見出し画像

海外コミュニティにより『ブロール』のマッチメイキングに関わるカードの『ウェイト』点数が判明。MTGアリーナによる最重カードは《天頂の閃光》

海外コミュニティが、MTGアリーナ上のフォーマット『ブロール』(主にヒストリック・ブロール)におけるデッキの『ウェイト(重さ)』を測る方法を発見した。デッキウェイトはゲームにどのような対戦相手やデッキとマッチングされるかを決める大きな要素として、その発見はコミュニティの関心を引いている。

『ブロール』とはカジュアル変種ルールの1つであり、統率者戦と近いルールを持つ。現在多人数戦が実装されていないMTGアリーナ上ではライフ25点、100枚シングルトンで戦う1対1の統率者戦といったプレイ感に近い。

カードの『ウェイト/重み付け』の存在は幾度か公式的にもほのめかされており、ランク戦が実装されていないブロールにおける対戦相手とのマッチングを決める重要な要素とされる。ウェイトが近いデッキ同士が対戦を行うマッチングが行われ、デッキのウェイトが高くなるほど強力なデッキとマッチングされる、といった仕様だ。リソースが少ない初心者が組んだデッキと最適化した強力なデッキがマッチングしないように、また強力なデッキ同士がゲーム行うことにより全体に影響を及ぼす禁止カードを出しづらくする効果があるとされる。言い換えれば統率者戦における『デッキパワーレベル』と通じるところがあるかもしれない。

ただし今まではウェイトはゲーム上では確認しようがなく、コミュニティ内では「こういった統率者は強いとされ、強いデッキとマッチングされやすい。」(通称Hell queue(地獄列))という傾向を読み取ることはあれど、実際にはどういう計算がされているかは不明であった。今回その原因となりうる要素や、システム上ウェイトはどうやって測られているのかが判明したところだ。

ことの発端はMTGアリーナのRedditにてlieyanqzu氏が投稿した『私のデッキが弱すぎて?ブロール禁止されたのだけど。』のスレッドから始まる。lieyanqzu氏によると以前は使用できた《最上の標本、ロアレスク》(MTGアリーナのオリジナルカード)を統率者としたデッキが突然ブロールにて使用できなくなってしまったという。

デッキ内容は《宝物探し》1枚、《見事な再生》1枚、《ヴィトゥ=ガジーの枝》1枚、《島》48枚、《森》48枚と言ったかなり尖った構築である。コンセプトとしては《宝物探し》で基本土地を大量に手札に加え、その後土地を墓地に捨て、《見事な再生》で捨てた土地を戦場に戻し、ロアレスクの能力でランダムに巨大クリーチャーを展開するといったコンボデッキである。今現在このデッキでヒストリックブロールを遊ぼうとすると「無効なデッキ」とエラーが表示され、遊べない状態にある。

次にlieyanqzu氏は問題の原因を見つけるためにMTGアリーナのゲームログを確認した。エラーの際に公式サポートに原因究明やバグの報告をするときに使われる自分のゲームログはユーザーも確認でき、Windowsユーザーなら 「C:\Users\{Windowsユーザー名}\AppData\LocalLow\Wizards Of The Coast\MTGA」に 「player.log」という名前で保存されている。lieyanqzu氏がログを確認したところ、

errorType: DeckWeightTooLow, DeckWeight: -333, MinDeckWeight: 0

『エラータイプ:低すぎるデッキウェイト、デッキウェイト: -333、 最小デッキウェイト: 0』と読めるエラーがログに残されていた。初めて『ウェイト』の存在が確認された瞬間である。

投稿後、ユーザーによって検証が開始された。《最上の標本、ロアレスク》と《森》を99枚入れたデッキのエラーは『DeckWeight: -360』。《最上の標本、ロアレスク》+《時間のねじれ》+《森》98枚で『DeckWeight: -333』、さらに《洗い落とし》を加えると『DeckWeight: -324』とログが示された。エラーログからカードごとのウェイトが引き算で割り出すことが可能になったのである。エラーがマイナスの数値を出す理由としては、勝率が低いと思われる《最上の標本、ロアレスク》がより「優しい」デッキとマッチアップするよう統率者として指定した場合、デッキ全体のウェイトを下げるためにマイナスのウェイトが設定されていると考えられる。

