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MTGアリーナ | ゲームエコノミー配信翻訳要約まとめ

現地時間3月17日に公式生放送Weekly MTGにてMTGアリーナのゲーム内経済システムについてのトークが行われた。この記事では生放送に至った経緯や配信で語られた内容やQ&Aを独自に翻訳したものを書いていく。

ゲームエコノミー配信に至るまでの経緯

MTGアリーナには多くの他社DCGゲームには存在する「還元/分解/砕く」と言った「不要なカードを消費し、新たなカードを作る」機能が存在しない。そのためプレイヤーからはゲームエコノミー(公式は『経済システム』と翻訳)についての不満や議論はゲーム配信当初から何度も上がっていた。だが今までに至って開発運営は指摘に対し一切反応することはなく、プレイヤーからするとだんまりを決め込んだ姿勢を取っているように見受けられた。

ゲームエコノミーの問題
・「複数のデッキを組むためのハードルが高すぎる」
・「ワイルドカードを売ってほしい」
・「ナーフしたカードは補填するべきである」
・「ミスティカルアーカイブの元コモンはなぜレアWCを消費するのか」
・「最大4枚しか使用できないのにセット別で5枚以降のカードが入手できるのはおかしい」
等々その他様々な意見が存在するが、とどのつまり「ワイルドカードが足りない」問題に行き着く。

【4枚で十分ですよ】

時は進み、2021年7月末に『Jumpstart: Historic Horizons』が発表された。モダンホライゾン1&2やデジタルオリジナルカードを含む約370枚のアリーナ未実装のカードがヒストリックに投入される形となる。

いわゆるJumpstart形式で実装された『Jumpstart: Historic Horizons』では特定のパックの販売は行われず、実装されたカードの入手にはわだかまりがあった。例としてヒストリックで《歴戦の紅蓮術士》4枚をデッキに採用するとなると無作為に提示される46種あるテーマパックの中から紅蓮術士が収録されているパックを運よく当てるか、ワイルドカードを4枚消費するしかない。必然的に「ワイルドカード足りない」問題がまた一度話題に上がったのである。

当時のHistoric Horizonsの紹介を目的とした公式配信にて視聴者から今後のゲームエコノミーについての質問が上がった。受け答えを担当していたWotCコミュニティマネージャーのBlake Rasmussen氏は今回の配信ではエコノミーについて話せるスタッフは出演していないことを理由に「ゲームエコノミーや今後の計画についてはいずれ配信内で話すかもしれない」と答えた。

それから何事も無いように4ヵ月の時が流れ、12月冒頭に新たな構築フォーマット『アルケミー』の実装が発表された。何度も浮き彫りになる「ワイルドカード足りない」問題に対し何も発表が無い中、公式の発表配信ではゲームエコノミーについての質問がまた一度上がった。Rasmussen氏は4ヵ月前の配信と同様にエコノミーについて話せるスタッフが出演していないことを述べ「我々はその話題について話す義務があると認識している」と答えた。

延期に延期を重ねた「ゲームエコノミーディスカッション配信」。それが6ヵ月遅れでついに現地時間3月17日に開催された形となる。本題にたどり着くまで長くなってしまったが、配信で触れられたことを翻訳要約した内容を書き留めておきたい。

MTGアリーナエグゼクティブ・プロデューサーのChris Kiritz氏とWotCコミュニティマネージャーのBlake Rasmussen氏

MTGアリーナのエコノミー問題について

MTGアリーナ実装時からのゲームモデルは「始めはスターターデッキなどを使用し時間をかけてリソースを集め、遊びたいデッキをじっくりと構築する」と言った遊び方を基にして作られているとKiritz氏は語る。そのため「セットの全てのカードを手に入れたい」プレイヤーや「複数のデッキを構築したい」プレイヤーなどには合わないモデルであり、課題として認識していると説明がされた。またカードを集めるために重要な要素であるリミテッドを遊ばないプレイヤーに負担がある事や、一部プレイヤーには貴重なリソースであるワイルドカードが使いづらく感じ、いわゆる「ラストエリクサー症候群」が発生していることを認知していると明かした。

解決策について

続けて配信ではKiritz氏は課題に向けて近々中に実装される解決策を述べた。「セットの全てのカードを手に入れたい」コンプリート勢のプレイヤーが直面する問題はセットを開封するにつれレアカードが埋まっても神話レアは埋まらないと言った点だ。その問題を解決すべく『ニューカペナの街角』実装周りで神話レアが確定されたパックを販売予定だと明かした。
・値段は1300ゴールド
・そのセットの神話レアか、レアか神話レアのワイルドカードか出る。
・『神河:輝ける世界』以降のセットで実験的に実装する。

