がありました。永遠の塔前の冷蔵庫が語るように、いくら極寒の地であろうとも保存方法が適切でなければ記憶は劣化するのです。こうして未来の住人は徐々に記憶の引継ぎに支障をきたすようになりました。こうした状況に気付いたソロモンは時間と記憶の凍結保存による共同体存続という方法に見切りをつけ、収穫による改良のサイクルを人為的に早めることで自分の手で新人類(超人)を生み出す方法に切り替えます(ソロモンの目的は、世界が暗闇に包まれたときみんなを照らす光となること、つまり自分が世界の救世主となることであり、その為には誰が死のうが関係なく、また自分以外が救世主となることは看過できないのです)。そしてソロモンは珊とマザーを攫い、タタリの制御と生命の創造という二つの力を手中に治めました。
 しかしその試みに気が付いたのがパム船長らであり、彼らは力を合わせてソロモンからマザー(珊)を奪い、彼女を列車に乗せて、時間地場を振り切り、未来から脱出させます(そしてそれを魔王からの姫の救出というストーリーになぞらえて大地の子というゲームにします)。それにパム船長らが同行できなかったのは恐らくすでに未来の時間が止まってからは長い年月が経過しており、時間磁場から出ると消えてしまうからでしょう。
 それに怒り狂ったソロモンは、自らのクローンを生み出し、マザー(珊)の捜索、収穫のサイクルの加速という使命を課して、未来の外へ送り出します(本人が行けなかった理由はパム船長と同じです)。そして二度と邪魔されないように自らの死を偽装し、やがて未来は記憶の劣化が進み、完全に同じ一日を繰り返すようになりました(パム船長らも対策を講じ、仲間の一人トーマスを時間磁場の影響が少ない時の島の僻地に置き、記憶の劣化を防ごうとしました)

 こうして月日は流れ、或る時珊を乗せた列車がポットクロック島にて脱線、ジョンがそれを見つけるというオープニング映像につながります。後の流れは本編の通りです。

以下纏まってない蛇足です。

・グリーンバーグについて
 この地にある人間工場では文明レベルが未発達なこと、それにも関わらずタタリが解放されることが語られていました。ここからタタリの解放は本来文明レベルが十分に発達するほどのスパンで行われることと、ソロモンが収穫による改良のサイクルを人為的に早めることで自らの手で新人類(超人)を生み出そうとしていることを推察しました(きっかけは珊ですが、ソロモンのラジカセがあり、何かしら行動を起こしたことが示唆されていること、以降もクローンソロモンがタタリを起こそうとすることから、グリーンバーグの件はソロモンの計画通りと判断)。ソロモンが「文明再生のルーチン」自体を発明したという考察をしている人もいるのですが、カロンや人間工場の建築様式、技術があまりにも異質であり、オーパーツ然としている為、それはないと判断しました(そもそもソロモンには人間工場すら動かせないしね)

・クローンソロモンについて
 彼は「世界が暗闇に包まれたときみんなを照らす光となること、つまり自分が世界の救世主となることが目的であり、その為には誰が死のうが関係なく、また自分以外が救世主となることは看過できない」という性格が災いし、未来にいるオリジナルソロモンに反抗し、マザーに頼らず自らの力で収穫のサイクルを早め、「”クローンソロモンが”世界の救世主となる」ことに固執し、風神を止めるなどの行為に及びますが、結局どれも実を結ばず青年期以降はウキウッドでクソ映画を貪るだけの怠惰な生涯を送ります。
 ちなみにsteamのトレーディングカードには主人公と題されたHEROという単語と共にソロモンが描かれたカードがあります。本人としては世界を救うヒーローのつもりなんでしょう。

