in the hell 1話がちょっと深刻に心配なレベルにつまらなかった話



全然別物です!パラレルです!ごちゃごちゃ叩いてないで割り切って見てくれ!という割には冒頭から前作と同じ役者が前回と同じ役名で自己紹介し殴られる所からこの地獄を具現化した様な作品は始まる。

朝寝坊する所まで前作の主人公と同じ行動パターンなのだが前作の主人公は平凡なサラリーマンだった為だらしなさもルーズさも許されていて母性本能をくすぐられるファンもいたのだろうが、今回の主人公は大勢の身の安全を背負ったCAである。そんな立場の人間が作中何度も寝坊する姿には呆れたし悠長にも寝坊した自分ではなく目覚まし時計相手に大騒ぎで八つ当たりしてる姿には不快感しか生まれなかった。はよ準備しろや。

前回の別物と謳いながらも主人公と黒澤の名前が同じ。主人公に至っては性格の設定やバスケ部であった所まで引き継がれ、その上同じセット、ロケ地、小道具が使い回されている。
しかし今回の作品は天空不動産編で築き上げたものを全てぶっ壊し作品を支えた役者やファンを切り捨て侮辱した上で、前作人気が築き上げた話題性や功績やSNSのフォロワーだけを横取りして企画された地獄の様な続編である。

前作へのリスペクトが微塵も感じられない公式からの前作オマージュなど腹が立つだけであるし、何より前作の劇場版のキーアイテムだった、「春田が牧への永遠の愛を込めた婚約指輪」を連想させる様な造りの指輪がトイレ沈んでいるカットを見た時にはむせ返る様な悪意に目眩がした。ダイヤ付きの婚約指輪などどれも同じ様なデザインだし他意はないという意見もある、物語の展開に必要な演出に過ぎないという意見もあるだろう。だがしかし、キャビンアテンダントが客がトイレに落とした婚約指輪を拾う、という設定がまず不自然だしかなり無理があるのだ。まずそんな大事なものをあの状態でトイレに落とすわけがない。どこかで箱ごと落としてしまい二人で外を這いつくばって探す、という展開ならまだ自然なところをわざわざああやって描写した所に製作陣の底意地の悪さを感じてしまった。

しかし私がこの作品において嫌悪感を覚えたのはここのシーンがピークだった様に思う。なぜかというと、前回へのしがらみ抜きにして、このインザスカイという作品があまりにも稚拙でお粗末な出来で、腹を立てるのもバカバカしくなり拍子抜けしてしまったのだ。

徳尾の作る話の酷さなど劇場版にて痛感していた筈なのに、私は「それでも天空不動産篇を作った脚本家だ。またあの様な素晴らしい作品を世に生み出すのかもしれない」と放送前に思っていた部分もあったのだが、全くそんな事はなかった。1のメンバーで見たかった様な上質な作品を作られた方が落ちこむとは思ったが、悲しい程のクソドラマぶりにこんなものの為にあの作品が奪われたと思うもひどくやるせない。

脚本が酷い。あまりにも酷い。書きたい場面は真っ先に思いつくのだろうが、その場面にどういった過程でキャラ達が辿り着くか、という道筋を作るのが物凄く下手くそなんだと思う。
春田が遅刻するシーンを書きたいと同時にお人好しアピールしたいのは結構だが、その為に生まれたゲストキャラのプロポーズ男の存在が不自然過ぎて話の流れに全然集中できない。

先程も触れたが、この男、プロポーズの為の婚約指輪を何故か空港のトイレの落としてしまう。この時点で何故トイレで??指輪を裸で持ち歩いていたの??それともトイレで箱から取り出して眺めてたの??トイレで???と疑問は尽きないのだがこの男はなんとそれを自分ではなく、わざわざCAの春田を探し出して取らせるのである。

何故自分で取らない????汚いから?????だから他人に取らせるのか?テメェでトイレに落としておいてか?お前の婚約者の愛はそんなもんかよその程度の想いじゃいずれダメになるわ大人しく家に帰ってママのオッパイ吸ってろ???と不快感と突っ込みばかりが溢れてくる。そして多分、この脚本家はおそらくこのシーンをとっても面白くて春田のお人好しぶりまでアピール出来るナイスでGOODなシーンとて書いているのだろから末恐ろしい。

そしてこの男、主人公から拾って貰った便器堕ちの指輪で彼女で告白しようとしているらしく非常に不快である。永遠の愛を申し込まれ差し出された指輪が一度はトイレに落ちたものだと知って怒らない人間はいないと思うきったねぇ。こんな普通に考えて倫理的にアウトな行為をさらっと受け入れて応援している主人公もまたサイコパスである。