その後検証は加速し、瞬く間に現在MTGアリーナで実装されている全てのカードのウェイトが判明した。その直後に有志による『デッキウェイト計算機』なるものも登場している。

I made a calculator for the MMR (weight) of brawl decks

筆者がよく回す《策略の龍、アルカデス》のデッキウェイトは1284点であった。


またウェイトの解明により注目すべき点がいくつか判明している。
・カードには99枚のメインデッキ採用時のウェイトと、統率者に指定した時のウェイトが設定されていること。例としてHell queueに登場する《ドミナリアの英雄、テフェリー》の統率者としてのウェイトは単体で最大級の1800点であるが、メインデッキに入っている場合、ウェイトは45点に下がる。
・デッキウェイトが2000点を超えるといわゆるHell queue帯判定となる模様であること。
・”大体”の起動型能力を持たないマナを生むだけの土地のウェイトは0点であるが、何かしら効果がついているとやや重めの点数がつけられること。基本土地、占術ランド、フェッチランド等のウェイトは0点であるが、《ギャレンブリグ城》のウェイトは45点で、《魂の洞窟》のウェイトは36点である。
・多くの除去カードは重めのウェイトの45点である。
・メインデッキ採用時TOP2の”重い”カードは180点の《ティボルトの計略》216点の《天頂の閃光》である。
、といったものが発見された。

メインデッキ最重

データ全体を見るとまずカードのウェイトの点数付けはカード同士のコンボやデッキ全体のシナジーを考慮していないように見え、純粋に一枚一枚個別で勝率などから判断した表面のみを汲み取った点数付けなのだと推測されている。例えば《天頂の閃光》の点数がなぜ異様に高いかと考えると、《天頂の閃光》をフィニッシャーとしたデッキはウェイトが低いサイクリングカードを詰めこむ構築を取る傾向があり、例えば初心者が組んだバラバラなコモン・アンコモンを積み込んだウェイトが低い別のデッキとマッチングしないための処置だと考えると納得がいく。

一方、点数の判明は悪用に繋がるのではないかという声も上がっている。例として《初祖スリヴァー》を統率者としたデッキは、一見スリヴァーのデッキであると思われるが、実際にはスリヴァーを全く採用していない5Cグッドスタッフであることがしばしばある。《初祖スリヴァー》の統率者としてのウェイトは360点と5色統率者としては軽めであり、マッチメイキングのシステムを悪用しているのではないかとの意見がある。

また点数付け自体にもなぜその点数がついているか説明がつかない物も多いようだ。中でも度々禁止改訂で話題に上がる《パラドックス装置》の点数は異様に低い9点であったり、重めの45点の《神の怒り》に対しほとんど同じ効果の《審判の日》は18点であったり、特定のデッキにしか入らないカードが比較的重い点数がつけられていたりと点数付けに納得がいかないといった意見も多くある。

最後にウェイトが高いからと言って必ずしもそのデッキが強いとは限らないようだ。単純計算ではデッキの土地が少なければ少ないほどウェイトは上がるが、土地事故という別の問題が発生する。あくまで「大雑把に同じくらいのパワー」をマッチングさせるシステムだと念頭に置いておきたい。またプレイヤーによってはウェイトを意図的に下げたのに当たるデッキが変わらないといった声も上がっているため、ウェイトとは別の複数のシステムも働いているのではないかという推測も上がっているようだ。

アリーナが考える点数上『最強デッキ』 6561点。土地がほとんど入っておらず、まず回らない

マッチメイキングのために設定された隠されたパラメーターであるウェイトが力業で解明された今、「パンドラの箱が開けられた」と嘆くプレイヤーもいる一方、「適当に振られたように見えるウェイトを一度見直すべきだ」と訴えかけるプレイヤーもいる。MTGアリーナで遊べる擬似統率者戦として位置づけられたブロールの今後の発展に注目したい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?