・マザー、珊について
パム船長の昔話にでてくる二人の少女は彼女らのことを指すと思われますが、彼らはマザーの方の人格しか知らないような反応をしますし、そもそも珊とマザーは同一の存在らしく、謎が多いです。マザーは恐らく人工的な存在ではなく、超自然的な存在ですが、何故か人類存続の為に力を使っているようです。しかしその割には人類を恨み、人類の滅亡と世界の浄化を望んでいます。各地にある珊の新たな能力を獲得できる遺跡の存在を見るに、かつての人類に力を奪われ、強制的に働かされていたのかもしれません。ソロモンに与したのは、愚かな人類に飽き飽きし、早く美しいこの世界にふさわしい新人類、超人を作りたかったからか、或いは人類を完全に滅亡させる為にソロモンを騙して利用していたからかのどちらかでしょう(言動から察するに後者の可能性は低い気がします)。
 またマザーやカロン周りのデザインにはテレビのモチーフが多様されており、冷蔵庫によるとテレビの砂嵐の向こうには別の世界が見えるらしいです。カロン内部にある裏世界のような場所ではテレビを通じてかつての仲間と交わした会話が聞こえてきましたが、マザーはテレビを通して我々の世界に干渉しているのかもしれません。珊が不在であるにも関わらずマザーの思念体が登場した「旧市街でのソロモンとの会話イベント」と「アルヴァの部屋でのイザベルとの会話イベント」ではそれぞれテレビ(モニター)があります。
 ちなみにsteamのトレーディングカードには宇宙の始まりと題された珊が描かれたカードがあります。やはり超自然的存在らしい。

・アルヴァについて
 先ほどパム船長の昔話に出てきた二人の少女は珊とマザーであると書きましたが、或いはマザー(珊)とアルヴァが二人の少女なのかもしれません。この場合災害を制御する力を持つ方がアルヴァでしょう。つまりソロモンはアルヴァとマザーを攫い、パム船長らがそれを奪還し、マザーの方は列車によって、アルヴァは”アルヴァの祖父”とともにロケットによって、未来から脱出したのかもしれません。そういえば未来の住人は時間磁場の外に出れないと書きましたが、それを踏まえると”アルヴァの祖父”は未来の誰かのクローンとなります。銭屋のリーが彼の実子らしいので顔の似ているガイあたりでしょうか。研究もしていたようですし。
 イザベルはアルヴァの護衛として工場で造られた存在の様です。おそらく一緒に脱出したのでしょう。
 マザーは人間工場を動かす鍵のような役目も持っていましたが、アルヴァも同様にカロンを動かす鍵のような役目を持っているのかもしれません(イザベル戦のあとアルヴァの思念体からカロンと融合したことが語られます)。なのでマザーやソロモンはイザベルを未来、そして永遠の塔に誘うような行動や言動をしていたのかもしれません。
 以上の考察は、上記に描いた蛇足に至るまでの考察より後に考えたものなのですが、こちらの方がより筋が通っている気もします。しかし書き直すのが面倒くさいので読み直す人は各々で珊をアルヴァに置き換えてください。

・ジョンについて
 イザベルはアルヴァの護衛として工場で造られた存在なら、同様にマザーの護衛として工場で造られた存在がいてもおかしくありません。ポットクロックで脱線した珊を乗せた列車、その中にジョンも乗せられていて、珊より先に目覚め、いち早くポットクロック島の一員として暮らしていたのかもしれません(ポットクロック島の住人によるといつも時間ぴったりに来るようで、どこか人間離れした何かを思わせます)。
 ちなみにsteamのトレーディングカードにはケダモノと題されたCACODAEMON(悪しき霊)という単語と共にジョンが描かれたカードがあります。全カードの中で一番謎です。イザベルはアルヴァに近づいただけの犬を真っ二つにするほどの人物だったらしいですが、やはりジョンも…?

・エピローグについて
 珊に似た女の子が水没した都市(未来のような建築)を背景に駅で電車を待っているとジョンに出会うというエピローグでした。
 都市が水没してるのは、本編ラストで珊とマザーが対消滅したからか、はたまた別の理由によるものなのかは分かりませんが、タタリによる異常気象の防止が行われず、結果海面上昇等で大きく地形が変化した為のようです。
 マザーはソロモン曰く定命の人間とは違う不滅の存在のようなので、きっとまた復活したのでしょう。言動から垣間見える性格はどこか珊とマザーが一体化した印象を覚えます。
 ジョンは変わってないように見えますが、先ほどの工場生まれの説を考えると、このエピローグは本編よりうんと遠い未来であり、ジョンは何世代か後のジョンである可能性もあります(ウィリアムのエピローグをジョンのそれと別に作ったのは二つのエピローグの時間軸が大きく違っているからなのかもしれません)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?