瑞牆 オランジュ岩 ギャラクシアン 初めての5.12

  僕のclimbing人生で初めての12は瑞牆のオランジュ岩にあるギャラクシアン(5.12A)になった。

率直な気持ち、このルートは最初は触るつもりもなかったしどんなルートなのかも知らなかった。

1.出会い  2.再燃  3.悩み  4.挑戦  5.貫きとおすことができた

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↑↑夕刻の一番美しい時 壁の名の由来

1.出会い

コロナの自粛明けとなった6月にH・Eさんとカサメリ沢にきた。Hさんは生死をさ迷うほどの大病を克服してclimbingに復帰し、復帰目標としてギャラクシアンを選んでいて、今回もそれを触りにきたのであった。

せっかくだし、やってみれば?という言葉のあとに僕はとっさに「まだ11Cもろくに登れていないのにまだ早いです」と言うと、「そんなことはないよ。未知のグレードをトライするのも大事だと。」

そう言われやってみることにした。前日降ったのかコセロックは濡れていて仕方なくアップもなしにとりついた。下部で力のいるムーヴがあってテンション。その後も各駅停車で進むもなんとかトップアウトは出来た。この時は特段目標にするでもなく終わってしまったのだけど、瑞牆本を見ているとルート紹介を見てまさにそのとおりのルートだったなと思う。そしてそれを今年の目標にしようと思い始めていたのであった。

しかし、その後はカサメリに来ても違うルートに挑戦していたりとなかなかギャラクシアンに向き合うことなく月日は流れていった。

目標としてたてたイエロークラッシュのためにジムでも傾斜のあるルート。ボルダーでもムンボなどで瞬発系を打つようになりギャラクシアンのことはかなり頭の片隅に追いやっていた。

2.再燃

しかし事態は変わったのだ。10月の肋骨骨折で強制的にclimbingから離れざるを得ない時、腕は駄目でも足を鍛えることは出来るよな、と思っていたときにふとギャラクシアンを思い出した。

あのルートかなり足にきたなぁ。。そうだ。ギャラクシアン登りたいな。病室で、階段でふくらはぎのトレーニング。スクワットで足腰を鍛えたりと出来ることをやった。退院後も電車の中では座らずに足をあげたりと歩きのなかでも意識した。

3.悩み

しかし、身体はなかなか元気を取り戻すなかこの時期、僕にとって厄介な現象に襲われ始める。右手の極度の乾燥によるホールドに弾かれる現象である。(僕の右手は幼い頃に患った小児がんの手術の際、汗腺の神経を切られてしまい全く汗をかかないという障害がある)

それはイエロークラッシュのtryを始めた11月半ばから如実に現れ始めた。

普通の人ならこの時期が一番フリクションが効いて登りやすいだろうに。ぼくの右手は逆に弾かれるようになってきた。ムーヴが固まったイエローも朝の岩の冷たさと陽のあたる時間の短さ、そして割ける指皮と段々と辛くなってくる。

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4.挑戦

そんな11月半ば、さいとーさんとアナさんでオランジュにいった。ギャラクシアンを登るためである。オランジュは陽があたり始める正午過ぎからなら登れる。陽で岩が暖まれば右手もカチが持てるようになるかも。

あのとき、ムーヴはすぐにわかったからもしかしたら今日登れるかも……という淡い野望は簡単に打ち壊された。最上部のムーヴの組み立てが1便目では出来なかった。さらに2便目では最初の核心でルートを大きくミスる初歩的なミス。しかし、上部の核心は解決できた。そして目論見どおり右手はカチを保持できた。あとは次にいつ来るかが問題だった。

どうしても、あと一回で良いから行きたい。そこでOクラ君に連絡すると快く付き合ってくれると返事がきた。林道閉鎖も間近に迫ってきていてこれからは寒さも増すばかり。次がリアルなワンチャン だろう。そう心して掛かることにした。

