the おこめマン(z)(22)、狂気の10000字セルフインタビュー(下)
一万字に至るまでに記事執筆に数日を要していたため、昨日書いたことが今日には全く違うように感じたりと、セルフインタビューは既に「インタビュー」という名を冠した「精神実験」に近付きつつあった。自分の脳内をそのまま文字起こしする作業を続け、おこめマンも取材陣も既に限界を迎えつつあった。
(話し手兼聞き手:おこめマン)
(撮影:Taito Hasimoto)
〜前回までのあらすじ〜
2人の俺が完全に「怒り」と「悲しみ」に分裂してしまい一触即発の場面ではあったが、機転を効かせた「第三の俺」の行動により最悪の事態は免れた。涙に目を腫らしたまま、アルバムは遂に終盤へと向かう。
10.田端でバタバタ
——これは良い曲だよ誰が何といおうと
(泣)
——作ったきっかけは?
まあ歌詞通り思い出を吹き飛ばして欲しかったんだけなんだけど、もっと言うと生欲以外にライブ用のドロップdチューニングの曲が欲しかったというのも大きな出発点かな
——まあ結果としてただのバッキングもゾンゾン感が出て印象的になったと思いますよ。歌詞も印象的でおこめ感あります、私は特に「微弱な娯楽で麻痺させてるだけ」「wi-fi蹴散らして止まる心臓ならいらないからさ」などが気になりました、面白いワードチョイスですよね。この言葉たちはどこから?
うん、その辺は僕自身気に入ってる部分でもあるから、そう言ってもらえると嬉しいよ。
まず「微弱な娯楽」っていうのはぼくの大学での数少ない友達のオタクがぽろっと言った言葉で、すごく印象的で、使いたかった。まあ受け止め方は任せるけど、僕について言えば、「忙しくて映画を観る時間もない!」って言ってるのに作業しながらもう4回も5回も観た「カイジ」や「トランスフォーマー」を観ちゃうんだ。
——うんうん、これは形は様々でも多くの人に当てはまる気持ちだと思います。学生時代ワクワクでソフトを購入していた「ゲーム好き」のはずが気付いたらソシャゲしかやってなかったりyoutubeでもう観たコントをダラダラ垂れ流すことでしか脳が休まらなかったり。ひどく私的なようでおしなべて言えば「ファスト映画」を受容してしまったこの時代の象徴とも言えるワードチョイスだと思います。
気持ちはありがたいんだけど、ちょっと説明しすぎかも。
——カッコつけて伝わんないのが一番くやしいだろうが
まあね、でもこれはホントの本心で、聴いた人が感じたままで楽しんでほしいなと思います。歌詞書くときに説明的な部分をなるべく削いでるのはそういう理由もあるので。
——アーティストぶりやがって。
11.WHAT YOU DREAM
——そして3部構成がWHAT YOU DREAMからついにフィナーレを迎えますね。
ああ、youtubeでは話したけどこのアルバムはYOU ARE NOT PUNXから始まる怒りのパート。WE ARE NOT ALONEから始まる迷いと葛藤のパートからなってる。
——そしてWHAT YOU DREAMから遂に、胸中でのグジュグジュした葛藤が街と。生活と向き合い始めて、アルバムを締めくくるわけですね。
傑作だ!
——素晴らしい!
伝われ~~~!!!
——この曲が最後にできたんでしたっけ?
うん、レコーディングも最後、この後の「死せる」ありきで、ひとりで宅録した。ハードコアな前半、もがいてあがいて生んだ後半のポップなメロディ、それらを繋げるための一曲を作った。
——そしてフィナーレを迎えるわけだ。
12.死せる生活詩あらば幸せ
——歌詞について言えば、少し背伸びしてるのに、酷く正直。身体測定で堂々とかかとを挙げて身長を図ろうとする小学生のような潔さを感じました。
人はいつの間に大人になったりしないと思うんだ。学童でアルバイトして感じたことだ。俺が学生だろうが、実家暮らしだろうが、童貞だろうが(今はもう全部違うけど)、子どもたちからしたら、「親」「学校の先生」(プラス人によっては習い事とかの先生)以外に触れ合う数少ない「大人」なんだ。少なくとも子どもたちの前では嘘だろうと演技であろうと立派な大人であろうとした。そしてその「演技」の繰り返しがゆくゆくは俺という人間を、人格を形作ると思うんだ。
今まで自分の情けない現実ばかり歌ってきたけど、理想や祈りを歌に込めた、込めることを自分自身に許したんだ。
——こんだけ真情吐露してまだアルバムを聴いてない人がいると思うと悲しいよ。
おっと、アルバムを出して「人に評価されたい」という気持ちがブクブク膨らんできてやがるな。
——今までは曲を作って少なからず褒めてくれる人がいて、俺の音楽にお金を出してくれる人がいてお腹いっぱいだったのにね。
欲望と絶望と忙しいね。
——あれ質問者が入れ替わってんな
いいんだよ、たまには言いたいこと言えば。これまで話を聞いてくれて有難う、おこめマン。
——ううん、話してくれて有難う、おこめマン。
こうして分離した二人のおこめマンは一人となり、光の中へ消えていった…。
(編集後記)
ここまで話してアルバム聞かれないとなるともうやりようないなと思いました。