一方で「素早くデッキを構築したい」プレイヤーのニーズについてが述べられた。上記の通りゆっくりリソースやカードを組み立てるゲームプランを想定されたモデルを基としているアリーナでは、例えば新セット実装当日にトップメタのデッキを遊びたいプレイヤーに対しては向いておらず、ニーズのズレが発生している。そのような手っ取り早くデッキを構築したいプレイヤーに向け、ワイルドカードのバンドルの販売を予定していると明かした。
・12枚のレア、4枚の神話ワイルドカードのバンドル。
・$49.99、ジェムでは買えず、課金のみで入手可能。

長期的な課題としてリミテッドを遊ばないプレイヤーについて触れられた。MTGアリーナではドラフトを遊ぶにつれジェムやカードが入手できるが、構築戦のみを遊ぶプレイヤーはこの恩恵を受けられないためコレクションを集めるスピードが遅いとのこと。そのため4月5月を目安に構築戦の報酬をドラフトで入手できるものに近づける予定だという。具体的には構築戦経由でもジェムやブースターを入手できる様だ。

またもう一つの長期的課題としてワイルドカードを使いづらく感じているプレイヤーについても触れられた。こちらの解決策としてはワイルドカードを消費する前に何かしらの形で「テストプレイ」を出来る機能を計画していることが明かされた。こちらは具体的な実装の形は定まっていないが、Bot戦や1人回し、あるいはカードを「借りる」などと言ったものを考えているとのこと。

何故カードを『砕け』ないのか

他社DCGゲームには存在する「不要なカードを消費し、新たなカードを作る」システムがなぜアリーナに搭載されていないかが配信中触れられた。Kiritz氏曰く、MTGでは毎セットリリース時に過去には使われなかったカードが突然プレイアブルになったりするため「当時は要らなかったため砕いたが、今になって必要になった」時に発生するであろう不快感を防止するためであると述べられた。「砕く」システムの代理としてMTGアリーナに実装されているのがワイルドカードであり、開封の際にたまるワイルドカード進行がこのゲームの「砕く」なのであると語った。

新フォーマットについて

去年の12月にデジタルプレイヤーのニーズを埋めるために「アルケミー」フォーマットが開設された。実装に付きデジタルフォーマットのアルケミー、デジタルのローテーションしないフォーマットのヒストリック、テーブルトップを再現したスタンダードの3つのフォーマットが用意された形になった。これに加え、Kiritz氏はテーブルトップのみのカードを使用したローテーションがない新フォーマットを1~2ヶ月後に実装することが予定されていることを明かした。こちらのフォーマットはまだ名前が無く、パイオニアではないが、いずれはパイオニアへの架け橋となる物だと語った。

視聴者Q&Aピックアップ

Q -アルケミーのカードを集めやすくするため、アルケミーブースターを使ったドラフトの実装は予定されているか?
A -ドラフトはテーブルトップ版にできるだけ近づけるようにしているため、今現在そのような予定はないが、可能性としてはなくはない。

Q -「ワイルドカードバンドル」の$50の値段はどうやって決めたか?
A -シンプルな回答として似たような数のパックを開封した値段に合わせた結果だ。

Q -同じアートを持った別セットの再録カードが合わせて4枚以上入手できる仕様に付き、なぜそれらを自動的に「砕いて」くれないのですか?
A -技術的な問題があるためだ。が、今現在実装しようとしている別機能(設定した基本土地のアートを自動的にセットする類の物)の副産物として解決策を見だせるかもしれない。

Q -カードを「砕く」ことはできないことは理解しましたが、コモンやアンコモンのワイルドカードをレア・神話レアにアップグレードできるようにはなりませんか?
A -MTGアリーナのシステムを作るにつれ、デッキ構築の際アンコモンのワイルドカードが足りないという状況を避けたかった為にコモン・アンコモンのワイルドカードを必要以上に配布する形式を取った。そのためそのような予定はない。

Q -「神話レア確定パック」では同カードの5枚目以降入手防止処置は付いてますか?そうであるなら、マスタリー報酬でランダムに入手できる神話レアに5枚目以降入手防止処置を付けられるのではないでしょうか?
A -「神話レア確定パック」には5枚目以降入手防止は付いている。マスタリーでの防止については可能だが、実装についてはチームと検討させてもらう。

Q -報酬の大部分が勝利することに繋がっているため、仕様が初心者には厳しいと感じています。プレイヤーが勝利しなくても報酬を貰える形にはなりませんか?
A -イベントに関しては勝利することを強調されていることは事実だ。新規プレイヤー向けに勝利だけではなく、よりゲームのアクションに対し報酬を与えるシステムを審議している。いずれ触れることになる課題だ。