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↑↑ギャラクシアンを登る

5.貫きとおすことができた

甲武信小屋の仕事から坊抱climbingを経た12月4日、甲斐大泉駅でピックアップしてもらう。この日は他にK・Aさんという強強クライマーさんも来る予定だったのだけど、ちょっとしたことがあってこれなくなってしまった。残念と思いつつも瑞牆へ。駐車場はガラン伽藍。寒いのに来る我々の方がおかしいか。

アップの猫の手(510a)でも冷たくてテンションする始末。先が思いやられる。相方はちちくりマンボーをナチュプロでOSする。そしてギャラクシアンをOStryしたいとのことで僕はもう一本アップで青龍を登るがこちらは単純にきつくてテンション。まぁしゃーないと割りきった。

ついに太陽がオランジュを照らし出した正午過ぎ、Oクラがオンサイトトライ。確かな足使い、レストで最後の核心を越え見事にMOS!。こいつすごいわ。やりました!って大きな声が聞こえてくる。自身初の12OSということで降りてきて靴を脱いでいる間もずっとニヤニヤしてた笑。

次は俺の番だ。最初の難所を越える。次の難所2は足使いが細かく、手も縦カチで非常にデリケートな部分。ここで落ちた。しかし、すぐにムーヴを組み立てて突破し、ダブルクラックを登り次の難所3下のレスト部までくる。この難所3は前回最後にギリギリ突破できたところだった。しかし今回はそのムーヴをしっかり出すことができた。そこからもこのルートは全く安心させてなどくれない。ステミングでジリジリ高度を上げ、左のフレークの末端部を左手でとる。ここで落ちた。ここから最後の難所4。前回とは違うOクラムーヴを試してみる。するとそちらの方が良い気がした。しかし、カチをとっても足は良くない。慎重に凹凸を探しリップをとるまでほんとに気の抜けない。悪くない感覚だ。しかし、ロワーダウンでテンションをかけた部分のムーヴを練習しようとするも全然成功しない。焦りが募る。下部の難所2もカチ取りまでこなせなかった。でも降りてきてなんだかいけそうな気はした。

そして2便目

時刻は16時、夕闇が迫りつつある。寒い寒い。これが時間的にも、シーズン的にもほんとにラストOne try。不思議なことに気負いなどは感じなかった。楽しもう。登れても落ちてもこれが今の実力なんだと受け入れよう。

難所1 余裕のよっちゃんのレストばっちり。

難所2 ここが出来れば絶対行けると思っていた。不思議と足場が大きく見えた。縦カチしっかり持ててる。ちょっとデッド気味になったけどカチをしっかり持てた!一吠えしてクラック下へ。しっかりレスト出来てる。腕疲れてないし呼吸出来てる。climbingしてるな楽しいなって感じるダブルクラックをステミングして登る!ダイクに立ち込みレスト。

陽がついに沈み、暗くなり出してきた。長居は出来ないな。いこう。

難所3 余裕のよっちゃん あんなに難しかったのに。

そして難所4

ジリジリとステミングで高度を上げる。ここでちょっとしたアクシデント。ヌンチャクのハンガーが引っくり返っていてまさかのビナ1枚分遠くなってる!!…手持ちのヌンチャクを連結してなんとかクリップする。もう怖くない行ける。上のガバ縦カチをつかみ体を持ち上げた。そして足をもう現場処理でどっかにおいて左手で上のカチをとった。もう落ちてたまるか。ちくしょー絶対決めてやる!左足とかよくわからん所においていた。そして右足…粒が見えた。ここしかないな。右手は終了点の下のホールドをとらえた。終わった。長かった。2枚の残ビナの内、1枚がなかなか開かなかった。

忘れられないな。南アルプスに沈んだ太陽の残照が。

今日は良い日だって二人で称え合えたのがうれしい。

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よくこの寒いのに通えたもんだ。パートナーもclimbingの一部。感謝です。

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突き詰めることも大事だし、今は諦めてまた戻ってくることも大事なのかも。大切なことは登れるか登れないか、結果は仕方ない。貫きとおすことができたということ。

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