駅寝の思い出

山歩きを始めて幾年が経ちましたが、貧乏で金のない僕は遠征するときは夜行バス、もしくは前夜発で登山口まで近い駅まで移動するということをよくやってました。フリークライミング主体な最近でもよくやってます。

車を持っている人にとっては駅寝(ステーションビバーク)は縁遠い行為だろうが、実際によく同じような仲間を見かけたことも多々ある。

何度もやった駅寝で特にエピソードなぞというものはなかった。しかしそれは良き思い出、山旅を飾る序章として色褪せることなく思い出に残っている。

JR中央本線 KBZ駅

僕の駅寝歴史の中で一番世話になっている。駅寝of the top。奥秩父、南アルプスそして小川山や湯川。たぶん30回以上は使っているだろう。ここを使う同胞も多い。

高尾駅から最終列車に乗るとき、同じ格好の奴等がいたら、先を越されまいと出口に近いドアを記憶しておいて一番乗りを目指したものだ。少し前は待合室に隣り合わせに置かれたベンチで寝ていたが、最近駅が改装されて待合室に暖房が入った。冬季もより過ごしやすくなったわけだが、ある日施錠するから出てくれと言われ少し悲しい気持ちになった。しかし、隣接する市のスペースが使えてこちらも暖房がないとは言え大分過ごしやすい。

甲府駅を過ぎるのはもう日付が変わった頃になるのだけど、ある日、めちゃくちゃ酔っぱらった美人が乗ってきたことがあった。泥酔していてすぐに寝てしまって僕が降りる駅まで寝ていた。先に降りてベンチを確保しているとフラフラとその美人が改札を出て僕の前を通っていった。3時頃に目を覚ますとなんか酒臭い。隣のベンチでその美人が寝ていたのだ。あー、まじっすか。安眠というよりはなぜか苦悶の表情で寝ているその美人にもうそわそわが止まらない。山旅どころではない。もう眠ることは出来ない。でも寝ないと。。起きる顔を見る寝る(寝れない)起きる顔を見る寝る(寝れない…)を繰り返しいつのまにか朝を迎えた。あれ、いなくなってる。懐かしい思い出だ。

朝、駅の屋上から見える南アルプスや八ヶ岳がほんとに美しい。

 JR上越線 D駅

言わずと知れた名山への入口。いにしえの頃より使われ、おそらく日本山岳会の歴史に名を馳せた人も使ったであろう。夜中の貨物列車の音がやけにでかく聞こえる。あの階段を登るとき、雪山靴の重低音が響くとき、言い様のない胸の高鳴りに襲われる。

寝たときには誰もいなかったのに夜中目が覚めると人が増えてるなんてこともあった。

JR中央本線 KF駅

ここは駅寝ではなく、南口のバスローターリーで寝た。その理由の一つは早朝4時台に出る広河原行きに乗るため、そして駅の中がどうも寝にくかったからと記憶している。

ここは山梨随一の繁華街とあって山梨中の遊び人が集まってくるとみえ、ずっとうるさかった。寝るには最低の条件だった。しかし、このあともう一度ここで寝ているのは一体なぜ?

長野県KMG市 KMGバスステーション

ここでも何度か寝た。新宿からの最終バスは意外と早くて夜中1時頃に着いてしまう。バスステーションにはもちろん入れないがベンチが設置されていて、夏だったから寝るには困らなかった。一番バスを乗りにJR KMG駅まで行くとそこそこ人が待っているのが常であった。みんなどこで寝てるんだろう。あっ、ホテルか。僕のような下層労働者の財力では許されない。暖かい布団で登山口付近でとまることなんて…。

西武鉄道 SCCB駅

ここもほんとに世話になった。奥秩父荒川源流の未知への旅、情緒溢れる両神への山旅には必ずここを利用した。仲見世商店街の通りには畳の引いてある大人が寝転べる程のテーブルが置いてあって、これを商店街道の外れに移動させてよく寝たものだ。夜中までやってる飲み屋から漏れてくる笑い声もなぜか心地よく聞こえた。

栃本や雁坂のことを考えるとわくわくした。廃道を辿るときはドキドキして眠れなかった。今は駅も仲見世も改装されて綺麗になってしまった。でも昔の方が良い雰囲気だった。もう酔っぱらいの声も聞こえない。ちょうどフリーに精を出しはじめて奥秩父や山歩きから遠ざかろうとしている頃だった。

他にもいろいろやったな。ど田舎ステビで虫に刺されまくって悶絶したり、ホームレスと間違えられて朝飯を恵んでもらったり。。

こんなことをいつまでするんだろう。そう思いながら駅寝を重ねること数知れず。つい最近も八ヶ岳東面に入るときにうってつけの場所を見つけてしまったり。まだまだお世話になりそうな気もする。

しかし、駅寝はほんとに許されていることではないだろう。駅は電車を使う人の施設である。駅員の人の暖かな、大いなる寛大な心で使わせてもらっていると思っている。

なので出来るだけ駅には最終列車で入り、始発までには居なくなることを心掛ける。それが最低のマナーだろう。もちろんゴミなど残さずに、駅員の人に退去してほしいと言われたら大人しく従おう。(過去に少し粘った経験あり)

そしてそんな駅寝をする人を見かけたら寛大なる心で見てあげたい。

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始発電車からの清々しい景色

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