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自然に還りたい、と思う気持ちがとても強い。これは、私の生まれが田舎であるせいだろうか、それとも「もののけ姫」を見て育ったから?
どうしてだかわからないけど、自分の死後を考えた時に、山野の土に埋もれて白骨化した私の上に、草が這い回っている様子をいつも想像する。穏やかな風が吹いて、鳥が鳴いて、それだけ。
ときおり山に足を踏み入れた人に踏みつけられることもあるけど、その人も騒ぐことなく、ここに骨があるなぁ、そんな調子。どうだろう、とても安らかな情景だと思うのだけど。

もちろん、都会の便利さを嫌っているわけではない。愛しているとも言えないけど。
時刻表を覚えなくても、適当な時間に家を出ても、駅に行けば電車が次々に滑り込んでくる。インターネットで頼んだものは翌日には届くし、夜中も明るく、24時間営業している店がどこかにはある。人がたくさんいて、あたたかな無視が心地よいときもある。けれども私が還るのは土であり、排気ガスの匂いではなく少し青苦い草の香りに包まれて朽ちたいと思ってしまう。これが異常なことなのかわからない。

私は激しい起伏よりも穏やかな帰結が好き。劇的な生などいらない。淡々と次のページを捲るように日々を過ごして、深海に降るという雪が降り積もるように年月が私の上に積もって、いつかそれに押し潰されてそのまま終わりたい。だれに看取られなくてもいい、絶唱もなく、ただ静寂の中パキンと、たったひとつの音を微かに鳴らして、それが誰にも届かないまま終わりたい。そう願っている。

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