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たなえりは行方不明 #3

第三話 こふみんは就寝中

サムイにはKoshiくんのバースデイパーティのために来た。
ただのパーティーではない。ひとつの世界観を作り出すのだ。
ケーキを出して、お酒を出して・・・そんなものではなく一つの作品、エンターテインメントとして参加してくれる人たちの時間が最良になるように、食事・空間・音楽・映像・・・全ての物語の展開を考えるのだ。

それが私”ブランディングプロデューサーこふみん”が主宰するバースデイパーティだ。

ーーーー1月26日AM00:00ーーーー

鳴りやまない音楽、海岸でダンスする人々。
バースデイパーティの前夜祭としてみんなとパンガン島に来たものの、極彩色の衣装に身を包んで夜通し歌い踊るのは、私の世界観とはかけ離れている。
みんながパンガン島の派手なタンクトップに着替えなおしても、いつもの淡いアースカラーのワンピースを突き通した。

夜中の0時を過ぎて、やっと帰りのフェリーが動き出した。楽しむみんなを横目に早々に港へと向かった。
帰りもあの爆速でジェットコースター並に揺れる船に乗るのかと思うとやや気もめげるが、明日のパーティーに備えてまずはすぐに帰ろう。

船が動き出したと思ったら急に止まった。
何かを海に落としてしまったらしい。プカプカと波に揺られるのは1枚のただの紙のようだ。
そんなもん放っておいて、とっとと帰ってほしいものだ。

ーーーー1月26日AM00:30ーーーー

先ほどから海に浮かぶ紙を拾おうと、船員が騒ぎ立てている。もうちょっと船を寄せろ、長い棒をもってこい、明かりをつけろ等々。。。
正直、眠気がピークに達している。こんな時にどこでもドアがあれば・・・と少し夢うつつになっていた所、やっと拾い上げたらしい。
拾い上げたその紙を見ると、船の運航許可証だった!!
みんな一様に疲れた顔をしていた乗客だったが、一瞬唖然とした表情をした後でハイタッチをして船員と喜びを分かち合った。
ヒューっと口笛を吹いて大盛り上がりではあったが、日本人の私としては
「いや、そんなもん風で飛ぶような所に置いておくなよー!!!!」っと叫びだしたいところだった。

ーーーー1月26日AM07:00ーーーー

~♪♪♪
何度も着信音がなり、眠い目をこすりながらiPhoneの画面をのぞき込む。
こんな朝からなんなんだよ・・・そう思いながら見ると、たなえりからの着信だった。
不機嫌に電話に出ると、遠くに波音が聞こえてきた。
「ごめーん。みんなによろしく言っておいて~・・・・」
なんだか色々しゃっべっているがまだまだ眠い。
あーはいはいはいはい。了解。とだけ言って電話を切り、大きく伸びをした。

よっしゃー!今日はパーティーの世界観つくりに行くか~!!
気合をいれて起きて、バースデイパーティー会場の準備へと向かった。

ーーーー1月26日AM11:00ーーーー

パーティー会場の準備を仕上げ、コテージに戻るとみんながリビングに集まっていた。たなえりはまだ来ていないみたいだ。

エリが青ざめた顔で言う。
「たなえりって・・・誰か見た??途中ではぐれっちゃって。
 席に戻ったら荷物しか置いてなかったの。途中でスマホの充電も切れたらしく連絡もつかないし・・・」

旅行慣れしているあんじゅが答える。
「私は最終便の5時の船で帰ってきたけど乗ってなかったよ・・・。
 船に乗れてなかったら、パンガン島に置いて来ちゃったのかも!?」
事件に巻き込まれてたらどうしようっ・・・と今にも泣きそうな顔をしている。
「ちょっと待って、ちょっと待って。そういえば朝に電話あった!!
 生きてる生きてる!!!!」
「電話があったってことはスマホ充電できたってことなんじゃない?
 SNSになんか書いてないか見てみよう!」

Facebookを開き、たなえりのページを開く。
朝8時に更新があった。
【やってしまった・・・】という言葉と共に見覚えのあるパンガン島の船着き場の写真。

事件に巻き込まれたワケではなさそうなことが判明したが、まだまだ謎が残る。観光船が朝5時で終わるのに8時にはまだパンガン島にいるってこと??

・・・・・・たなえりはまだ行方不明。

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