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お笑い初期衝動

90.ウケるという落とし穴

気がつけば、とんねるずの話ばかりになっていたが。
僕と田中三球のコンビ=ジルの話に戻そう。

僕達は、ジルとしての4作目のネタ『叫ぶ会』を作った。
このネタは、過去3作に比べると、田中三球のアイディアが占める割合が高かった。

しかし、どうも田中三球好みの笑いに偏りすぎて、万人ウケしなさそうなネタだなと僕は感じていた。
ま、僕達は元から万人ウケするタイプではなかったのだが。
それにしても、このネタはちょっと田中三球の趣向に偏り過ぎていた。

養成所でのネタ見せでは、見てる芸人には、それなりにウケていた。
それはなぜか。過去3作のネタがおもしろかったからだ。

人間心理とは不思議なもので。
既に「おもしろい」という認識をうえつけることができていると、実際の出来よりもウケやすくなるものなのだ。

こういう空気感は、今までが順調にきている証拠で、ありがたい、やりやすい空気ではあるのだが。
その反面、実はこれこそが落とし穴であったりもする。
ウケたくてやっているのに、ウケることが時に落とし穴にもなり得るという。
お笑いは、なかなか一筋縄ではいかないものなのだ。

かつて、40年ぐらい前の漫才ブームの頃。
TVでこんな光景を目にしたことがある。

紳助竜介として、『THE MANZAI』の舞台に出てきた島田紳助さんは、出てくるなり「キャー!!」と黄色い歓声をあげるお客さん達にこう言った。

「よせ、やたら騒ぐな。俺達をシラケさすんじゃない。そんな目で見るな。矢沢(永吉)を見る目はやめろ。」



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