in the hell3話、金に魂を売った作品、好きだったコンテンツが落ちぶれていくという事



自分の愛した世界が突如として奪われ、天空不動産編の人気と功績を横取りするような形で始まったインザスカイ。公式がそうまでして展開させたその作品がどんな物かとこの目で見届けて来た私だが、あまりにもお粗末な内容に3話にして怒りよりも悲しみの方が勝るようになってしまった。


内容が酷すぎて見返す気にもなれない為一回視聴したのみの朧げな記憶を頼りに話の筋を辿っていくと、親子関係が発覚したはるちゃん女と武蔵と春田が黒澤家でごちゃごちゃしたやり取りをする場面から物語はスタートする。三十超えた娘と好きな相手が被っておきながら譲る気ゼロな武蔵にも驚くが「この二人はなんと親子でしたwww驚いた?」「武蔵実は子持ちだったけど今ははるたんにメロメロなんだよねwww」な展開をやりたいが為だけにサクッと武蔵の離婚した妻が亡き者にされている事にも唖然とさせられる。この脚本家、映画版からサクサクスナック感覚でやりたい展開の為に人を殺し過ぎである。


そしてなんやかんやあり主人公が機内アナウンスを任命される流れになり、そこで私は初めて主人公の初フライトエピソードがまるまるとカットされている事に気が付いた。空港会社が舞台の話でCAである主人公が初めて搭乗する話など滅茶苦茶重要な話となるところだが、マジであっさりカットされているのである。これまでなんとなく設定だけはあった主人公の「ポンコツだが他人想いでとにかく一生懸命」という部分が何よりアピール出来る場面をどうしてカットするのだろうか。主人公が何でこんなにモテまくっているのか、圧倒的魅力不足に首を傾げる視聴者も多いのはそういった本来描かれるべき見せ場もなく物語がどんどんと進行しているせいではないだろうか。


話を戻すと、今度から開始される石垣島就航便にて機内アナウンスを初めて任命された主人公は緊張しながらも業務中に練習に取り組むのだが、そこでまたもや成瀬が女と揉めている場面に出くわしてしまう。そのやりとりからなんとなく、「ああこの女の人は成瀬の妹かなにかで恐らく父親あたりと成瀬が揉めているのだろうな」と察するのだが、主人公はこれを前回の行いから痴情の縺れと勘違いする。寮に戻った春田は成瀬に「お前さぁ~あれはねえよぉ」と机にごろごろ突っ伏しながら説教を垂れるが、こちらからすると新人CAでありながらエリートパイロットである上司に向かってその口の利き方と態度こそが「お前さそれはねえだろ」である。


私は俳優としての千葉雄大を熱狂的なファンとまではいかないが、ある程度好感を抱いて過去作を見て来た。だからこそこの作品の彼の演技には疑問を抱かずにはいられない。「この人こんなに下手だったか…?」と唖然としてしまう程彼の演技は不自然だ。読んでる本についてしつこく絡んでくる春田に「いいでしょ俺がどんな趣味してようが!」とブチ切れる場面の演技など感情の起伏の表し方が唐突過ぎて「なんて????」と思ってしまった。感情の流れをぶった切った「怒ってる演技をしてます」という作り物感バリバリ感のリアクション。これは演出の問題なのだろうか。千葉雄大の過去作を何本か見た私にとって、「こんなに役者をへたくそにみせる演出はどうやったら出来るのだろうか…」と純粋に疑問に思ってしまった。怒るときは大げさに、唐突に、漫画っぽく!という演技指導でも入っているのだろうか。


正直inthehelllから入った役者に罪はないと思う。寧ろこんな泥船企画を引き受けた男気は称賛にすら価すると思うが、それでもそんな千葉さんが演じる成瀬という男もやはりツッコミ所だらけなので色んな所が目についてしまう。この成瀬という男、一話で主人公に痴情の縺れをごまかすために強引にキスをするのだが、その後事あるごとに「一回キスしたくらいで本気にしないでもらえますか???」と煽ってくる。いや一回キスしたぐらいでも何もお前が無理やりしたんじゃん…しかもそれをなんかキメ所みたくドヤ顔で言う所が厨二感満載で恥ずかしい。そんな成瀬に「そういう事じゃなくて…俺らチームじゃん!仲間として普通に接したいだけなんだよ!!!」と熱く語る主人公だがこちとらこいつらがチームになる過程を小指の甘皮程も見せては貰っていないのでその主人公の熱さがやたらと押しつけがましく感じる。なんかこういうやたら仲間だのなんだの強調してくる体育教師っていたよね。こういうやたらと自分に酔ってるタイプの体育教師はいたし大抵周りにうざがられてたわ。


そんな熱血勘違い野郎と激情瞬間湯沸かし器の成瀬のギスギスとしたやり取りをだらだらと見せられたのち、占い師にそそのかされ勘違いおじさん度を増長させる武蔵という拷問パートを見せられた後、舞台は再びおじさんだらけのテラスハウスに戻る。つうかこの寮やたらトレンディでだだっ広く1話で他の社員も住んでいる描写がありながらもそれ以降マジで主人公と成瀬と四宮しか出てこないのが本当草。都合よくおじさん達の喚き合いを書きたいがだけの舞台装置感がみえみえである。あとあまりにトレンディ過ぎてこいつらがここで生活している感がまるでなく、それがまたキャラのリアリティの欠如の一端を担っているように思える。


その後なんやかんやで四宮が自分の母校の生徒たちに自分たちの仕事について授業する事になりそのアシスタントに主人公もついていく事になる。そこで主人公が生徒たちに仲間やチームの大切さをベテラン顔でつらつらと語り生徒たちもそれに感銘を受けるのだがこっちは主人公の初フライトすら見ていないので「こいつは何を言っているんだ…?」と頭に疑問符しか浮かべられない。私が知らないだけでこの話は実は3話目ではなく13話目なのか????


