海外版ルーイメモを味わう話

『ピクミン2』ではプレイヤーキャラクターの1人であるルーイを救出すると原生生物図鑑から読めるようになる「ルーイメモ」なるものが存在する。これは既に作品をエンディングまでプレイしたことがある方ならご存知だろうが、「原生生物の美味しい食べ方」が悪食⋯もとい⋯「食に熱心な」ルーイによって解説されているというものだ。

例として、ピクミンの敵として最もメジャーな「アカチャッピー」のルーイメモを引用する。

よく肥えた物をステーキや丸焼きにして食べるといいらしい。

⋯とまあこんな感じで全ての原生生物に対してメモが存在するのだが、ある時私は衝撃的な事実を知ってしまったのである。

それは、ピクミン屈指の強敵である「ダマグモキャノン」のルーイメモについてだ。ダマグモキャノンはその名の通り、ダマグモというムシと機械であるキャノン砲が融合した生き物であり、ルーイメモでも

ほとんど機械なんですけど⋯。

と書かれているだけで食べ方の詳細などは書かれていない。流石のルーイと言えども機械を調理するのは厳しかったようだ。⋯と思った矢先、私は驚愕の情報を得た。

どうやら、海外版では食っているらしいのだ。

私はびっくりした。あのダマグモキャノンにまだ食べられる部位が存在するとは思わなかった——のもあるが、まさか海外版でメモに記載されている内容が変わると考えてもみなかったのが一番の理由だ。ソースを確認するべく、私はあるサイトに飛んだ。皆さんご存知、「Pikipedia」である。

Pikipediaは外国の有志によって運営されている、ピクミンの事なら載っていないことは何も無いだろうと言える英語サイトで、日本のサイトでは見つけにくい海外版の作中メモが容易に見られる。私はドキドキしながらお目当てのダマグモキャノンの項目を開いた。

Although the meat is a bit on the metallic side, the oil makes a mouthwatering gravy or lubricative vinaigrette.

これを本家風に訳すとこんな感じか。

肉は金属面にわずかに存在するが、オイルが食欲をそそるグレイビーソースやなめらかなフレンチソースになる。

食ってた⋯

まさか情報のソースを探しに行ったら美味しいソースのメモを提示されるとは。流石ルーイというべきか、どうなのか。


調べた結果、(当然と言えば当然なのだろうが)日本版と海外版の差異はダマグモキャノンのメモだけではなく、他の原生生物メモでも確認できることが発覚した。⋯2020年にもなって発覚とか言うのも恥ずかしい気がするが、特に日本版との差が面白いメモを自分のログを兼ねて掲載する。

(機械翻訳はDeepLを使用しました。また、機械翻訳における「日本語として不自然になる箇所」は読みやすいように改変を行いましたが、それにより原文と齟齬が生じている場合があります(翻訳とは)。英語が本当に苦手な人が個人的に楽しみながら書いているので、どうかお許しを⋯)


■所変われば品変わる

日本語版の特徴的なレシピとして、その一つに「刺身」がある。イモガエルのメモなどがそうだ。

臭みが少なく身もしまっているのでお刺身がいける。

だが、刺身という調理法が日本以外ではメジャーではない(刺身は「日本料理」である)ためか、海外版では違うレシピになっているのだ。さて、どんなレシピに変換されたかというと、

Wollywogs are best ground up, shaped into a patty, and flame-broiled on a grill. Slap on tomato slices, lettuce, onions, ketchup, and slide the patty between a sesame-seed bun for the ultimate beast-burger experience.
(マロガエルは、ひき肉にしてパテの形にして、グリルで焼いて食べるのが一番だ。トマトスライス、レタス、玉ねぎ、ケチャップをのせ、パテをゴマ付きバンズの間に挟めば、究極のビースト・バーガーの体験を楽しめる。)

ハンバーガーである。

ハンバーガーって、刺身の対極に位置する存在だろ。


■食後のデザートも抜かりなく

海外版では、日本語版では存在しなかったデザートメニューがある。上でも挙げた「刺身文化の変換」によって、

Spectralids don't provide a lot of meat, but the exquisitely elegant wings are surprisingly tasty, particularly when expertly prepared with a sweet candied glaze.(サンショクシジミから肉は多く取れないが、甘い砂糖漬けをされて巧みに調理された精巧でエレガントな羽は驚くほどおいしい。)

ツマから甘味になったサンショクシジミは頷ける。純粋においしそうだ。

だが、ルーイはこれだけで満足するような漢ではなかったのである。彼は、トビンコをデザートにしたのだ。デザートになったトビンコと聞いて、みなさんはどんな料理を想像しただろうか。羽をむしって飾り付けに?目が実は甘いとか?正解は、

Grate this beast into a zest and whisk with sugar, cream, and chopped dark chocolate for a lusciously indulgent mousse
that's a true culinary coup de grace!(このムシを皮ごとすりおろし、砂糖、生クリーム、刻んだダークチョコレートを加えて泡立て、贅沢なムースに仕上げる。これは料理の真のクーデターだ!)

すりおろしてムースにする、だ。

…色々とツッコみたいことはあるのだが、とりあえず、ルーイがこの料理を何も告げずに先輩に食べさせるなどのマジのクーデターを起こしていないことだけを祈る。


■無口な後輩?