しかもプロポーズに踏み込めず毎日飛行機を予約してはキャンセルしている様なのだがなんなんだコイツはニートなのか。プロポーズ休暇でも貰えてるのか?などとキャラがあまりにも現実離れしていて物語に全然集中出来ない。

現実離れし大味でデフォルメされているのはこのクソ雑魚モブだけではなく主要人物も同じだ。特に主人公の描写はそれが顕著である。田中圭の魅力とは「こんな人周りにいるよね」と自然と思わせてくれるようなナチュラルな演技力だと思っている。1の春田も顔芸や大袈裟なリアクションをする事はあったものの自然な演技の中に絶妙なタイミングとテンポでそれが入っていたので気にならなかったが、今回は終始いちいち漫画的な、それでいて半ばヤケクソのようなオーバーリアクションをするので見ていて辛くなる。

一時間と満たない放送時間がやけに長く感じるも脚本はごちゃごちゃ内容はスカスカで「合わないな、」と感じた視聴者にとっては拷問のようなドラマなのだが本当に拷問を受けているのは演者のように思える。なにせギャグシーンギャグシーン全員滑っている。それなりにキャリアのある演者も多いだろうにどうしてこの人達はこんな事をさせられているのだろう。

特に酷いのはアドリブシーンだ。前作のアドリブはあまりにもナチュラル過ぎて後からそのシーンがアドリブだったと明かされファンが驚く、ということが何度もありしかもファンから評判の高いシーンの多くが役者のアドリブだった。それに味を覚えた製作陣の「よし、どんどんアドリブを取り込もう!」という意気込みが、今回は悲しいくらい空回っている。
思えば前回我々がアドリブをアドリブだと気付けなかった程そのシーンは自然でいて高いクオリティのものだったのだが、これが芝居の呼吸が合わない者同士で行われるとここまで悲惨な事になるのか。
「あ、ここは恐らくアドリブなんだろうな」と一発で分かってしまうような楽屋ノリのものを、しかも恐らく胸を張って地上波で流している製作陣は本当にこれを面白い物だと思っているのかもしれない。しかし少なくとも私はそう言った場面を見ていてみるみる頬が火照っていくのを感じた。恥ずかしかった。この居た堪れなさは、学園祭で違うクラスの知らない人達が内輪ノリで自分達だけが楽しい稚拙なコントを見せられているかの様な感覚だった。そんなクオリティのものを異常なハイテンションで振り撒く演者を見ていると、ゾンビ映画で自我を失っていきながら「殺して‥殺して‥」と涙を流して救済を請うキャラクタを見ているかの様な感覚を覚えた。

それから今回逆に才能なのでは?というくらい好感を持てるキャラがいない。漫画的に大味で味付けされた記号的な登場人物は、遅刻、パワハラ、セクハラ、他人を見下す、キンキン声のぶりっ子、上司と話しているのに爆睡、食べ物を粗末にしようとする、盗撮の様なイラスト模写、理不尽な暴力、貞操観念の薄さをドヤ顔で披露し相手をやり捨てする、などとにかくどいつもこいつもも倫理観のない行動ばかりを取り誰一人として共感も出来なければ好意も抱けない。驚く程いけすかない奴ばかりが出てくる。

見ていていっそ切なくくらいキャラ同士がギスギスしているし悪意に満ちてて見ていてしんどい。主人公の歓迎会で作者不明の自分の模写を主人公が周りに見せるシーンがある。確かに何枚もの主人公のイラストを会社のロッカーに隠し持っていたという事実は異常なのだがここのシーンの主人公と同僚が絵の作者とその想いを明らかに茶化しているような描写がなんだかすごくショックだった。人が人を好きになる、という事を男女年齢関係なく真面目に誠実に描いていた前作とはあまりにも毛色が違う。天空不動産のメンバーだったらきっとあんな小馬鹿にした様なリアクションはしないだろうな、と六話でカミングアウトに失敗した春田を力いっぱい励ますメンバーを思い返して悲しくなった。どうして前回出来ていて支持されていたものを自らの手で壊していくのか。こんなに誰も幸せにならない破壊と再生になんの意味があるのか。

あとはカメラワークも酷かった。やかましくて酔いそうだった。それから武蔵のあの分身の術はマジでキツイ。あそこでも私は居た堪れなくて赤面した。安っぽすぎて喉奥がひくついた。
あと作中のモノローグが前半主人公、後半は武蔵となっていてただでさえとっ散らかった物語が更に訳の分からない具合になっていた。

他にも思う所は色々あったが、本当に心配になるくらいに酷い出来で、逆に安心している自分もいた。このドラマが前回の様に社会現象を起こす事はまず有り得ないと思う。本当に役者が気の毒でならない。