そして授業が終わりこのご時世部外者の癖してぶらぶらと校内をぶらつく二人。トイレに行った主人公が戻るとそこに四宮の姿はなく、ふと聞こえて来るピアノの音色。音がする方へ誘われるまま主人公が向かうと、そこでは音楽室でここが見せ場と言わんばかりにピアノをぽろりんぽろりんする四宮。腐女子ってこういうの好きだよねと言わんばかりに二人は連弾するのだが申し訳ないがマジで画面に華がない。役者に罪はないのに本当に申し訳ないがマジで画面に華が無い。のちのち出て来る雨の場面もそうなんだが脚本家が15年前のBLをブックオフで立ち読みして予告映えする場面を継ぎ接ぎで撮ったように思えてならずなんの情感もわかない。場面ありきで物語が強引に進むため情緒がないので感動もときめきも一つもない。

それからガッツリドラマ内でグッズの宣伝が入り、「じゃんじゃん売りましょう!」と意気込む主人公。在庫いっぱい抱えないといいね。ここで主人公が練習してきたクソ雑魚機内アナウンスが仲間内で披露されその出来に現場は冷え冷えになるのだが、その場を取り仕切る立場である筈の武蔵は「尊い…」と仕事を忘れ見惚れている始末。この会社は駄目だ…。


そんなわけでドラマ前半で散々前振りされていた主人公の機内アナウンスではあるが、なんとその様子はまるまるとカットされまたも機内のシーンは出てこない。見ていない人間は冗談だと思うだろうがこれはマジでリアルな現実なのである。そんなお仕事ドラマがあるだろうか。


この機内アナウンスの下り、明らかにいらないじゃん…と視聴者の誰しもが思っただろうが、実はスポンサー的には大いにいる場面なのである。石垣島就航便をドラマ内で散々アピールし、機内アナウンスの流れで武蔵が主人公に沖縄弁で愛を語り沖縄かぶれのダンスをしたり、ドラマ内でも散々アピールされている通り、実際にピーチは12月から石垣島就航便をスタートさせる。つまりこれはスポンサーのステマありきで脚本を書いた訳であり、元々脚本家の腕がクソ雑魚という事があったとしても場面ありきの意味のない不自然なシーンが無駄に増えたのはこの為である。ドラマ内で実際に売ってるドラマグッズの宣伝をしたりスポンサーに媚びたりと、悲しい程金に魂を売っている内容である。


Twitterで発言にキレがある方のツイートに痺れフォローするも、フォロワーが増え影響力が大きくなってきた頃合いで唐突にマッチングアプリやらダイエットサプリやらの宣伝をするようになる流れを何度か見て、「ああ…」とどこか切なくなった経験を何度かした事がある私だが、それ以上の露骨なステマ…いやこの場合ダイマか?そんな事を大好きだった作品の続編を名乗った同じタイトルが付けられた作品でされるとは。あの素晴らしかった不動産編さえ汚された気分である。金に目がくらんだ結果がこれだよ。世の中って悲しい。


そのあと色々あって3話の成瀬がいつも以上にだんまり訳アリモードだったのは父親が危篤だったからダヨ…!(^o^)/☆という事が発覚する。主人公がそれを知るのは兄に連絡が通じず会社に電話を掛けて来た妹を通してなのだが、誰とも分からない会社の人間にそんな事をべらべら話すだろうか?そしてそれを知った主人公は「なんだよアイツ…!なんで何も言わないんだよ!!!!!」と怒りながら駆け出すのだが、ついこの前入って来たばかりの一切気を許していないポンコツのタメ口の下っ端にそんな事いちいち話すわけないだろ。こいつは世界は自分を中心に回っているとでも思っているのだろうか。周りのプラベ情報は全て春田通せやって??????

そして陳腐にも豪雨の中、何故か待ってましたと言わんばかりに傘もささずに佇んでいる成瀬。それ寮の部屋の片隅でしちゃだめなの???主人公が父親の事を知っている前提で「今さっき…亡くなりました」とずぶぬれで呟く成瀬を思わず抱きしめる主人公。分かるよ徳尾…この場面がやりたいが為に成瀬のおとん殺したんやな…ていうか慣れない高級機材導入したせいか雨の量が強すぎるのまじで草。ていうかパイロットって滅茶苦茶体調管理厳しいんじゃなかった?こんなクソ豪雨の中構ってちゃん全開で佇んでる場合じゃないだろ。


この作品の登場人物、せめてそれぞれマイナス15歳位だったら唐突で感情的で自分本位な幼い言動にも説明がつくのだがまともな仕事描写もない30超えのコスプレおじさん達がぎゃあぎゃあ中学生みたいに喚いているだけなのでなんの情緒も揺るがない。潤沢な資金を得てバンバンと番宣し不動産編開始時とは比べ物にならない知名度とSNSのフォロワーを以てして鳴り物入りでスタートした本作であるが、3話の視聴率は不動産編の3話を下回っている。そりゃそうだろうよ。

大好きだったコンテンツが落ちぶれていく過程を今こうしてまざまざと見せつけられいるこの現実。まさに地獄への直通便である。