日本語版では終始無口キャラのルーイだが、海外版のメモではけっこう饒舌だ。トビンコのメモでもあったが、文章中に「!」を用いたり、メモそのものが長文だったりと、メモに記すことを日本語版より楽しんでいる印象を受ける。日本語版では

あまり見かけないうえに標本が高く売れるので……。

と書くだけだったオオガネモチのメモでは、

This precious treat is exceptionally rare. I could sell it back at home for a fortune! Then, I could use the cash to upgrade my kitchen, buy galactic-class ingredients, and even star in my own cooking show... The Insect Gourmet!(この貴重なご馳走は例外的に希少だ。家に帰って売って大金を手に入れよう!そのお金でキッチンをグレードアップして、銀河級の食材を買って自分の料理番組でスターにもなれるんだ…『昆虫グルメ』!)

テンション高めでかなり壮大な夢を教えてくれたりもする。スターになったルーイ見たすぎるな。

また、日本語版では天日干しにしていたコマンマンのメモは

Similar in taste and texture to gelatin, this jiggling mass of jelly can be sculptured into all kinds of creative shapes. As a bonus, it also doubles as professional-grade hair gel. It's the perfect cool summer treat!(ゼラチンに似た味と形で、ゼリーの塊は、あらゆる種類の創造的な形に彫刻することができる。さらに、プロ仕様のヘアジェルとしても使える。涼しげな夏のおやつにぴったり。)

と、オシャレに気を使っている姿も見受けられる。あのぴょこん髪も苦心の末のセットなのだろう。

海外版のルーイメモも日本語版とはまた違った意味でキャラが濃いので、やっぱりオリマーが苦労していそうではある。後輩に振り回される先輩、とは国境が変わっても変わらないのだろう。


■「食べられません。」

この記事の冒頭でも述べたのだが、ルーイメモにはいくつかの原生生物の調理法が記されていない。ダマグモやそもそも存在を疑われているアメボウズのメモだ。だが、どれもやはり海外版では一文では終わらない。それぞれのメモを引用する。

Poisonous. Consumption results in prolonged writhing and uncontrollable mirth.(ダマグモ――有毒。摂取すると長く悶え、制御できないほどの歓喜の感情が起こる。
Inedible. Known to cause mass hysteria, followed by leg spasms and internal thunderings.(アメボウズ――食べられない。集団ヒステリーを引き起こすことが知られており、足の痙攣と内臓の悲鳴が続く)

食べられないと言い切っているのに事細かに食べた後の状況が記されているのがただただ怖い。海外版のルーイは冒険好きなのだろうか。このあたりも、日本語版との大きな違いと言えるだろう。ルーイはとりあえず体を労わってほしい。

■"Inedible."

さて、上では「食べられないと言っているにも関わらず食べてメモを残している」パターンを紹介したので、今度は「日本語版では食べているのに海外版では食べていない」メモを紹介しよう。ミウリンとルリショイグモのメモである。日本語版ではそれぞれ

アシが早いので捕まえたらその場でゆでる。2~3日は持つ。
水っぽく他のショイグモに比べて味が薄いのでお塩を多めに。

とレシピがあるのだが、海外版だとなぜか

Inedible. Tastes like chicken.(食べられません。鶏肉のような味。)
Inedible. Effects of consumption include uncontrollable arm flailing and enthusiastic dishwashing.(食べられません。食後の影響としては、制御不能な腕振りや熱狂的な皿洗いなどが挙げられる。)

となっているのだ。どちらもどの方面から考察しても食べられないと判じられた理由が不明で、なんとなくもやもやする。

(2020.6.30追記――コメントにてミウリンのメモについて「海外では知能が高い生物を食用とするのが嫌がられるため、変更されたのではないか」というご意見をいただきました。)

それはそれとして、熱狂的な皿洗いって何?

■ルーイ式アメリカンジョーク

今までメモを通して国の違いを感じてきたが、国境で変わるものと言えば食文化や言語以外にも、笑いの文化がある。皮肉の効いたアメリカンジョークが有名どころだが、もちろん海外版のルーイくんもなおざりにはしていない。最後に特にキレッキレの2つのメモを載せる。

Although cooking this colossal beast yields a mountain of meat, every ounce of it is flavorless. Only suitable for intergalactic all-you-can-eat buffets.(オオパンモドキ――この巨大な獣を調理すると、山のような肉が得られるが、すべてに味がない。銀河系の食べ放題のビュッフェにのみ適している。)
Neither boiling nor baking can diminish this creature's overpowering musky scent. Only suitable for serving to unpleasant in-laws.(ゾウノアシ――煮ても焼いてもこの生き物の強烈なサビ臭さは消えない。不愉快な義理の親戚に出すのに適している。)

原生生物を何匹か殺せそうなキレ、好きすぎる。


いかがだっただろうか。いやはや、ここまでメモでのルーイのキャラクターが違うとは。だが、ピクミンというゲームはほぼ主人公たちのセリフがないのだし、メモで少しはっちゃけるくらいならオリマーもやっていることだし、食文化の違いがメモの差異を生んだのだろう…と思っていたのだが、最後に衝撃の事実が発覚したのでそれを伝えて終わりたい。それは、ストーリー序盤で社長からルーイに送られてくるメールだ。

日本語版では

ルーイくん、入社から3ヶ月。そろそろ、わが社のフンイキにもなれてきたようじゃな。キミはちょっと無口じゃが、クールとかいうやつじゃろ?キミにはオリマーくん以上に期待しておるよ。

とある社長からのメールだが、海外版では

It's been three months since you joined our company, and I'm sure you love it. I expect big things from you, Louie. Far bigger things than I expect from Olimar!

となっているのだ。以下、訳文を掲載する。

入社して3ヶ月が経ったが、きっと気に入ってくれていると思うよ。君には大きなことを期待しているよ、ルーイくん。オリマーくんに期待している以上にね!

そう、ルーイは海外版だと無口キャラという扱いではないのである。

ルーイ!お前の真の顔を教えてくれーーーっ!!!!

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