Q -ヒストリック視点でナーフされたカードに対し補填がほしいのですが。
A -バランス調整に対し補填しない理由として開発デザイナー側で調整したカードにコストが掛かるか掛からないかを考えないようにするために必要である。またバランス調整をしたアルケミーのカードがローテーション落ちした時、ヒストリックではどうするかの処置はまだ未定だ。元の(紙に書かれた)効果に戻すかもしれないが、今現在検討している。

Q -「テストプレイ」機能に付き、フレンド同士でデッキ共有等の機能を実装する予定はありますか?
A -これについては過去に審議したことがあり、とても興味がある話題だ。いずれ実装したい機能である。

Q -追加のヒストリックアンソロジーは導入されますか?
A -される。

Q -アルケミーの環境をより早く改変したいのならば、禁止改訂とバランス調整のスピードを上げるべきではないでしょうか?
A -アルケミーでは禁止カードを出さずにバランス調整を施した方針を取っている。バランス調整にはデータとテスト等の実装が必要であり、バランスする前にデータを観測するなど時間がかかる物である。今現在は3-4週間のサイクルで調整する予定であり、またイベントの時期で調整することも配慮に入れている。

Q -今現在ワイルドカードの入手率の改変の予定はありますか?
A -現在はない。

Q -複数のデッキを構築するハードルとしてレアの土地の入手にあります。これらを配布する可能性などはありますか?
A -効果として必要ではないが基盤として機能する土地が必要なことが課題としてあることは理解している。現在その(配布するような)予定はないが、審議する余地はある。

Q -ICRに5枚目以降入手防止処置は施されますか?
A -答えは「多分」だ。実装に技術的な課題がある。

Q -リマスターセットはもっと実装されますか?
A -現在予定はしていない。

Q -宝箱/Vault 報酬を改善する予定はありますか?
A -我々は宝箱は無料のボーナスとして見ているのでその予定はない。

Q -ワイルドカードを他のリソース(ドラフト参加費等)に変換できるような機能は実装できませんか?
A -そのような検討はしたことない。

Q -ブロールとヒストリックブロールにランキング(ラダー)が付いていないのはなぜですか?
A -ブロールには競技的プレッシャーをつけたくないためだ。またそのためにはマッチングの仕様を変える必要がある。

Q -ワイルドカードやパックを持て余しているリミテッド専用プレイヤー向けの報酬システムなどは考えていますか?
A -良い質問だ。全てのプレイヤーがコレクションを欲しているわけではなく、ファントムドラフトや別の報酬等の可能性があるが、今は特に予定はない。

Q -実物の紙のパックにアリーナのコードを封入しないのはなぜですか?
A -プレリリースパックには入れている。紙のプレイヤー人口はアリーナとはスケールが違い、多くの紙のプレイヤーには不要な物なため入れていない。

Q -ヒストリックではバランス調整のみになり、禁止はもうしないのでしょうか?またヒストリックのカードをアルケミーの様にバフする予定はありますか?
A -ヒストリックでもまだカードを禁止する可能性は高い。例えば《稲妻》はバランス調整が不可能だ。(既に調整されたものが《稲妻の一撃》である)そのため一部カードはバランス調整より禁止の処置を取ると思われる。バフについてはアルケミーと同じ理由でその可能性がある。

Q -リミテッド上で開封したパックにワイルドカード入手進行はもらえませんか?
A -理論上可能だが、その予定はない。

Q -プレリリースでもらえるコードをシールド参加トークンに戻してほしいのですが。
A -シールドは常設ではないのでプレリリースパックを開封した時にコードをもう使えないという状況を回避するため6パックに移行したのだ。

最後に

配信開始から1時間が経ちQ&Aの時間は終了した。締めにRasmussen氏は今後もゲームエコノミーについての話を続けることを約束し、配信を終えた。

全体的な配信の視聴者コメントやTwitterやReddit等の反応としては肯定的とは言い難い物であった。神話レアパックや「テスト機能」などの良いユーザー体験に貢献されるような告知は好く受け止められたようだが、ワイルドカードバンドルの$50の値段に対しては批評的な意見が多くみられ、実際その$50でジェムを買い、普通のブースターパックを購入したほうがまだましだとの計算も掲示されている

配信は初心者から古参のプレイヤーまでの幅広いプレイヤー人口に向けられた内容であり、MTGの経験豊富なプレイヤーが多く集まるSNSに対し期待されていたエコノミーの改善の話とは遠く離れていたようである。実際に最大の問題であるワイルドカードの入手率は今現在と変わらず、ある程度の課金の額を払わない限りプレイヤーは今後もワイルドカード不足と向き合うことを強いられそうだ。

ソース:Weekly MTG | The MTG Arena Economy Stream

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